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悪役令嬢、気絶する

「ここより北、町の最北部の川より南」

「ありがとう、フィナイース嬢」


宰相様と領兵たちと合流し、捜索が本格的に始まった。

宰相様は真っ当な価値観を持っていてくださり助かった。信仰の重要さも脆さも知っているので、盲目的ではないし軽視もしない。

普通に上位精霊の愛莉さんことリィに敬意を払って協力してくれた。

 後単純に彼本人が息子を連れ戻さないといけないと焦っていたので、私たちの協力要請が渡りに船だった。


「ところで、いつの間に精霊契約を?」

「アレの後ですわ」


※アレ=婚約破棄騒動


「それは災難でしたね。」

「そうでもありませんわ。」


そう、災難じゃない。元々殿下とは政略婚約だ。後悔はしていない。

人気のない道を使って北に向かって進みながら話す。恐らく人混みに紛れているだろうが、だからといって人混みの中を通れば追いつけなくなる。

宰相様と護衛2人、領兵3人と私たちで移動する。他の兵は巡回強化中か、要請を受けて出発できるように待機中だ。


「こっちに―」

「――危ない!」


ある程度捜索範囲に近づいたところで大通りを通ろうとしたら、小百合さんから鋭い声がとび、反射で頭を庇う。

キン、キンッと二回音がする。

腕を顔の前からどかしてみると手を前にまっすぐ伸ばした小百合さん、足元にはカランカランと音を立てて落ちたナイフが2本。攻撃を受けたのは火を見るより明らか。


「――お前らどけ!!」


今度は愛莉さんが叫ぶ。

愛莉さんの方を向くと片手を宰相様や兵たちの向こうに向けており手のひらに小さな火がともっている、と瞬間小さかったその火は火炎放射器から発射されたようにまっすぐ進み道を焼く。

火が消えた後、道は無惨にも焦げ付いており、その道の上にカサリという音とともに炭になり原型が分からない何かが落下した。


「どこから」

「「不明だ/見えない」」


一旦息を吸い端的に問えば、二人から返答が来る。

しかしその答えは決していいものではなく、思わず顔をこわばらせながら、四方八方に視線を巡らせる。

火の熱量に驚いたのか野良猫の一匹すらおらず、遠くから聞こえてくる微かな時計の針の音が集中力を削ぐ。


「ぐあああ!」

「…ッ!」

「―っな!?」


護衛が叫ぶ。

どこからか分からない攻撃に驚いた宰相様が声をもらす。

ばっと視線を向けると、白い手袋が血で赤く染まっている。

当てられたのは特に研がれていなく使い古された安いナイフ、恐らく最初小百合さんが弾いたものと同じ。

そして二人とも左手の甲から手のひらまで貫通している。

手の甲はそれぞれ黄色と緑の光がチカチカと、弱弱し気に明転している。精霊を呼ぼうとしたのだろう。


そんなことを脳内の冷静な部分で考えている。

しかし表面上に出ていなくても…いやだ、いや、いや!

血なんて見たくないの!


そう自分で拒否しておきながら、視線はナイフから、護衛の手のひらからはがれない。血は少しずつナイフを伝って落ちており、地面を汚していく。

ポタリ、ポタリという音が嫌なほど耳に届く。とうとう手袋が血を吸いきれなくなり指先からも血が滴り始める…


「こんなもの!」


どちらかが活を入れるように叫び、ためらいなくナイフを引き抜く。

負けないとでもゆうように、もう片方もナイフを引き抜く。

出血が増し、そこそこの量の血が一気に地面に落ちる。

怯える私を知らないよう、手袋を外し…


―その傷跡を直接見た瞬間、私の視界は暗転した。



ふらりと足元をぐらつかせたフィナイースさんは、そのまま膝から崩れ落ちかけた。


「フィナイースさん!?」


慌てて受け止めたが、危うく地面と衝突するところだった。

全員の視線がフィナイースさんに集まる。


「気を抜くな!」


気は抜いていなかったが、視線は確実に周りを向いていなかった。

さっきのような、嫌な物を本能的に感じ取りフィナイースさんを抱き込んで前方に跳躍する。

…正解だったということはそのあと証明された。

 さっきまでいた場所に、数多のナイフが刺さり、さっきいた場所を通るような軌道を描いたナイフが周りにも大量に刺さる。いくつかのナイフがほかの人に被弾する。

宰相を身を挺して庇ったのは護衛であり、わき腹に深く刺さっている。勢いよく血が噴き出す。

 慌てて結界を即興で張る。そもそも守りのユニーク精霊ではない私は、結界魔法は得意で、元々化けれるほど使えると言えどここまで慌てて張ったら薄くなる。


「クリスティ!離脱しろ!」

「はっ?!何言っているの!」


は!?

有り得ないでしょう、この場における最高戦力は私とあなたで…

精霊を呼ぶのを妨害された今、遠距離で攻撃してきてる相手が有利で、こちらは相手の居場所すら分からない。他のやつらは魔法を使う気配がない、恐らく剣なら使えるだろうがこの場では意味がない!


「ナイフは四方八方からきてる、人数なんてわかりはしない!いったん撤退すべきだ!」

「なら私は結界張るのに集中するからリィが逃がして!」


結界のひび割れたところにナイフが刺さらないように火で応戦している愛莉に怒鳴るような声で返す。

愛莉は舌打ちし顔をゆがませつつも魔法を変えた。火はナイフを打ち落としていたが、結界にまとわりつくようドーム状に変形する。


「ちょっと!?」

「いいから結界強化しとけ!」


思わず声が漏れる。結界の修復中の部分から熱気が届き気温が一気に上がる。

まずい。精霊の私たちは良いが、人間たちはもうすごい量の汗をかいている。このままじゃ脱水症になる!


「リィ、火力抑えて!」

「そんな余裕ない!」

「ナルハ!人間たちをこっちに!」

「分かった!」


春奈が愛莉に警告をし、それを愛莉は一蹴する。しかしこちらもそれどころじゃない。

人をとりあえず一か所に集め、熱遮断の結界を張る。しかし同時で、しかも両方即興で結界を張っているため、どちらも効果が薄い。早急に撤退しないと!

 愛莉もこちらに駆け寄って来て、二人で転移魔法を発動する。でも他の魔法を解くわけにはいかないから発動スピードが遅い。


「―――くそっ」


そう言い捨てて愛莉は炎の魔法を解除。

瞬間ナイフが複数飛んでくるがそれは結界にはじかれ、運悪く結界を抜けた何本かは宰相が剣ではじいた。

 しかし一本が私たちの正面に迫り―――


――視界が切り替わり、そこは精霊王城だった。


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