第26話 別離
ナレフカに戻り、報酬を分配。目標達成を祝って、その日は夕方から盛大に飲み食いをした。
Eランク、Fランクの冒険者たちが、4人一党でオーク30体狩りを成功させ、Dランクに昇格したと言う事で、ナレフカのギルドも大いに沸いた。
聞けばそんな命知らずは随分と久しぶりなのだとか。
確かに、Dランク冒険者のミリアが居たとはいえ、タケミの10倍能力が無ければ全滅していただろう。武器や防具を揃え、しっかりと準備していたとしても、難題だろう。
「今回は本当に勉強になったよ。明日にでも露店街を見て回り、装備品なんかも揃えるつもりだ。ブレイズも、、、検討するよ」
タケミは装備品の付与効果や、精霊との契約による加護の効果、ブレイズによる能力アップ効果などに興味を持った。単なるLvアップだけでもタケミはどんどん強くなるが、単なる力押しではどこで躓くか分からない。
「それなら、南のワルシャワを越えて、タトラ山脈も超えて、ハンカリーにでも行くってのはどうだ?」
トーマーシュが提案した。
「ハンカリー?」
「ああ、ポーラントと文化圏は似ているが、ブレイズはもっと多彩だし、タトラ山地より南には手強い敵も出る。さらなる冒険をするなら、ハンカリーだぜ。」
確かに、オークをここでしばらく狩るのもいいが、先日のオークメイジとのやり取りもあって、オーク狩は少し気が重い部分もある。
既にタケミは、26LvにしてBランク冒険者級の強さになっている。この付近では物足りないのだ。
「そうか。。。それもいいかもな」
タケミがトーマーシュに答える
「そうと決まれば、さっそく明日からハンカリーへ向かおうぜ!」
トーマーシュも乗り気だ。
しかし、アリーシャは浮かない顔をしながら言った。
「すみません。私は、、、、私はシノスへ戻ります。」
アリーシャの言葉で、タケミとトーマーシュの顔から笑顔が消えた。
「アリーシャ、、、どうして?」
タケミは理由が分からず問いかける。
「私もタケミさんと同じLv26になりました。でも、もうその力の差は歴然です。
オーク戦ですら、戦闘中は危険だからと樹上に隠れていましたし。このままついていっても足手まといにしかならないです。それに、地元から離れるつもりも無いので」
アリーシャの言い分はもっともだった。
うっかり強敵に出くわせば、アリーシャは瞬殺されるだろう。
タケミだって、新天地でアリーシャを守り切れる保証はない。もとより、タケミはアリーシャが一人立ち出来るまで見守るくらいのつもりでいた。
Lv26にもなれば、シノス周辺ではそこまで危険な目に遭う事も無いだろう。
「アタシも、ここに残るよ。」
ミリアは短く言った。
「そんな、姐さんまで」
トーマーシュは残念そうだ。
「もともとオーク30体討伐を目指すアンタらに興味を持ってついてきただけだし、アタシはこの辺に慣れてるからね。しばらくはまだここに居るつもりさ。」
ミリアは言葉を続ける
「でも、、」
トーマーシュはミリアも一緒に連れて行きたいらしく、それでも食い下がる
「アタシは、、、、。アタシも同じさ。アリーシャとね。」
ミリアは少し酔っぱらいながら、トーマーシュの目を見て言う
「タケミだけじゃない。トーマーシュ、アンタもブレイズの効果で随分Lvとかけ離れた強さを持ってる。Eランク冒険者、Lv62って言ったって、アンタたちのパーティではすぐにお荷物さ。」
確かに、ここ数日のLvアップでタケミはとてつもない成長を果たした。
最初出会った時に互角の能力値だったトーマーシュも、今のタケミとは比較にならない。
「他者の10倍の速度で強くなっていく。そういう事なのサ、アンタの能力は。
《孤独の王の力》と言ってもいい。いずれ強くなりすぎて、パーティを組める相手すら居なくなるかも、、、。ああ、ごめん。別に悪い意味じゃないんだよ。ただね、なんか、、、」
ミリアが最後になんて言おうとしたのかは分からない。
ただ、この【童帝】の能力を、ミリアは《孤独の王の力》と表現した。
その意味はなんとなく分かった。
この世界に来てまだ一カ月。冒険者の成長速度としては異常だ。
苦楽を共にし、冒険を通して成長し、仲間と共に、、、、、
そんな冒険譚はもう、タケミには歩めないかもしれない。
翌朝、ミリアとアリーシャに別れを告げ、トーマーシュとタケミはナレフカを後にした。
大都市ワルシャワを経由し、タトラ山脈を通ってハンカリーへ向かう。
新しい冒険の始まりは、タケミにとってワクワクとは違う感覚を与えていた。
ズメイ討伐の時に見たBランク冒険者たちの雄姿。その姿に憧れを抱いた。
Bランク上位の冒険者、鳥族のビアティ・オーゼルとその仲間は、とても強く、遠い存在に感じた。
そんな彼らにすら、手が届くくらいになってしまったかもしれない。
それは嬉しい反面、憧れを失うような喪失感に似た感情も与えていた。
別れ際、アリーシャの後ろ姿が少し悲しそうに見えたのを、タケミは思い出していた。




