第28話 ワルシャワ2日目
トーマーシュのブレイズ屋が繁盛していたので、タケミは2日目も露店街を散策していた。
闘技場やダンジョンの話を占い師の老婆に聞いてから、少しソワソワしていたが、まずは防具や武器をしっかりと見て回り今後の事を考える必要があった。
最初のオーク族の時のように、素手で倒せない相手や、物理攻撃の通らない相手に出くわす事もあるだろう。
清めの剣は銀貨140枚。
武器としての威力は素手より弱いため、属性特攻を期待する場合に使うくらいだろう。というか、ミスリル製の武具でなければ、正直タケミにとっては魅力が無い。
防御力は400
生身の状態でもEランクタンクのフル装備以上だ。
速度を落とさないように、軽量で尚且つ防御効果のある装備を探すとなれば、これもやはりミスリル製になってくる。
もしくはエンチャント付の装備品を探すというパターンだろう。
しかし、露店でそんな掘り出し物に出会う機会は少ないし、目利きの達人でもない。
「こんな時に誰か居てくれたらな。。。」
タケミは急に少し寂しくなった。
「あっちにも露店街があるのか、、、ほんとに広いなここは。」
ワルシャワ郊外はたくさんの区画に分かれていて、迷いそうになる。
結局、どんな武器が自分に合うのかも分からず、次第に興味は【靴】に移っていった。
「重たい防具や強い武器を探すより、動きやすい靴を探してみるか」
今履いている普通のシューズでも【防御力3、速度+3】といった程度にはプラス要素がある。多少値が張るものでも、靴なら買って困る事はないだろう。
「すみませ~ん」
たくさんの靴が店先に並んでいたので、靴屋と思いその建物の中に入り、店員が居ないかと声をかけてみる
「おう、いらっしゃい」
ノーム族の小さいおっさんが返事をする
「あ、お客さんだ。どうぞどうぞ」
奥から出て来たノッポのヒト族の青年が爽やかに声をかけ、中へ入れてくれた。
「ここは靴屋さんで合ってますか?」
店先にたくさん靴が並んでいるのに、店の中には棚も無く、靴など置いていないため、間違いかと思ってタケミは確認をした。
「ああ、靴屋では無いな。ここは」
ノームが答える。
「おやっさんは黙っててよ!もう」
ノッポのお兄さんがノームを手で制した。
「お客さん、ここはエンチャントの店だよ」
そう言いながら小さな椅子を持ってきてくれた
「ああ、、、エンチャント。エンチャントか、ってことは靴は売ってないって事?」
タケミは出された椅子に腰かけながら改めて質問する
「ああ、もちろん品物は売ってるが、靴に限らないんだ。武器でも防具でもエンチャントはするよ」
ノッポのお兄さんは答える。
「だが、エンチャントと物の相性が合うかどうかわからんがな。今は表にある靴に付与するか、持ち込み品に付与するか。だな」
ノームが言った。
なるほど、そういうパターンか。
しかし、今履いているなんでもない靴に付与しても仕方ないよな・・・
「どんな付与が出来るんですか?例えばこのシューズみたいなやつの場合」
タケミは今履いている靴を指差して尋ねる
「あー、普通の靴なら付与1種、基礎付与魔法くらいだ。素材や繊維にも等級があるからな。それと宝石なんかをつけるかどうかによっても加工の費用は随分変わるぜ。」
急にノームが饒舌に話し出した。
「お前さん、エモノは何使うんだい?やけに身軽な服装だが、そのまま戦うわけじゃるまいに」
タケミの姿を見てノームは言う。
「いや、このままです。装備とかはありません。武器も、、、、素手で」
タケミは返答に困りながらも答える。
「ああっ!!!???ふざけてんのかい?そんなので外で戦うって?正気か。冷やかしなら帰んな!!」
ノームが怒るのも無理はない。
「ああ、確かに。でも、一応Dランク冒険者ですし、このままでもオーク族くらいなら倒せます。」
タケミは一応タグを見せながら説明した。
「ええっ!?その装備で、素手でオークを倒すだって!?まさか有名な冒険者なのかい?」
ノッポのお兄さんが急にテンションを上げて食いついた。
「いえ、有名では無いですが。。。」
返答に困るが、なんとも説明がしづらい
「まあ、タグは本物のようだし嘘じゃあねぇんだろうが・・・。」
信じられないといった表情でノームは言う
「わかった、まあいい。で、靴に何を付与したいんだ?」
ノームはそれ以上深くは聞いて来なかった
「そうですね。軽くて、丈夫で履きやすい靴に、何か付与を。どんな付与が出来るんでしょうか?」
付与1種。基礎付与ってのはどんな程度なのだろうか、、、
「ああ、表にある靴ならどれも銀貨5枚から10枚程度だ。付与は風・土・地のエンチャントで、出来るとすれば使用する魔法のLvを1~3程度アップするとか、靴を軽くするとか、スピードを速めるバフ効果とか、疲れにくくするとか、少しずつ足の疲れが取れるとか・・・・」
