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悪役令嬢、会議する2


「とはいっても、乗り込んでしまえばいいんじゃないかしら?」


私が言うと


「さっさと殴りたいんで、賛成です。」


ニストが賛成し


「その前に第二王子に立太子してもらいたい。」


美少年が提案し


「現公爵救出して味方にしよう。」


ルミリアが希望する


「もうこれでよくない?」

「第二王子立太子、現公爵救出が先だな。」


そしてさっさと行動指針が決まった。


「けど、第二王子の契約精霊は下級なのよ。本人は有能なのだけれど。」


精霊至上主義は、大なり小なり国に根付いている。

平民ですらその風潮があるのだから、このままだと立太子反対の者が多い。

第二王子派ですら、第一王子よりマシだとついている者が多い。つまりは妥協されている。

御輿に担ぎ上げるのに丁度よかった、ぐらいに考えている者が大多数だろう。

本人も王位を取ろうと動いているとは聞かないし。


「第一王子派は古い考えに固執しますからね…精霊至上主義をクソ王子に植え付けたりしていますし。」

「第一王子派は一応最大勢力だよな?勢力全員が団結して立太子を妨害してくるのか、面倒だ。もう適当な精霊見繕って契約させたらどうだ?」

「私は愛しい子たちの自主性に任せているから。」


美少年は契約を解除させ、新たに高位の精霊と契約させようと提案する。

それに対して、ルミリアは『第二王子について』の資料を眺めながら言外に反対し、その資料を机に置いて一点を指さす。

そこには仲良く魔法で遊ぶ、第二王子とその精霊の写真があった。


「じゃあ…進化しかないか。」

「そうだね…。本人たちの意思にもよるけれど。」

「基本精霊ルミに甘いから、契約精霊の方はどうにかなる。問題は第二王子の方だ。」

「彼が立太子を望まなかったらそこで終わりになっちゃうな。どうする?」

「ルミ、最終手段として第四勢力を作るのを視野に入れろ。」

「女王即位?」



それからの会話は、もう2人だけで進んだ。

そもそも進化って何よ。某人気ゲームのアレか?

精霊ルミリアに甘いって…。完全にマザコンじゃない。

まさかの王女様が王太女になるの?

というか進化が気になりすぎるんだけれど!


「説明なさい!」

「おおッとフィナごめんけど主語をくれないか?」

「お嬢様は進化について知りたいのですよ。」

「またさらっと読心して…」


進化について知りたかったのは本当だけれど。

急に読心術をはさむのやめてほしいわ。

まあ、急じゃなかったらいいというわけでもないのだが。


「進化?その名の通り進化だよ?」

「恐れくそういう意味じゃないと思う。そもそも精霊や魔族が進化できることを知らないんだろう。ちゃんと説明しろ。」

「じゃあ最初から説明すると…


精霊は修行すると強くなれる。

けれど、どれだけ修行しても階位は変わらないの。

でも私が力を更に与えた場合は違う。

実力自体はそのままで、階位と、これから強くなれる上限が上がるんだ。」



…チートか

いや、ルミリア元々チートだったわ。


「あー…、つまり?下位下級精霊な第二王子殿下の契約精霊を、中位精霊や高位精霊に進化させることで、精霊至上主義を味方につけよう作戦?」

「正解!」

「人間の常識が壊れるわ…」

「国が壊れるよかましだろ。」

「確かにそうだけれども‥‥‥。」


言っていることは正論だけれども。

固定観念はそう簡単に壊れな…壊れるわね。というか壊すわ、この2人が


「精霊が進化…そんなことができるのですね。」


唯一このメンバーの中で純粋にこの世界の人間であるニストは急激な変化に取り残されている。


「慣れなさい、ニスト。」

「お嬢様の方が自分より柔軟な思考ができなかったと思うのですが。」

「慣れたのよ(転生した状況に)」

「慣れたのですか(規格外の2人に)」


慣れて諦めたら問題ない。

『ルミリアだから仕方がない→この2人だから仕方がない』に変化させることで対応すればさして思考に影響はない…はず!


