悪役令嬢、寝られない
リストを書いていると、あっという間に時間が過ぎ、その日は胃に優しい食事を食べたり軽くストレッチをしたぐらいで就寝時間になった。
「では、おやすみなさいませ。」
メイドが明かりを消して扉を閉めると、真っ暗な寝室で一人きりになる。
‥‥‥
「…寝られない。」
よくよく考えてみれば、丸二日眠っていたのだ。寝られる訳がない。
睡眠魔法は自分自身には掛けられないし…
ゴロンと寝返りを打ちつつ、1人物思いにふける
(そういえば、ルミリアと合流してから何日経ったんだっけ?)
改めて考えてみると分からない。
最早ずっと一緒にいたと思えるほどだ。
(婚約破棄されて一日目、記憶を戻したのが二日目、仕事をしようとして即刻終わり遊びに行ったのが三日目、転生精霊と会ったのが四日目)
思い出が濃い。
精霊視点や転生者視点からすれば友達が増えたで済むが、この世界の人間視点からすれば一大事しかない。
そして過去を思い出して価値観が混ざり、その影響で時折意識が切り替わる私からするとふと思った時に敬わなければという意識がやってくる非常に面倒で複雑な状態になっている。
(ギルドと家と城に行ったのが五日目、この日は得に濃かったわ…魔王にもあったし)
(初めて依頼を受けたのと、敗者の町に行ったのが六日目)
(ストシミアに行ったのが七日目で、それから二日経ったらしいからいまは九日目)
濃い
どれをどこからどう見ても濃い
十人中十人が「濃い」って答える。すでに飽和態だ。たぶんこれからもっと濃度濃くなる。
「‥‥‥寝られない。」
考えていたら余計眠気が醒めた。
もぞもぞと起き上がり、気まぐれにカーテンを開ける。
今日は三日月だと思っていたが、よくよく考えれば二日眠っていたのだ。つまりきれいな三日月を楽しみにしていたがそれは二日前で、今はもう三日月じゃない。
無理にでも寝ようとベッドに戻るも、暇で暇で仕方がない。
無意味に髪の毛をいじって遊び始める。
が、やはり暇だ、暇すぎる、暇は人間を殺すんだ!
本をもって窓辺に行き月明かりで小説を読む。今日はもういっそ徹夜しよう。
「寝れないの?」
「ええそうなの…んん?」
声が聞こえて何も考えずに返事したけれど、声が聞こえる訳がないことに気づいて唸る。
すると目の前にルミリアが現れる。
「もう夜遅いよ?」
首を傾げたルミリアは、そういいつつ本人は普通に私服だ。寝間着ですらない。思わずお前が言うなという思いを込めて軽くにらむ。苦笑されてこちらも笑みがこぼれる。
「仕方がないでしょう。ずっと眠っていたんだもの。寝られやしないわ。」
「生活習慣は崩れたらなかなか戻らないよ。」
仕方がないと諦観を滲ませる私にルミリアは諭すように言う。
「寝かしつけてあげるからちゃんとベッド戻って。」
「はいはい、戻るから。」
子供のように注意され、しぶしぶベッドに戻る。
寝そべれば布団をかけられとんとんと心地よいリズムで軽くたたかれる。
すると段々瞼が下がってくる。
さっきまでが嘘のように眠気がやって来て、うとうととしていたら、白い指が目を塞いだ。
「お休みフィナ」
その声を合図に、私は夢の中に沈んでいった。




