第25話 オーク族の叫び
Dランクの魔物であるオーク族を30体討伐することで、一気にDランク昇格を狙うタケミたちの一行。
昨晩は、目標の半分である15体まで倒したところで野営地に戻った。
劇的にLvアップしたタケミは、残る半分を今日で終わらせるという意気込みで朝を迎えていた。
オークたちに囲まれて袋叩きに会い、危うく死にかけたところから、単独行動をしているオークを狙いうちする奇襲作戦で経験値を稼ぎ、タケミのLvは18になった。
一般的な冒険者の基準であれば、これでもまだFランクからEランクに差し掛かるくらいである。トーマーシュもEランクの中盤、Lv36だ。普通ならDランククエストなど、Lv50を超えたパーティで編成するものだ。
しかし、全身ブレイズ強化のトーマーシュと、童帝の効果で能力10倍のタケミは、Lvで測る水準を大きく超えていた。だからこそ、装備を固め、万全の体制で臨むべきところを、初心者レベルの軽装で来てしまったのだ。普通のパーティなら全滅しているだろう。
Lvが追いついてしまえば、トーマーシュもタケミも、ミリアのステータスを大きく超えるだろう。
「ブレイズって凄いんだな。」
タケミは改めて考えた。タケミナカタの加護とアビリティだけで、飛びぬけた強さを手に入れたが、ブレイズによる能力の強化に加え、ミリアのように精霊の加護や祝福などを受ければ、使い方次第で能力は雪だるま式に上がっていく。
さらにレアな装備による能力強化なども付け加えれば、それこそ魔王にも立ち向かえるのではないかと思えて来る。
「明け方はこんなに静かなのか。。。」
ビャウォヴィエジャ大森林は北東から南西にかけて斜めに長い森で、その長さは30kmにも及ぶ広さだ。
木々の高さも20mから30mはある。地球世界の、特に日本に住んでいたタケミからすれば、そんな場所は富士の樹海くらいしか思い当たらない。
なんの能力も持たない状態なら、この大森林に入っただけで、二度と外へ出る事は出来ないだろう。それほど広く、深い森なのだ。さらに巨大な動物や、魔物まで現れる。
「こんな日がくるなんて・・・」
タケミはそう呟いて、目を閉じて深く深呼吸をした。
もうすぐこの世界に転生して一カ月だ。アッと言う間だったような。怒涛の毎日だったような。タケミは、この世界の理に、すっかり慣れて来ていた。
「おはようございます、タケミさん」
テントの中からアリーシャが出て来た。
5~6人が寝られるような大きめなテントにしていて正解だった。男女2人ずつ、仕切りを作って分けてもゆったりと寝られる広さだ。
「よし、今日も頑張るぞ!」
タケミは気合を入れたが、ミリアとトーマーシュがテントから出て来たのは、その2時間ほど後だった。
タケミは木々の枝を飛び移って、森の上空までジャンプして、昨日のオークの街の場所を確認した。
タケミはLvが大きく上がった事で、ジャンプ力も少し上がっていた。
「あれか、、、。あまり近づきすぎないようにしないとな」
大幅な戦力アップを果たしたとはいえ、街に近づきすぎるのは危険。昨晩ミリアはそう話した。
「確かに劇的に強くはなったし、最初のように10体からのオークに囲まれても、切り抜けられるかもしれない。でも、急激に強くなったのはタケミ、アンタだけなんだ」
ミリアは続ける
「アリーシャのLvは18。以前として、オークに一撃でも喰らえば即死するかもしれんレベルだ。オークの街の人口は数千。まともにやり合うわけにはいかない。」
そうだ。街と言うか、オーク族のようにほぼ全てが戦士という事は、軍と言っても過言ではない。数千のオークが住む街。しかもこの大森林の奥だ。
根絶やしになるまで討伐し尽くすことなど出来ないだろう。
「よし、昨日と同じ作戦で、出来るだけ少数のオークを狩っていこう」
トーマーシュの号令で、一行は再びオーク狩りを開始した。
4体、5体とオークを順調に倒したあたりで、ミリアが異変に気付いた。
「皆、警戒しろ。200m、、、索敵範囲内にオークの魔力が複数。6、、、7、、、8体だ。固まって動いてる」
アリーシャを木の上に連れて行き、樹上で待機させ、タケミを囮にしてミリアとトーマーシュも茂みに隠れて攻撃の態勢を整えた。
「オマエラ、、、ミツケタ」
囮となったタケミの前に現れたのは、タケミたちを袋叩きにした、土魔法を使ったオークだった。
「他のオークと違うな。」
毛むくじゃらの髭を束ねて、手には棍棒ではなく黒い石を持っている。
魔法を使うオーク族。オークメイジだ。
「コンドハトドメ、サス」
深い茶色で濁ったような眼をしたオークが、静かにタケミを睨みながら言った。
昨日から、単独または少数で動いていたオークを襲撃して倒している冒険者たちが居る事に、気づいたのだろう。
よく見れば、引き連れている他のオークたちも、若干強そうだ。
「精鋭兵か・・・」
タケミはひるむことなく、間合いを詰め、オークメイジに攻撃を仕掛ける
「魔法を使われる前に、大将から潰していくぜっ!」
しかし、その行動はオークメイジも予測をしていた。
「ストンスキン」
オークメイジとその近くに居たオークたちの身体が灰色になっていく。
ズドドドドドドッッ
タケミの拳がオークメイジの身体を殴り飛ばす。
オークメイジの巨体は何本もの木々をなぎ倒しながら吹っ飛んでいく
左右にいたオークガードがタケミを捕まえようと両手を大きく広げて襲い掛かる
「土魔法 フラークッ!」
ミリアの魔法でタケミの左側に居たオークたちが、足元に出来た泥沼に引きずり込まれていく
隙が出来た右側のオークガードの背後から、トーマーシュが攻撃を仕掛ける
「ショックスピアッ!!」
首筋に針を突き刺し、得意の電撃魔法を仕掛ける
一瞬気を失いかけたオークガードが大きく体勢を崩した。
ゴンッ!!!