「取り合えずは第二王子殿下に味方になっていただかないと。」

「そうだね。会いに行く?」

「まず国王に話さにゃならんだろう。」

「混乱を避けるため公爵家の方で連絡を入れていただきましょう。」

「精霊に伝達してもらえば?」

「りょーかい!連絡係には私が最適!」


精霊王が連絡係…

国民が聞いたら抹殺されるわ、私。

 ※精霊至上主義国=パシリとか有り得ない


「じゃあ俺はやっぱ情報収集係か。カトラウェンの現当主に突撃してくる。」

「魔王が現れたら人間全員大混乱です。やめてください。」

「主従揃って突っかかってくんなよ。」


魔王が情報収集係…

国民が聞いたら抹殺されるわ、私

 ※魔王絶対悪定説=魔王を国に入れた魔女


「なら私は正面からレ―ヴィアン並びにカトラウェンに突撃してきますわ。」

「自分も御供いたします。」


なら私たちは囮になるのが良。

堂々と宣戦布告をレ―ヴィアン伯爵にしたから違和感もない。

このメンツじゃあ、貴族社会に行けるのも私たちだけ。最大戦力達(ルミリア・美少年)は人間の身分はどうやっても平民だ(冒険者)。

貴族に養子にでも行けば参加できるが、ルミリアは精霊たちが許さないだろうし、美少年は貴族をメンドクサイと思っているだろう。


「フィナが囮?拒否する。」

「適材適所でしょう?」

「おいルミ、これに関してはコイツの言うとおりだ。」

「フィナを『コイツ』なんて言わないで。」

「過保護か」


ルミリアは反対してきた。美少年の言う様に過保護である。

というかルミリアこんなに自分の意見を貫くタイプだったっけ?

いえ、意見を貫くのは変わらないのだけれど、そうじゃなくって。意見を強く出しても、それを“我儘”でなく“気遣い”と思わせる態度をとっていたはず。

…気遣いし過ぎて失敗していたけれど。

さっきの発言もいつもなら『フィナは人間だよ?危ないじゃない』というような言い回しをしたはずだ。

そんな態度になっている理由…




十中八九美少年だろう。




恐らくこの中で…いいえ、世界の中で、たった1人だけ気遣う必要のない相手と認識されている。


 精霊は全員もれなく彼女の子供や孫又はその子孫。そして自身より弱い。『指導対象であり庇護対象』だ。自分が察して動かなければと思っているだろう。

転生精霊は例外だが、ルミリアより弱い彼らは、昔のような関係と少しずれているだろう。ルミリアより才能があったはずの者たちも、転生精霊は精霊である限り例外なく眷属…つまりは部下、上下関係が出来てしまった。


 人間は見守る対象だ。過干渉はせず子供たちに任せることで、成長させようとしている。意識的に自分より下に見ている点は否めないが、人間の価値観を持っているルミリアは無茶振りをすることもなく、力を持っていない人間を『見守り、時に制裁を下す対象』と思っている。一方的に見て対処する、『陰ながら支える必要がある対象』とも思っているだろう。


 魔族はまだわからない。会ったこともないから分からないが、(精霊界で)城下に降りた時のルミリアの精霊たちへの態度を見るに、年下への面倒見がいいタイプだろうから、近所の子供扱いかもしれない。だとしたら『何かあれば対処できるよう微笑ましいと思いつつこっそり手伝う対象』が近いだろう。



では魔王は?

共に生まれ、共に育ち、共に世界を創った魔王なら?

精霊王と対で、唯一対等な魔王なら?


一切の遠慮のない、『ルミリア』が出てくるだろう。



「囮なら私がやる!」

「精霊王が囮とか笑えねえよ!」

「そんなん言うならセルシエは旅人じゃん!魔王が冒険者とか全人類の背筋が凍る…」

「? ‥‥‥どうした?」

「‥‥‥」


予想通り素が出て、議論が白熱していたその時、急にルミリアが黙り込んだ。

だんだんとフェーズアウトした声はもう聞こえなくなった。


「そうだった…元々それを聞こうとしてたんだった…」

「どれだよ。」

「『魔王=全人類の背筋が凍る』のとこ。」


…そういえば、ルミリアは人間と魔王が敵対関係(一方的)なことに驚いていたわね。


「なんで絶対悪になってんの!?」

「省略しすぎてわかんねえよ!!」



議題は、逸れたのだろうか?戻ったのだろうか?



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