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天の先に  作者: 真
第二章
30/31

ガイド

 影月は数分校舎を探したがどこにも零の姿はなく、校舎から離れた体育館へと向かう。


(あいつどこ行ったんだ? 今後の段取りも決めないといけないのに)


 影月は「はぁー」とため息をついて体育館を覗く。すると、そこには零がいた。


(あいつ!)


「おいお前、何してんだ?」


 零の後ろには怒りゲージを超えて爆発しそうな影月がいた。それに気づいた零は躊躇することなく守裏のところへ走る。


「すいません」


「どうした?」


「えーっと、大切な用事を思い出したんで……帰ってもいいですか?」


「そうか。ここまで付き合ってくれてありがとうね。暇な時また来な」


「ありがとうございます」


 零はコートの外に出てお辞儀をして体育館を出る。零は出た瞬間、影月に頭を掴まれて、二年一組の教室へと引きずられる。


「零さん大丈夫でしたか。遅かったようですが」


「遅いというか遅すぎるけどね」


 そこには和とあかりがいた。


「少し迷ってしまって」


「嘘つけ。こいつらもお前のことを探していた。要件も聞いてある。だからここで待っているように言っといた」


 和は先陣を切って前へと出る。だが、和には学校を案内することができなかった。


「じゃあ、早速案内しますので……よろしく、あかり」


(はぁー、やっぱり和じゃ無理だよね。この学年一の方向音痴なんだから)


「はい、こっちに来てくださーい」


 あかりが先陣切って案内してくれる。

 最初に案内された場所は大きな図書館だ。


「えーっと、ここは約三十万冊以上の本がある図書館です。一般の人も使えることから里の知恵袋と呼ばれています」


図書館は教室から離れた外に体育館ほどの大きさで建てられていた。中に入ると、本がぎっしり詰められた棚が壁やそこら中に存在していた。影月は思わず「広いな」と呟く。


「炎に纏わる本とかあったりするか?」


「えーっと、あっちかな。いや、こっちか。んー……わからない」


 零は興味本位であかりに聞くが、場所がわからず手を挙げて降参する。


(多分こいつ図書館に来たことないな)


「炎はこっちだと思うよ」


「あっ、ありがとう」


 和は先陣をきって前に出る。それに零たちはついていく。そこには炎の能力に関する古書が辺り一面に保管されていた。


(なるほど。炎に纏わる本がこんなにもあるのか)


 零がたくさんの本に目を奪われている隙に影月はあかりへ探りを入れる。


「あのすみませんが少し聞いてもいいですか?」


「ん?」


「零とはどういう関係ですか?」


「零くんは命の恩人です」


「はぁ」


 あかりの言葉に、影月は複雑な表情で零の背中を見つめる。


「これを借りたいんだが、どうしたらいい?」


「そのまま持って出口に向かうだけだよ」


「えっ、本当か?」


「出口には本を読み取るセンサーがあるから大丈夫だよ。それより、次に行こうー」


 次に案内されたのは校舎の外にある競技場だ。


「ここは基礎体力や能力トレーニングをする時によく使われる場所だ。超人戦もここで行われる」


「超人戦?」


 零はその言葉に興味が唆られる。


「はい。超人戦とは簡単に言うと……この学校の強者を決める戦いです。ルールはなんでもありで気絶もしくは降参と言えば勝敗がつきます。この学校の三大メインイベントの一つです。全国的に有名ですが、知らなかったのですか?」


 零は「少しは……」と流れるように嘘をつく。


(なんだそれ?)


「確か、一ヶ月後に開催されるけど、二人とも出る?」


 影月は冷静に考える。


(戦闘となると目立ってしまう危険性がある。リスクが高すぎる)


「俺たちは辞めとこ……」


「出る」


 影月の言葉を遮って零が応える。

 影月は思わず「はっ?」と言う。


「強い奴がいるんだろ。戦わない手はない」


「お前な」


「任せろ、影月。ほどほどにするからよ」


「はぁー」


 影月は零を止めようとするも、零の強い意志に押されてしまう。


「じゃあ、明日参加用紙が配られると思うからそれに参加って書けば大丈夫だよ」


「おう」


「次行くよ」


 科学室や家庭科室、プールなど淡々と周っていく。


「じゃあ、次どこにする?」


「えっ」


「もう説明するところないんだよね。体育館は行ったんでしょ?」


「はい」


「うーん。和、どっかない?」


 和は迷っていると、学校についてある大きな時計が目に入る。それを見て和はある場所を思い出す。


「一つ……ある」


 和が向かった場所は広々とした屋上だ。ちょうど屋上では陽が沈みかけており、淡いオレンジが学校を照らす。


「すごー」


「綺麗だ」


「うん」


 零や和たちは壮大な夕焼けの空に心浸っていたが、影月だけは違った。


(世界は美しいさ。だけど、それは外側だけ……中になるとそうはいかない。人間だってそうさ。外見をよく見せようとするのが人間の本質。中身、性格は外見とは似てもつかないことがある。人間の恐ろしいところだ。だけど……)


