悪役令嬢、初冒険に行く
カランカラン
大きなウェスタンドアを押し開ければ、前回には無かった音が響く。
単純に前はゆっくり慎重に開けていたのが、今回は勢いよく開け放ったからだ。
しかし、蝶番のおとはギイィと鳴るイメージがあった。この扉は新しいのだろうか…
前回はただ好奇心で見まわしていたギルド内部は、相変わらず酒場のような雑多な雰囲気をまとっている。
ルミリア…ではなくフィーラは、迷いなくクエストボードに歩み寄る。
後ろ姿を見ていると、左右に揺れるポニーテールが少し面白い。
いつもより短い髪はポニーテールにすると肩にも届かない。まあ、だからこそ揺れるさまが新鮮で面白いのだが。
考えつつフィーラに追いつく。
眼前のクエストボードに張られた依頼はすべて最低ランク、Eのものだ。
「最初だから、簡単に薬草採集でいいかな。」
「そうだね。無理して怪我したら本末転倒だし。」
そのうち一つ、「塗り薬の原料になる、以下の薬草を採集してほしい…」という要旨の書かれた依頼をベリッと剝がす。
冒険者は学のない者も多いため薬草の絵も載っており、大変分かりやすい。しかし依頼表は依頼に持っていけるのだろうか…?
しかし、Eランクでも様々な種類があるようだ。
薬草採集をはじめとし、犬の捜索、綺麗な花畑を見たい、観光案内、店の呼び込み、etc.盛りだくさんだ。
むしろ『らしい』ともいえる、スライム討伐や薬草採集が圧倒的少数。どうやらD以上の依頼にいっているようだ。
「おーい、ルリナ!」
「なあに?フィーラ。」
クエストボードを覗いていると、いつの間にか受付前にいるr…フィーラがこちらを呼んでいる。片手に依頼表をもって、こちらを手招きしている。
そんなフィーラに近づくと、彼女が見ている物が分かった。
「パーティ登録?」
「そう。これからもずっと同じ依頼を受けるつんりでしょう?ならやってた方がいいかなって。」
そういいつつパーティ登録用紙にサインをする。
…ただし偽名だが
「パーティ名、どうしよう…」
「あ、パーティ名は無くても大丈夫です。ですが、Bランク以上になりますと指名依頼が増える関係上、付けてもらうことになります。」
「そうなんですか。ちなみにどんな感じの名前があるんですか?」
話しかけてくれたギルド職員さんは昨日登録してくれた人と同じ人だ。荒くれ者を相手にすることも多いためか、彼女以外の職員で女性は見たことがない。
笑顔が似合う女性で、なかなかにコミュ力も高そうだ。
「Sランクの有名どころだと、“栄光行列”“アームズ”“光陰の剣”。AやBランクだと“暁光”“勇猛果敢”“パストレイン”などなど。」
((思ってたよりめちゃくちゃだ))
他にも職員さんはこんなのが、あんなのがと楽しそうに語ってくれているが、いろいろ待ったをかけたい。
いや、私もいい名前を思いついているわけでもないのだが、ツッコミたくもなる。特に栄光行列と勇猛果敢。お前ら絶対ナルシストと脳筋だろ。
「ええと、パーティ名今は無しで。」
思わず話を戻して止める。不思議な名前がこれ以上増えたらキャパオーバーしそうだ。
フィーラも顔に微笑を張り付けて同意している。
「そうですか。残念です。」
ギルド職員さんは本当に残念そうだ。
この『残念』が『名前があったら仕事が楽になる』というような残念であることを祈る。
「では、薬草採集の依頼を受けるということでよろしいでしょうか。」
「「はい。」」
さて話は戻り、依頼の受注だ。
ギルド職員さんは少しかがんで、机の下から荒い目の袋を取り出した。
「この袋に、指定の薬草を最低限指定の数入れて持って帰ってきていただきます。指定の数以下の場合は依頼失敗となりますので、間違った薬草を入れている可能性も考え多めに持ってきた方がいいですよ。」
ずいぶん親切に教えてくれる。
冒険者は問題を起こすものも多い。職業的に暴力的になりがちだからだ。
その為、冒険者に払う礼儀は無いという人が多数。例として貴族。
ということは、この人の私たちへの対応は、破格と言えるものだろう。
「ご親切にありがとうございます。」
そうと分かったからにはきちんと頭を下げる。
ただし、目立つのは嫌なのでちょびっとだけ。具体的には会話を聞いてない人から見ると頷いただけに見える程度。
「ありがとうございます。」
フィーラも私につられてか合わせてか、きちんとお礼を言う。礼はしていないが。
しかし予想外とか、驚いたとかの反応は無く、職員さんは軽く笑って流す。
「では、お気を付けて。」
ギルド職員さんがそういった後、私たちは体を翻して出口に向かった。
ためらわず扉を押し開ける。
カランカラン
パーティ名どうなるんでしょう…?
誰か!いい案ありませんか!?(((( ;゜Д゜))))




