閑話:かまって欲しい末っ子たち
「おいらだよ!」
「あたちだよ!」
「「お話に来たよ!」」
シェグビナ第二王子は、困惑していた
それは、目の前にいる人型の精霊が原因だ。
シェグビナは意欲というものがない。王位も望んでいない。
だからこそ、王侯貴族で精霊が下位下級であっても何の問題もない。
故に、精霊王からのお話を申し訳ないと思いつつ断ったのだ。
精霊を進化させ、王位を継がないか、と。
「おいらだぞ~!」
「あたちだぞ~!」
それを断って以来、時折上位精霊らしきこの二人がちょっかいを出してくるようになった。
なるべく隠していたのだが、つい先日メイドと鉢合わせ、不審者だと追い出された(人は上位精霊と人間の見分けがつかない)のに、またこりもせずやって来ている。
精霊だから追い出すことはできないし、父上に相談したら兄貴を見限って王太子位を渡してきそうだから言えない。八方塞がりだ。
そうして考え続け頭がショートした結果、不敬だと分かっているが無視を決め込むことにした。
「…むー、反応ぐらいしてよぉ」
「…んー、お話ししようよお」
容姿が幼いのもあり罪悪感も抱き始めているが、無視させてもらう。
そのうちしょぼん、とした顔になって帰っていくので、それまで粘る。
「「‥‥‥またくるねぇ」」
よし!今回も切り抜けた!
***
「「ただいまぁ…」」
「お帰り、どうしたの?」
家に帰ったら、モカが話しかけてきた。
上位精霊たちは城の部屋とは別に自宅を持っているのがほとんどで、おいらとサナはモカのお家に居候している。
「またうまく話せなかったの」
「お友達になるにはどうすればいいかなぁ?」
そのせいかよくかまってくれるモカに、おいらもサナも懐いている自覚がある。
ママはママだけれど、モカは兄ちゃんって感じがする。
「またかい?今度は何をしに行ったの?」
モカはおいらたちがどこに行っているか知らない。
だけれど、何回も訪ねすぎてうまくいかなくなっていることは知っている。
最初は「かしこまられない方法は何かなあ」から始まり、「断られないためにはどうすればいいの?」などと続き、今まで相談に乗り続けてもらっている。
「遊びに行っただけなんだけどなぁ」
「かまってもらえなくなっちゃった」
「具体的に何をしてたの?」
「「周りでぴょんぴょん飛び跳ねてた!」」
「あちゃー」
頬杖を突き、苦笑いするモカ。
何であちゃーなのか分かってないおいらたちにも解るように、ゆっくり説明する。
「あのね?例えばお袋さん…だったら例になんないか。ラースが遊びに来たとき、お前たちはどうしてもやらなければいけない事がある。だから遊ぶのを断ったけれど、ラースは何度も目の前に来て集中できなくなる。でもラースを追い出すことはできない。なのでほっておくことにした。そういう状況じゃない?」
「「ラースはそんなことしないもん」」
「例えだからね…」
ラースはそんなことはしない!
しんし的に「邪魔しちゃったかな?ごめんね。またくるよ」とさっそうと去って行くか、「忙しそうだね。手伝おうか?」と言って手伝ってくれるかのどっちかだ。
モカもそれは分かっているみたいで、「だれで例えたらいいのかなー」と悩んでいる。
そのうちひらめいたみたいで、
「じゃあウィニー!あいつがやって来て目の前をうろちょろしていると思えばいいよ」
ウィニーが用事の途中でやってくる?
脳裏に「ねえねえ!子供のころからそんな面倒なことする必要ないよ!遊ぼう遊ぼう!私とあなたが飽きるまで!」と延々と説きながらアクロバティックに部屋の四方八方を動き回ってものを壊したりおもちゃを吹き飛ばしたりする様子が浮かんだ。
「「…ウィニーと一緒はヤダ」」
凹む…
なりたくない身近な大人なウィニーと同じことしてるって、正直凹む…
ウィニーの周りを巻き込む無邪気さを思い出す。
「謝ってくる」
「ウィニーと一緒はやーよ」
「ウィニーも良いとこはあるからね?」
おいらたちに思考が分かったのか、モカは軽いチョップをしてきて注意する。
「お袋さんを執務机から引き離したりとか、いろんなところに行ってるからちょっとした豆知識が豊富だったりとか」
「お袋さんも前おすすめの店聞いてたし」と付け足すように言ったモカの声で多少好感度?が上がる。
うん。いっぽうてきに悪く言うのはよくないよね。
「とにかく、まずアポを取ること!」
「「あぽ?」」
そうしてたら、話の流れとか関係なしに新しい話になった。
ついて行けずにサナと首を傾げる。
あぽってなあに?
「これから行ってもいいですかって聞くことのこと」
「「!」」
なるほど!
まず今から行くねって言っとくんだね。
そうすれば大事な用事にかぶらせないことができる!かっきてき!
「誰のところに遊びに行ってたの?」
「「シェグビナ!」」
「誰?」
手紙、というかメッセージカードを引き出しから取り出して、ボールペンを構えたモカに質問されて答える。
モカは誰か分かんないみたいで思わずツッコミを入れてきたけれど、それは相槌みたいなものだったみたいでさらさらと何かを書きだした。
それから短文を書いて、それをこっちに見せてくる。
「「シェグビナ様へ
サクとサナがお世話になっております。
つきましては二人が遊びに行きたいそうなので、
開いている時間を教えていただけませんか?
二人の保護者、モカより」」
ふむふむなるほど
こうやって書いて、あぽを取ればいいんだね。
「次に、遊びに行くのならおみあげを持って行った方がいい。高すぎると相手が遠慮しちゃうから、安めのものの方がいい」
「「そーなんだ」」
安めの何かを持っていくんだね。
シェグビナが欲しいものって何だろう?
お菓子かな?おいしいもんね。それとも本かな?シェグビナのお部屋は本棚があったと思う。あれ?けどよく考えれば本の数は少ない?ならお花はどうだろう、前ママにマーラが送ってて、ママも喜んでいたし。
「サナ」
「サク」
「「お花にしよう!」」
(※二人の思考回路はほぼ一緒です)
モカも意外と妥当な物を選んでくれたので、一安心している。
笑みを柔らかくして頷く。
「とにかくこのメッセージカードを届けないと始まらないよね、サナ」
「そうだね、サク」
「「じゃあいまからとどけにいこう!」」
「待て待て待て待て!何のためのカードだと思ってるの!?直ぐに直接会いに行くのはダメなんだって!」