タケミの一撃がオークの顔面を捉えて、そのままオークは地面に叩きつけられた。
泥沼に引きずりこまれたオークガードはそのまま頭まで沈んで沈黙した。
「これで3体、、、あと5体か」
タケミはすかさず残りのオークガードに注意を払う
ミリアは残ったオークガードたち5体を全て射程に入れられる位置で、得意の魔法を放つ
「石化魔法 ピケンオーレン!!」
5体のオークガードの足が石化し、動きを封じる
両足が石化し、動きが制限されたオークガードたちは、タケミとトーマーシュの攻撃に成す術も無く倒れていった。
ガサガサ・・・
先ほどタケミに数十メートルぶっ飛ばされたオークメイジが、戻って来た。
「ナカマガ・・・オレノナカマガ・・・」
全滅した部下たちの姿を見て、オークは絶望している様子だ。
「さっきの魔法は防御魔法だったのか・・・あれで死なないとは」
タケミはもう一度オークメイジに襲い掛かる
「あん時のお礼をさせてもらうぞ!!」
しかし、オークメイジはピクリとも動かず、避けようともしない。
タケミは手を止め、オークメイジの様子を伺う
しばらくして、オークメイジが何かを話し始めた。
「オマエタチ、イツモオレタチコロス。スムバショモウバワレ、モリノオクニニゲテモオイカケテクル。」
オークメイジの言葉を理解できたのはタケミだけだった。
「モリノオクデクラシテテモ、オマエタチガクル。オウハナカマヲマモルタメニ、マオウニタマシイヲウッタ。オレモ、オマエタチユルサナイ」
オークメイジの言葉は聞き取りづらかったが、その言葉の意味をタケミは何となく察した。
オークメイジが右手に持っていた黒い石をその口に放り込んだ瞬間、オークメイジの核の魔力が増大し、オークメイジの姿が禍々しく変貌していく
メキメキメキメキメキ・・・・・
3mほどの大きさのオークメイジの身体が、倍ほどにまで膨張し、腕も足も太くなっていった
「オマエラ・・・コロス」
元々醜悪だったオークメイジの顔はさらに醜く変わり、怒りと憎しみの目でタケミに襲い掛かった。
速度も、力も先ほどまでのオークの比ではない。
オークメイジだった魔物は、力任せにタケミに掴みかかり、その肩に嚙みつこうと大きく口を開けた。その瞬間だった。
「ウォーターポールッ!!」
樹上に居たアリーシャが水魔法を放ち、その大きく開かれた元オークの口に水柱が叩き込まれる
グッオオオ、、オオ、、、
その魔物は大きく後ろへ後ずさりしていく。
タケミは大きく息を吸い込んで、連撃の構えを取る。
(もしかしたら、オーク族が魔王と契約し加護を受け、魔族に墜ちたのにも、何か理由があるのかもしれない。迫害や、戦い。領土の問題とか。仲間を守るために。)
彼らにも、彼らなりの理由があるのかもしれない。
そしてそのオーク族は魔物となったが故に、経験値と核を目当てとする冒険者に命を狙われる事となり、この森で戦い続けているのかもしれない。
しかし、だからと言って今、この手を止めるわけにはいかない
タケミは迷いを振り切り、いや、振り払うようにして、全力のパンチを息が続く限り浴びせ続けた。
その魔物の姿が元のオークメイジに戻り、力なく地面に倒れ伏すまで、タケミはその顔をジッと見つめていた。
タケミたちはその後も狩りを続け、目標の30体のオークを討伐し、
29個の核(中)を回収してナレフカへの帰路についた。
50個の核(小)・・・銀貨100枚
29個の核(中)・・・金貨290枚分
オーク族の牙26本・・・金貨26枚
合計 金貨316枚、銀貨100枚
配分・・・ミリア4、タケミ2、アリーシャ2、トーマーシュ2
金貨63枚、銀貨20枚
所持金 銀貨195枚
金貨 63枚
タケミ、アリーシャ、トーマーシュ・・・Dランク昇格
タケミLv18⇒26
アリーシャLv18⇒26
トーマーシュLv36⇒38
ミリアLv61⇒62




