悪役令嬢、起きる
「見知らぬ天井…じゃない」
こういうのはテンプレに沿うものなんじゃないのか。
しっかし…なんで自分の部屋で寝てるんだ?
たしかストシミア領に行って、エンカウントして、で…
「・・・・・・・・・やってしまった…」
ぶっ倒れた。卒倒した。気絶した。失神した。
(ルミリアからのツッコミ:それ全部一緒でしょ!)
刺客が近くにいることが分かっている中で意識を失うなんて、1人だったら絶対に死んでいた。
身体を見るがけがはない。違いがあるとすれば服装だが、それ以外は無い。
(貴族お忍び風衣装→寝間着)
そういえば、あの場にいた人たちはどうなった?
倒れていて狙いやすかったはずの私が無傷なんだから無事なはずだけれど。
考え事をしつつ、情報が欲しくて顔をキョロキョロと動か
「ん?」
なに?
なんなのあの扉?
あんなの無かったわよね?
この部屋にある扉はあっちの私の居間につながる扉だけのハズなんだけれど?
んんんんんんん?
カチャ
「!」
「え?」
元からあった扉が開いた。
反対を向いていたから誰が入って来たのかと顔を向けると、
「お目覚めですかお嬢様!」
カチャ
メイドの声とともに扉の音が聞こえ…
扉の音!?
「フィナイース様、大丈夫ですか?」
「…!?ァミレー…ゴホゴホ!?」
「お嬢様!」
やってきたのはアミレーナさんで声をかけようと思ったが、かすれた音しか出ずに思わずせき込む。
慌ててメイドが近寄り、私の上半身を起こして背中をさする。
アミレーナさんは一回扉の奥に戻り、コップのみ持って戻ってきた。
「水よ…」
小声で短い詠唱をして、コップの中を水で満たすと
「フィナイース様、お飲みください。」
と差し出してくる。
片手で受け取り、魔法で作った水は飲んだことないなと無駄なことを考えつつ、軽く飲む。
…うん。普通ね。
テンプレみたいに『う、うまい!これが精霊の力によりできた水なのか!』とか、『まずい!飲み水じゃないだろうこれ!』とかはまったくなく、ただの水だ。
「お嬢様、丸二日寝ておられたのですよ。」
「ふつ…!」
二日!そんなに寝てたの!?
寝坊どころじゃないわ!傷一つなくって病気もないのに二日!
「体調はいかがですか?どこ関わったところはございませんか?」
「だい…じょぅぶ」
ふう、ちょっとずつ喉も戻ってきた。
しかし…二日間寝ていたぐらいでこんなに喉が痛くなるのかしら?まさか口呼吸してた?じゃあいびきとかかいてた?
うわっ、シュールな光景
意図せず眠り続けるお姫様がグーガ―いびきかいてたらどうよ、王子様もスルーするわ。
「やはり回復魔法で起こした方がよかったのでしょうか…」
「それは何度も話し合って、自然に起きる方が体にいいから極力様子を見ることに決めたじゃない。」
「‥‥‥」
いつの間にか精霊と家のメイドが仲良くなっている件について。
これはあれか、ニストとルミリアがわたしを話題に意気投合(?)したのと同じ現象が起きてるのね?
このままでは家が精霊(しかも精霊王城勤め)がしょっちゅう遊びに来る謎深い家になってしまうのでは。
そこまで(家には)影響はないだろうが、よそから見たらすごい家になってしまう。
教会みたいに拝まれたりしないわよね?
…不味い、否定できない。
「ともかく、無事にお目覚めになったよかったです。でなければ、魔法でたたき起こすことになるところでした。」
「栄養が取れないですからね…三日間起きなければ王城で回復魔法と蘇生魔法を精霊総動員してかけまくるところでした。」
「お‥とにぃ‥ぎ」
大事にしすぎ!?
精霊総動員!?私一人に精霊総動員!?致命傷どころかかすり傷もない私に!
止めなさいルミリア!
いや、あなたは止めないわね。むしろ加速させるでしょ。
思わずスンとなった私にそれを裏付けする発言が届く。
「本当にどうしようもなくなったら、最終手段として前世の記憶を極限まで薄れさせてショックの原因を無くすか、ストシミアに行ったことの記憶を消すかする気でしたよ、陛下。」
「記憶消去!?」
「ああ、声が戻ったようですね。」
記憶消さないで欲しい!
せっかく思い出せた思い出なのに、今は今、昔は昔と割り切っていても、いざ忘れるとなったらそれはそれで話が違うのよ!
「紙!それからペン!」
「は?あ、はい、お嬢様。」
今のうちにやってはいけない事リストを作ってルミリアに渡しておかないと!
早急に、迅速に!
手遅れになる前に!
優先基準はっきりしすぎて手段が物騒なのよルミリアァ!