「影月、綺麗だな」


 零は満面の笑みを見せる。


(今は恐ろしさなどいらない)


「あー、そうだな」


 影月も薄笑いを見せる。


「待って。もう日が暮れてるってことは……」


 あかりは恐る恐るスマホを取り出して時間を確認する。すると、時間は五時半を過ぎていた。


「やばいよ、やばいよ。この後編集者と話があるんだった。早く帰らないと」


「また困ったら何か言ってね」


「和、早く」


「じゃあね」


 あかりと和は急いで階段を降りて正門に向かう。


「忙しい一日だったな、零」


「だな。帰るか」


 零と影月は七時頃に空に到着する。二人は一日の疲れを取るため、天敵が運営する大浴場へと向かう。体を清めて湯に浸かろうとしたその時……


「お前ら、今日何してた?」


 後ろから聞こえてきたのは皆無の声だった。皆無はわかりすく怒りが態度と声に出る。


「えーっと、学校探検してました」


「すいません。俺の不注意で」


 三人は外の露天風呂に移動して湯に浸かる。


「今日は何もなかったから良かったが、いつ襲ってくるかわからない。しっかり護衛しろ。わかったな」


「「はい」」


「先生、何で夜姫さんに俺たちのことを話したらいけないんですか? 話した方が効率よく守れるんですけど……」


「それは総理の要望だ。娘には心配かけたくないそうだ」


「親心かよ」


「まあ、お前らは明日から任務をしっかりしろ。特に零。お前のところに夜姫がいるんだ。機会は大いにあるはずだ」


「えっ、俺のクラスにいるんですか?」


 皆無は額に手を当てて「マジか……」と言う。

 朝日が登り零と影月は支度をする。そして、同時に扉を開けて学校に出かける。


「今日はどういう感じでいく?」


「まずは夜姫と接触することだ」


「だよな」


「だけど、転校生ニ人が急に話しかけるのは何か変だ」


「だよな。ただでさえ、俺なんか学校行ったことないっていうのにさ」


「俺もだ」


「周りに聞くしかないか」


「だな」


 学校ではチャイムが鳴り響き朝礼が始まる。

 零は雲ひとつない空をぼんやりと眺める。



十二年前ー

 新緑の香りを運ぶ風が吹く五月、自然豊かな道を女性と子ども、二人が歩く。小さな手は隣にいる大きな手によって繋がれる。


「零、保育園行かないの?」


「行っても意味ない。楽しくないし」


「それは決めつきに過ぎないでしょ。私ね、学校に行けなかったんだ。だけど、十代後半になって、友達ができてわかったの。学校は人生の大切な表紙なんだって。だから、小学生になったら学校行こうね」



現在ー

 和は放心状態の零の肩に触れる。零は放心状態から解ける。


「ん?」


「だっ、大丈夫ですか」


「あー、少し眠たかっただけだ」


「じゃあ、前」


前の席の人は零に気づいてもらおうと紙をちらつかせる。


「あっ、すいません」


 零は慌てて紙を受け取る。その紙には超人戦参加希望と書かれていた。


(昨日言っていたやつか)


「この紙の参加ってところに丸したら出場できるよ」


「ありがとう」


 同じ時刻のニ年ニ組でも同じ取り組みが行われていた。


(こんなもの参加したところでメリットがない。寧ろデメリットの方が大きい。参加しないっと……)


 影月のペンが参加しないに進んだ時、急に横から声を掛けられる。


「影月は参加しないのか?」


「俺みたいな奴が目立つところじゃないかなって」


「そんなことないぜ。目立つだけがこのイベントじゃない。自分の実力を知れるいい機会なんだ」


(自分の実力か)


「そうだな。悪くない機会だ」


 影月は微笑する。


「そう言えば聞きたいことがあるんだが……」

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