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悪役令嬢、運が悪い

視界が切り替わる。

行きと違って、帰りは転移するだけだ。

二人は転生精霊で、上位精霊ぐらいの力を持っているし、敗者の町はあくまで王都内にあるので、中間地点を作る必要もない。


しかし、これから行くところはそうもいかない。

テスティア男爵領は王都から遠い。いくつもの領を経由するわけではないが、なにぶんテスティア男爵領と王都の間に挟まっているカトラウェン領がでかすぎる。

お陰で最短でいくにしてもカトラウェン領のどこかに転移の拠点を作る必要がある。…が、もちろんそんな危険を冒す気はないので、拠点が2個に増えるだろうが、迂回路を使う。

私の気分的にはヒナト伯爵領を通りたいのだが、ヒナト伯爵領と王都の間にはストシミア侯爵領が挟まっている。絶対に通りたくない。


(読者の皆さんに解説! ストシミアが何かわからない人と思いますが、宰相子息で攻略対象のギルバート・リラ・ストシミアの家の家名であり領地です)


消去法で、その反対隣である。

しかし、この領地はほぼ砂漠であり中継地点を作りづらい。実のない土地だからそこそこ大きい領土でも治めているのはメヌ男爵(・・)だったはずだ。

でも気候がきつい分長子相続なんて言っていたらあっという間に没落なので第一王子派ではない。

 というよりこの家は極端すぎるので第二王子派の中でも有名だ。

当主の子供がどれも優秀でなかったら当主の兄妹の子供を、それも優秀でないなら従兄弟の子供をと、その代の当主と血のつながりがあって、他の血のつながりがある子よりも優秀なら当主のはとこの妾の孫とかの血の薄さで、今まで平民として生きていたとしても当主になれる。


そして当主になった子供を他の子供は全面的にバックアップする。

平民だったからマナーができない?なら社交界には私が出ます。

身体が弱い?なら貴族の友人の精霊に頼んでみます。

疫病について調べたい?書庫のどこに何があるか分からないでしょうから私が探します。

―というふうに、当主となった者が持っていない、知識、価値観、伝手etc.を使い貴族である彼らは尽くすように仕える。


いくら実力主義を銘うっても貴族だ。プライドは高いし庶民に仕えるなんてもってのほか。故に極端。生き残るために何でもした実力主義の究極点。だから第一王子派に私たちを差し出すことは無いだろう。





…とも言い切れないから怖いのよ!!

実力主義=何でも使う≒利益の為に私たちを差し出す可能性あり!

家は権力ある家なので天秤はこっちに傾きやすい筈だけれども、厳しい条件下で当主になった者はもれなく天才。私たちが思いつかない理論を組み立ててしまう可能性もないとは言えないわけである。


「ねえニスト、地図を出してくれる。」

「かしこまりました。」


脳内でひたすら考えてもこんがらがってしまうだけなので、地図を見ながら考えることにしよう。

目の前に国の地図が置かれ、それを覗き込む。


「ねえニスト。」

「はい、いかがなさいましたか?」

「テスティア男爵領に行くルートは、どこを通るのがいいと思う?」


私の問いかけにニストも地図を覗き込む。

ちらりと顔を伺い見ると、何とも微妙な表情だった。三つのルートがどれも欠点があることに気づいたのだろう。


「何ですかこの究極の三択。」


気付いただけでなく正直に声に出した。

敵、敵味方、味方?

どこに行くのが正解か、どこが警戒されているのかなんてわかりやしない。


「もういっそルミリア呼ぼうかしら。」

「そんな簡単に精霊王様を呼び出すなんて言わないでください。此処は良いですけど外じゃあ密偵がどこにいるか分かりませんよ。」

「誰もルミリアの名前なんて知らないんだから、いいでしょうちょっとぐらい。」

「旦那様に報告しますよ。」

「習い事が増えるじゃない時間が無くなるわ、頼むからやめなさい。」

「さあどうしましょう。」


この慇懃無礼執事!

…と叫びたい気持ちにかられるが落ち着け私。

元はといえば私の不用意な発言が原因なんだから火種を増やすな、我慢しろ。

ああもう、前と混ざってきているからか価値観がぐちゃぐちゃだわ。今世の価値観が強く出るときと前世の価値観が強く出るとき、入り混じっているせいで自然な態度に違和感が満載。矛盾してるわ。


「直進は無しですね。メヌかストシミアとヒナトか…

心証面では通りたくありませんが、ストシミアとヒナトがいいと思います。少なくともメヌに拠点作って売られる可能性を増やすよりは、宰相が子息を抑えてくれているであろうストシミアと、味方が確定しているヒナトを通るほうがいいでしょう。」

「そう?‥‥‥まあこれ以上悩んでも結論は出ないでしょうしそれでいきましょう。」

















――この時の二人の判断は通常だと正しいものであった。9割の確率で最善策だった。

 二人に対して言えることは、”運が悪かった”に集約される。話を聞いた十人中十人が手を額に当て空を仰ぎ見てしまうぐらいに、運が悪かったのだ。実際転生精霊のうち5人と最上位精霊の7人が初めに聞いたときそうした。

 このとてつもない不運は、そう…偶然フィーラがエデンを見つけてしまった時のそれに似ているだろう。本人には何の過失も失敗もないが、劇的にタイミングが悪かった。


(まさか、拠点確保のため歩き回っているわずかな時間に、ギルバート脱出補助(自称救出)に来て、しかも成功しちゃったこいつら(殿下たち)にエンカウントするとか有り得ないでしょう!?)


フィナイースの災難は、まだまだ終わりそうにない。


フィナイースは悪役らしく、受難続きです。あちゃ~

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