「そ、、、それで付与にかかる金額はおいくらなんですか?」
ノームの説明を聞いて、加工にかかる費用を聞いた。
「ああ、まあ1種基礎付与だからな、金貨10枚ってとこかな」
ノームの説明を受け、タケミはブレイズの話を思い出した。
市販で流通している一般的なブレイズが
【片腕前腕部分 力の紋章で銀貨50枚 腕力10%アップのパッシブ効果】
確かそんな感じだったはずだ。
金貨10枚って事は、銀貨で言えば100枚分だ。
ブレイズなら力の紋章を両腕に施せる金額だ。それで腕力20%アップになる。
タケミの能力を考えれば、腕力20%アップは相当ヤバい効果だ。
その一方、靴に付与を施す工賃で銀貨100枚、得られる効果は・・・疲れにくくするとか、足の疲れが取れるとか、、、、。
(ええ、、、、、、、なんか微妙だな。)
よくわからないが、あんまり凄く無さそうな気がした。
(どうしよう、、、このまま店を後にするのは失礼にあたるんだろうか。)
タケミはこっちの世界での店舗での応対が、どんなマナーがあるのか分からなかったが、とりあえず日本に居た頃のタケミは、コンビニにトイレを仮に入ったら、何も買わずに店を出るのは申し訳ないのでジュースを取り合えず買う派だった。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・この靴に、魔法威力アップの付与をお願いします」
タケミは簡素なつくりの、目立たないデザインの靴を店の表から選んで、付与を頼んだ。
正直そのまま帰ってちゃんと考えるか、もう少し他の店を見てからにしたかったが、なんとなく機嫌の悪そうなノームを見て、タケミは昔の悪い癖が出てしまった。
「おう、じゃあしばらく待ってな」
そう言ってノームは靴を持って店の奥へ消えていった。
30分ほど待たされた頃、ノームが靴を持って戻ってきた。
ノームが持ってきた靴は、もともと茶色い無骨なスニーカーのようなものだったが、靴の外側の、足の小指の指先あたりのところに、何やら紋様が彫り込まれていた。
その紋様部分から魔力を感じる。
「ほら、靴代は銀貨10枚。付与は両足で金貨20枚だ」
ノームは手のひらを差し出して金を出せという動きをした
(・・・・・片足分で金貨10枚かよ)
そういえばブレイズも片腕で銀貨50枚とか、そういう感じだし、付与も同じ理屈なのか、、、、確認すれば良かった。
タケミはなんとなく釈然としないまま、銀貨10枚と金貨20枚をノームへ渡した。
「ありがとねお客さん」
ノッポの青年が再びタケミに声を掛ける
「付与効果は、無属性魔法Lv+3と、地属性魔法Lv+3だよ」
「え?付与って基礎付与ひとつって言ってませんでした?」
タケミはノッポのお兄さんに確認する
「ああ、だから片足それぞれに1つずつだね。右足が無属性。左足が地属性だ。基礎付与で両足ともLv3になったのは、運が良かったね」
タケミは少し安心した。というか、それなら別に損はしていない。
まあ、靴に片足ずつそれぞれ違う付与をつけられるんなら、最初にそう言って欲しかったが、この世界では常識過ぎてわざわざ言うほどの事では無いのかもしれない。
地属性って事は重力魔法の出力が上がるということだ。
無属性は収納魔法と、身体強化などだ。
魔法の系統図を見てないし、そっちにSPを振り分けてないから気にしていなかったが、無属性魔法を強化すればバフ・デバフ魔法が修得できる。
しかし、力や速度の素ステへの割り振りも捨てがたく、後回しになってしまっていた。
(まあ、、、、、いいか。)
タケミは夜、トーマーシュにこの話をした。
「ああ、まあブレイズは一度彫ったら消せないからな。後で変更出来ない。装備品への付与は、例えば力を強化する付与の靴と、速度を強化する付与の靴を敵によって使い分けるとか、そういう便利さがある。付与の加工代金としては別にぼったくりってわけでも無いさ。」
なるほど、そうなのか。
とりあえずタケミはぼったくりじゃないと分かっただけで、少し安心した。
「まあ、愛用の武器とか、一点物の装備じゃなくて、そんな普通の靴に付与するやつも珍しいけどな。(笑)」
トーマーシュは笑っていた。
「タトラ山脈を越えて南下するなら、登山靴とか丈夫な靴に、疲れを回復する効果を付与するとか。そういうのが一般的だがな・・・。高地は雪も降るから防寒対策とかさ」
トーマーシュに言われて気づいた。
タケミが買ったのは明らかに平地で履くシューズだ。
・・・買い物をするときは、誰かに付き添ってもらおう。タケミは少し反省した。
所持金・・・銀貨300枚、金貨40枚
●丈夫なシューズ●
防御+5、速度+5、
無属性魔法Lv+3、地属性魔法Lv+3




