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第29話 クラクフへ

 数日後、ワルシャワを出発したタケミとトーマーシュは、クラクフへ向かって南へ歩いた。

アリーシャ達と旅をしたビャウィストクからはもう400km以上離れている。

 ラドム、キエルツェの街を越え、クラクフの手前のミエフフという小さな町で宿を取り、1日滞在し、またクラクフへ向かう事になった。


「トーマーシュ、クラクフへはあと40km程度だし、一気に移動すれば良かったんじゃ?」

タケミとトーマーシュなら、走れば20分ほどで移動できるだろう。

「そうだけど、闘技場の事やダンジョンの事、途中の町でも情報集めながら向かえばいいさ。色々見たいし。急ぐ旅じゃないからな」


トーマーシュの言う通り、急ぐ旅ではない。

二人は早めに食事を済ませ、酒場で出会った者たちに話を聞いたりすることにした。


「ここ座っていいかい?」

トーマーシュはそう言って、5~6人で騒いでる冒険者風の男たちのテーブルに座った。

「おお、見ない顔だな。どこから来た?」

もっさりした髭ヅラの男が答える

「ビャウィストクだ。先日まではワルシャワに」

トーマーシュが答える


「てえことは、駆け出しか?飲め飲め、おごるぜ!」

髭ヅラの男は気前よく酒を寄越した

「お前さんもそっちへ座りな。クラクフへ行くんだろ?」

どうやらワルシャワからの中継地点としてミエフフは利用されやすい場所のようだ。


「俺たちはポズナンから来た。クラクフへ向かうところさ、同志よ」

そう言って片手にミニ酒樽をもって差し出した。

【乾杯】の合図は共通のようだ


「俺はソロの冒険者で、ガンドアだ。見ての通りヒト族の戦士だ。ようやくCランクに上がったとこだ」

ヒト族というよりドワーフに見える髭具合だが、、、


「私はマッソー・バ・シュガ。虫族ハチ型、珍しいからといって魔物と間違えてくれるなよ。私もCランク、本職はヒーラーだ」

 二足歩行するイケメンのスズメバチ。とでも言おうか、スリムな体型、ヒトかと見まごう顔つき。背中の羽とシマシマのお尻がなんとも不自然に可愛い感じだが、牙と言うか、ハチの下あごは鋭い。これで毒針も持っているなら、なぜヒーラーなのかを突っ込みたいところだ。


「私はシュラノラ、虎人族だよ。Bランク冒険者。いい歳だからね、婿探しのためにクラクフへ向かってる。強いダンナの子を産みたいからね」


(毛並みの美しい獣人族だ。ビアティ・オーゼルたちと同じBランクか・・・)


「僕はタラスト・フォルコ、Bランク魔導士だよ。よろしくね」

ヒト族の若い男の子。見た目から、二十歳は超えてなさそうだが、Bランク冒険者だという、よほどの才能なのだろうか。


「私はショナ。犬族のヒーラーです、ランクはD。よろしくです」

可愛い、、、、犬だ。フワフワの毛並み、わしゃわしゃしたい。

見た目はしゃべる犬でしかない。


(なんで獣人族って、ほぼヒトにしか見えない人と、獣に近い姿の人でこんなに差があるんだろうか)

タケミはちょっと不思議なのだが、軽く聞いて良いことなのかわからない。


「私はエンサ・イクロ・ペディア。冒険者ランクはD。仕事は学者だ。採取や収集のために戦う事もあるが、魔道の研鑽のために生きておる」

見た感じヒト族のようだが、違うかもしれない。ホビットか?タケミにはわからない


「僕はタケミ。ヒト族の戦士、ランクはDです。」

「俺っちはトーマーシュ。冒険者ランクはD、本職はブレイズ職人だ」

タケミとトーマーシュも挨拶をする


「それでは、我らの今宵の出会いに乾杯!」

陽気な性格のガンドアが場を仕切っているようだ。


その晩、ドワーフの鉱山がタトラ山脈にある事や、美しいエルフの給仕が多く勤めている食堂の話や、獣人族の隠れ里の伝説。ダンジョンの噂話などを色々聞いた。


冒険と、死と、栄光と名誉。そしてパーティの絆や戦士の掟など、それぞれの種族によった捉え方の違いなんかも聞かせてもらった。


 ここまで多様な種族が入り混じっているのに、争いや種族間衝突が少ないのは、教会や商会、ギルドが作って居る法律が正しく機能している事が挙げられるが、同時に【共通の脅威】である魔族の存在があるからだという。


「魔族の脅威を排除した中央は、ヒト族が帝国を建国し、他種族を奴隷にしたり、狩ったりしているらしいからな。結局、魔王とか魔族っていう共通の敵がいるから団結出来るのかもしんねぇな。平和が来れば、その平和を独占しようとする奴が必ず現れる」

そう言いながら、ガンドアは苦々しい顔を浮かべる。

「必要悪だなんて言う気はねぇぞ。村も、家族も、仲間も、何人も魔族にやられた。

俺は魔族を倒すために旅を続けているんだ」


 そうだ。頑張って魔族を討伐し尽くしたとしても、喜びもつかの間。

もしかしたら、こうして酒を酌み交わしている冒険者同士が、種族間の抗争に巻き込まれるかもしれないのだ。


冒険者たちが種族に関わらず【共通語】を話、交流を図るのも、もしかしたらそういう事態を本能的に避けようとしているからなのかもしれない


タケミは、まだお酒は早いかな、、、とも思ったが、ここは異世界だし、年齢はまあ気にしなくていいか、と彼らに合わせて生涯初のお酒を飲んだ。


ここで共に酒を飲んだ相手が、闘技場で対戦相手として現れたら、全力で戦うのだろうか・・・


 異世界での冒険、魔王を倒す輝かしい選ばれた戦士たちが居る一方で、こうして日毎に酒を飲む「その他大勢」の冒険者たちが居る。

ゲームの中で見ていたストーリーではなく、話しかける事すらないNPCたち。

そこに触れた時、タケミはここの世界も元の世界も同じなのだと感じた。


ミエフフでの夜は「急ぐ旅ではない」タケミたちにとって心地よく、タケミは彼らと共に話し、笑った。


そして、人生初のお酒の味を知ると共に、人生初の【二日酔い】も同時に知る事になった。


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