悪役令嬢、初冒険に行く3
結局、フィーラが依頼のイオイの葉をすべて集め終わっても、私はメイル草を集めきらなかった。
「ごめんねフィーラ…」
「いいよいいよ。気にしないで。」
フィーラに手伝ってもらいながら森を見まわす。
鬱蒼と茂る森の中では、足元も見えづらい。そしてそれがとても厄介。
落葉、木の根、低木などが視界を遮ることで、草を見逃してしまうからだ。
フィーラは目が良い。
もちろん精霊王だからか、触覚以外の五感は良いし勘もいい。
(触覚は痛みも感じづらい、どこをどれだけ傷つけられても死なない身体の影響で、精霊は基本的に触覚が悪い)
つまり私より収穫量が多い。
私完全に足手まといだ、この状況。
ただ、魔法使えない申告(嘘)をしているフィーラは収穫が難しいので、そこは私の担当だ。
役割があってちょっと安心。
そうして黙々と(と言っても会話はしているが、集中している様子で)見つけた薬草を採っていく。
その後ようやく必要な分が集まった。
「依頼が終わったらどうするの?」
「自由行動だけど、私は一旦あっちに帰るよ。愛莉と小百合がきたらね。」
薬草でいっぱいになった袋をそれぞれ抱え歩き出す。
袋はパンパンでも中身は軽い草だ。嵩張るがふらつくことは無い。
「私は連絡係だけれど、よく考えたら契約精霊の子に伝言係をしてもらってるから、ほぼ何もしてないのと同じなんだよねー。」
歩きながらフィーラが話し出す。
前後の脈絡がない気がするが…
「だから、子供たちをかまいに行こうかなって。」
実際は繋がっていた。自由行動で何をするのか話しているようだ。
子供たちということは精霊たちか。みんな喜びそうだ。
脳裏に思い浮かぶのは人が気で動けなくなった城下町。そこで穏やかなほほえみを浮かべるルミリアだ。
…最初から変装していけばよかった。
「そう。皆喜ぶんじゃない?でも王様が急にやってきたら驚くんじゃない?」
「大丈夫!私は案外アクロバティックなの!」
「案外でも何でもないわ。」
「え?結構意外だと思ってたんだけどなぁ」
だべりながら歩く。
一応薬草がないか探してはいるが、そんな簡単に見つかるわけもないし、真剣に探しているわけでもないので当然とばかりに見つからない。
あとフィーラ、あなたはとても行動的だ。自覚してあげて?
…主に最上位精霊の皆さんの心労軽減の為に
カランカラン
扉を押し開け、一直線に受付に行く。
前には一組のパーティがいたが、ここは王都の冒険者ギルドだ。
王都の王城を挟んで正反対、ここより王城に近いところに”メルディル王国ギルド本部”があり、ここは北方支部だとしても、王都にあるだけあって相当でかい。
受付も右側左側にそれぞれ5つずつあるので、何の問題もなく直ぐ受付できた。
気を使ってくれたのか、受付はさっきまで事務仕事をしていた女性を呼んで切れた。
「あら、お早いですね。」
「え?早い?」
そしてかけられた声に首をかしげる。
「見つけるのも採るのも難しいので、得意不得意が分かれるんです。」
「そうだったんですか…」
「ええ。女性みたいに丁寧に仕事する人が得意なんですが、何分女性が少ないので需要が大きいのに供給の少ない仕事ですよ。冒険者は大雑把な人も多いですしね。」
依頼書とカードを受け取り、テキパキと受付しながらいろんな話をしてくれる。
男所帯の中、圧倒的少数側の女性は、どうやら横のつながりが強くなるらしく話題が多い。
腕は動き続けているのに目線はこっちに向いてしゃべり続けている。
そうこうしているうちにカードが返却され報酬が支払われる。
「---で、聞くところによると――が―で――」
‥‥‥
…話が終わらない。
フィーラはまた張り付けた笑顔になっている。
よくよく見たら最初ここに立っていた男性職員さんが後ろで手を合わせて謝っている気がする。
しかしマシンガントークは終わりをみせない。
そんなに話したりないのか?それともどれだけ話しても止まらないのか?
―――15分後
「すまん!!」
さっきの男性職員さんが手刀で女性職員さんを落として、やっとのことで解放された。
男性社員さんはまあ、普通の人だった。気を使ったつもりで交代したら、女性同士で気が緩んだ女性職員さんがうっかりマシンガントークを始めてしまい、止められなくなったのだとか。
それでも、我に帰ったら止まるだろうと思ってこそっと謝罪し(これが私が見たもの)仕事をしに行ったら、戻って来ても終わってなくて慌てて落としたのだとか。(意識を)
ギルド内で常に私たちに向けられていた奇異の視線すら同情の視線にとって代わっている。
フィーラの表情はずっと変わらない。張り付けた笑顔のままだ。大丈夫だろうか。
あ、顔もみほぐし始めた。固まってたのか。
「いや、止めてくれてありがとう。」
フィーラはわざとゆったりさせた声で言う。
今の”フィーラ”の顔は平凡で、雰囲気も平凡になっているが、一瞬『母』の顔が出そうになって取り繕った。
「本当にすまん!」
「ああ、大丈夫ですから。」
何度も謝る男性を2人で慰めて、5分ぐらいたった後ようやくギルドを出た。
さっさと仕事を終えたはずなのに、20分以上の足止めだ。
愛莉さんと小百合さんはどうしているだろうか。待たせているなら申し訳ない。
そう思いつつ、人気のない路地裏に歩を進めるのだ。
愛莉と小百合はルミリアから連絡があるまでトランプしてます。




