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悪役令嬢、会議する3


「フィナに聞いたけど、魔王は精霊王の敵で魔物と魔族の王ってどういうこと?冒険者兼旅人やってたのなら、知っていたんでしょう?」

「まあ、何というか…」


ルミリアが美少年に詰め寄る。

ジト目で、睨むまでとはいかずとも圧がある。だが圧倒的に美少女なルミリアだ。それでも絵になるなんて…美形凄い。

対する美少年は焦った様子…を隠して顔だけは飄々としている。


「誤魔化さないで!しかもセルシエ信仰結構あるはずでしょう。そんなに強いんだから。だけど人間は魔王への信仰を捨ててる。持ってるのがいても極少数。なら何に信仰されているのさ。」


ルミリアの言動から察するに、神の力は信仰と直結しているのだろう。

そして2人の力量は互角。だが、片方は信仰されていない…。

 うん。確かに訳が分からない。


「第一最初らへんで、私みたいに人間界に行って一緒に創ればよかったじゃない。」


これは意味が解らない。

何を作ったの?

最初って何の最初なの?


「そうすれば少なくとも、魔王が目の敵にされるのは防げたでしょう。顔を隠したかったのなら、私みたいにヴェールでもかぶっていたらよかったのよ…」


気遣い百パーセントじゃない。

しかし言い過ぎたと思ったのかしょぼんとした表情になるルミリア。

で、さっきまで気圧されていた美少年は落ち込んでいくルミリアにまた焦りだす。

だが声のかけ方が分からないのか半端に手を伸ばしてフリーズしている。


「ルミリア、一旦落ち着いて。お茶でも飲んで話しましょう?後私にはよく解らなかったから、説明お願い。」

「‥‥‥」


無音でするりと動き、お茶を飲むルミリア。

フリーズは解けたけれどどうすればいいかは分からない様で、場を持たせるようにいそいそとお茶を飲む美少年。

隣の(やっと座った)ニストの視線が気になって、本気の令嬢モードでお茶を飲む私。

皆がお茶を飲み始めたからか、その場の流れで気楽にお茶を飲むニスト。


同様の行動をしているのに、全く違う私たち。

しかしながら、空気が悪い!

おい元凶な美少年!どうにかしろ!


睨んでいると、こちらに気づいた美少年。

…どうすればいいの、っていう視線かしら?

いや…なんとかしろ、かもしれない。

嘆願ってことしかわからないわ。

ああもう!話題振ってやるからどうにかしろ!


「ところで、最初とは何?何を作ったの?」

「え~、あの。」


さっさとしろ!


「創ったものは『世界の内側』だ。世界の外側だけ作っても意味がない。“物質”としかいえない地面が延々と続く場所だけ作っても、価値がない。山や森、海に砂漠、そこに生きる生き物が必要だ。」


ふむふむ。

だだっ広いだけの場所に中身を作っていたのか。


「最初は、もう分かったろうが世界を創ってすぐの事だな。ルミリアは最初らへん、精霊界を後回しにして人間界を作っていたんだ。もちろんある程度できたら人間も創ったから、途中からは共同作業だった。

対し俺は、魔界を先に創った。人間界も時々創っていたが、世界の外側から干渉していたから、人間とは会わなかったんだ。」


同じ行動でも場所が違ったという事?

美少年は分からないけれど、ルミリアだったら外から干渉するだけにはしなさそう。

でも美少年も人間に化けていたくらいなのだから、人間界に興味がないわけではなさそうだけれど…


「ルミの最初の質問の回答は、まあ……。

で、強さは、人間は俺を敵と思っているが、それは俺の存在を断固として信じている事と同じだ。負の方向であるが一種の信仰に変わりない。それで力が強いんだよ。」


人間が『精霊王と敵対する魔王という敵がいる』と信じ込んで、それが『魔王という存在がいる』の裏付けとなった、というわけなのね。

けど信仰に力が左右されるなら、だんだん2人は敵対していっちゃうのでは?


「絶対悪の理由は?」

「黙秘権を行使する。」


いやルミリア、そこじゃないでしょう。

『信仰=強さ』=『負の信仰=負の力』なら『精霊王信仰=魔王絶対悪』=『精霊王=魔王の敵』が成立するのよ!?

危なくない?

原因究明より対策しないといけなくない?


「それより改善策を」

「断る!」

「断るな美s…魔王様!」

「今なんて言いかけたおい。」


私は声を荒げる。

心中で思っていた『美少年』が三人称として出てきそうになったがまだセーフ。

マジレスするとアウトかもしれないけれど…いえ、セーフと言ったらセーフよ!


