悪役令嬢、初冒険に行く2
「あ、これじゃない?」
「うん。あってるね。」
薬草採集に指定された場所、北西の森にて、現在依頼をこなしています。
え? ロニアーの森?
あんな危険地帯に行く依頼がEランクにあるわけがないじゃない。
最終の依頼品は二つ
塗り薬の原料になるメイル草と、沁みない消毒液になるイオイの葉。
注意事項は、メイル草は根っこごと引き抜くこと、イオイの葉は少しでも虫食いや枯れかけがあったら受け付けない事だ。
しかしこの条件、地味に面倒くさいのだ。
メイル草はそれはそれは脆くって、縦にも横にもちぎれやすい。そのまま引っこ抜こうとでもしたら即真っ二つになってしまう。
イオイの葉はルミリア曰く虫たちにとって栄養豊富な餌らしく、地面に近いところに出来た物から片っ端から食べられてしまう。よって手が届く場所のほとんどの葉は半分以上食いちぎられている。
だから私は収穫の為に、魔法を使いまくっている。
「うぉあ!あっぶな!」
次のメイル草を探してうろちょろしていたら、どこからか叫び声がした。
―――紛れもなくルミリアの声
「ルミリア!どうしたの!!」
「ちょっ!?しー!静かにルリナ!」
離れない方がよかったかもしれない。
ルミリアってどこか危なっかしいから、私がちゃんとしてなきゃいけなかったんだわ。
…と思っていたら、背後から口を塞がれた。
「もご!?」
「落ち着いてルリナ。」
ルミリアだった。
なんなのよ紛らわしい。
無理やりルミリアの手を引き剥がす。
「ルミリア!一体何があっt…」
「わーー!わーわーー!!」
話そうとすれば大声で遮られた。
肩を掴まれて半回転。ルミリアと向き合う。
平凡な容姿のルミリアは右手の人差し指を口元にあてて焦った表情をしている。
「いや、叫んじゃった私が悪いけどさ、あれは木の枝から落ちそうになっただけ。
後私はフィーラだから!この森今、他の依頼受けた冒険者もいるから!」
「!!」
そっか。今はフィーラだった。
それに一応フィーラは魔力ほんとうに少ない設定だから、落ちそうになっても飛べない。とはいっても、
「叫ばないでよ。落ちてもケガなんてしないでしょ。」
「反射でつい…ごめんなさい。」
気まずそうな顔をするルミ…フィーラ。
原因の一つが自分にあることを自覚しているようだ。
しっかしどうしようかこの雰囲気。冒険のワクワクさが7割減だ。
「「‥‥‥」」
相手と目を合わせる。
…うん! なかったことにしよう!
どちらともなく笑う。
「あっ、メイル草なん個採れた?」
「それがなかなか見つからなくって。魔法でやるから採集自体は問題ないんだけれど。」
「薬の類の物はいくらあっても困らないからね。取りすぎて絶滅しても困るんだけれども。」
「そっちはどうだった?」
「さっきの場所は結構群生してたけれど、その分まとめてやられてたからね。あんまり取れなくって。でも8割は採れたよ。」
情報交換
分かったのは思っていたより進捗が遅いということだ。
完全にロマンで選んだ依頼だったとしても、思っていたより遅い。
特に私だ。フィーラは魔法の使えない状態でさっさと見つけれているのに、魔法を存分に使える私が後れを取っている。
どこはかとなく…悔しい!
(ちなみに私の収穫した量は7個。7/12個である。)
「じゃあまた探しなおしだね。」
「あ、一か所イオイの葉見つけたよ。私が来た方向に蔦が杉の木に巻き付いてるところがあって、そこの近く。叫び声が聞こえて摘み損ねちゃったけど。」
「おおありがと!でもごめんね。私はメイル草見つけらんなかったや。私が通ったとこには生えてなかった。」
「場所限定できただけでもありがたいよ。なら私はあっちに行ってみる。」
「了解。またね。」
「見つかったら呼んで。私は魔法で合図する。」
「うん。」
フィーラは私が来た方向に歩いて行った。
私はフィーラが着た方向以外のところに向かおうと思って、はて、どっちの方向から着たのだろうかと思う。会った時背後をとられていたが、そこは私が来た方向だ。
きょろきょろと周りを見渡し、足元に視線を落とす。
あわよくば足跡など見つからないだろうか、まじまじと眺めるが特に変化なし。じゃあ上か?さっきは木から落ちかけたと言っていたし、木と木の間を飛び回って来たのかもしれない。まさに忍者のごとく。
しかし痕跡はない。そこまで忍者に似せなくっていいだろう。困るのは私だ。本当にどっちから来たんだ!?
と、思っていたが、頭を柔らかくすればすぐ分かる場所にあった。上でも下でもなく、私の目線の高さにある木の幹に軽く切り傷が入っている。
傷の大きさからしてフィーラが買っていたダガーで切りつけた物だろう。見つけやすいよう目に入りやすいほうに印をつけたようだ。そんなことするぐらいなら痕跡を消さないで欲しい。
そしてその目印のない方向に走り出す。
採集量でも負けているのにスタートも遅れてしまっている。依頼に時間制限はないが、やることは山済みなのだ。
ある意味趣味の時間であり、もっといえばまだ公爵令嬢であったことが判明した私にとっては身分保障用に作ったカードもいらなくなった現状、ぶっちゃけいえば無駄な時間である。
他にもしないといけない事がある中で必要のないことをやっているのだから、なるべく時間を減らした方がいい。やめる気は一切ないが。
「見っけ。」
(我儘を通しているのだから、行動は手早くしないと。)
そう考えつつ、収穫の為の魔法を発動させるのであった。
▷フィナイース は 冒険者登録 が ルミリア の 案だということを 忘れている !