「信仰で力を持つのなら、精霊王の敵っていう人間の“思い込み”で実際敵になっちゃうかもしれないでしょ!」

「え!!」


ルミリアが叫ぶ。

私の予想では、唯一対等な関係に少し依存気味になっているであろうルミリアに、美少年が敵となるのは悪夢と言えるだろう。

しかしそれは美少年の方も一緒なはずだ。

私たちと会った時の態度から見て、美少年はルミリアに過保護だ。

なら敵対はこちらにとっても悪夢だろう。


「あ? そうなるんなら放置なんてするか。信仰が左右するのは単純な力だけだ。思想の方向は影響受けねえよ。」


…調査済みだったようだ。

どうやって裏付けを取ったのかしら。実際やってみたとか?前の思想が塗りつぶされてしまいそうだけど…


ルミリアはぽかんとしている。

だがあまり目立っていない。

それより、メイドさんたちの視線が気になる。

ルミリアに過保護なのは精霊もだった。


「…意外。」

「俺が抜けているといいたいのか?」

「めんどくさがりだと言いたい。」

「まあ確かに。とてもめんどくさかった。なにせ…」


ここで一旦話を切り、苦笑しながらこう嘯いた。


「いろんな世界で信仰が曲がっちまった神たちから、変化前と変化後の様子を調べて統計したんだぞ。面倒なことこの上ない。」


と言う。

難しくない? 飄々と言っているけれど難しくない?

てか飄々とする外面を被るのは何故?結構本気で言っているのに茶化しているようにしか聞こえないわよ。


「‥‥‥そか。」


ルミリアの返答は限りなく短かったが、抑えられない安堵がこもっていた。

…やっぱり性格の面でも対照的ね、この2人。

美少年は極力飄々とした様子を取り繕って本心を隠し、

ルミリアは少しでも親しくなれば案外あっさりと素を出してくれる…素にも種類があるが。


「…安心した。」


花が綻ぶ様に笑うルミリア。

…いや、冷静にできる場合ではあぁ!

慣れてきても無理。ふにゃあって笑うのにも目を逸らしてしまうのにこれは無理!

マナー度外視して後ろを向きソファーに顔をうずめる。


するといろんな方向からバタバタと音がした。

振り返って無事な自信がないからそっと隣に目線だけ動かす。

最初らへんに注意していたルミリアに、見惚れている。

目を逸らしたいけど逸らしたくない…で、結局逸らせていない。

なんか、すっきりしないな…。

 ニストから無理やり目線を外し、正面(後ろ向きだけれど)を見る。

待機していたメイドさんたちが倒れかけ、互いを支え合っている。

アミレーナさんやリシーリアさん(ルミリアの専属らしい)は多少の耐性があるのか、根性なのか分からないが、一人で立てているようだ。


「…あれ? 皆?どうしたの?」

「気にすんな。取り合えずコレかぶれ。そして会議が終わるまではとるな。」

「え? どうし…」


困惑した声が部屋に響き、美少年はそんなルミリアに何かをかぶせようとしたようだ。

ぼふっと音がして、ルミリアが「邪魔。」と外そうとしたようだ。美少年が「絶対取んな!」と叫んでいる。


「お前ら、もういいぞ。こっち向きやがれ。」


通常よりさらに増して荒い口調で美少年が言う。

振り返ると、ルミリアには毛布がかぶせられていた。


「応急処置だ。おい、誰かヴェール取ってこい!人間の前で使ってたのあったろ。あのほんとに顔が見えないやつ。」

「「「「「はい!かしこまりました!」」」」」


「この毛布意外とあったかい」とほんわかしているルミリアと対照的に周りは大慌て。

メイドさんは飛び出し私は振り返れず、ニストはようやく顔を逸れせれたようで大きく息を吐いている。


「ルミ、お前も別室行ってヴェール取り付けられて来い。」

「必要? 素顔隠す必要はn」

「あ~~る~~!」


そこからごちゃごちゃと口げんか未満な口論がはじまったが、

必死の説得に折れたルミリアが不思議そうに部屋を出て行った。


「…‥‥つっ」


美少年はルミリアが部屋を出た途端顔を抑えて悲鳴染みた声をもらす。

恐らく顔は真っ赤だろう。それはそれは即予想できる。


「‥‥すまんが、この痴態は黙っててくれないか…?」

「助けてもらったのは私たちの方だし、いいわよ…」

「お二方、できれば自分の醜態も黙っていてくれませんか?」


私たちは神妙な顔でそれぞれ頷いた。

この時、死線を通り抜けた戦友のような一体感がうまれた。



ルミリアは愛されキャラ。

基本的に四方八方から愛されている(今世は)

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