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悪役令嬢、会議する1


「まずあのクソ王子は、さっき言ったとおり貴族の屋敷にいます。かくまっている貴族はカトラウェン」

「カトラウェン?レ―ヴィアンじゃなくって?」

「え?」

「待った、最初から整理しよう。俺も情報の真偽が知りたい。」


会議が始まったが、貴族情勢に詳しくないであろうルミリアと美少年がいるので、情報の整理からということとなり、一旦リセット。


「じゃあ、私が今の情勢について説明するわ。」


ニストとアイコンタクトし、私が説明係となる。


「まず我が国は、今3つの勢力がいるわ。第一王子派と第二王子派あとは中立派。」


そういうと2人は書類の山を呼び出し、頷く。

それを理解の合図と受け取って、顔を上げない2人をそのままに話を続ける。


「第一王子派の主力は長子相続を絶対とする老齢貴族が中心。

 第二王子派は実力主義の若手貴族中心。」

「もちろん老齢貴族が第二王子派なのも、その逆もあります。」


ニストが補足を入れ、書類を見続ける2人はまた頷く。


「老齢貴族は基本50歳以上で、ほとんどが子供に爵位を譲っているわ。だから第一王子派は親の影響が強かった、又は強い貴族が多い。中心貴族はレ―ヴィアン伯爵。理由は爵位を息子がいるにも譲っておらず、当主のままという事ね。」

「ちょっと質問。」

「何かしら?ルミリア。」


書類から顔を上げたルミリアが挙手し、話を中断。

美少年も書類から目を外し、ルミリアを見る。


「『当主である』事ってそんなに重要?子供を、あー…傀儡にしてるんだったら、上の爵位の貴族もいるし、思考が染まった若い世代もいるじゃない。」


子供を傀儡、の部分を言いづらそうにしながら、疑問を呈する。

そんなルミリアに私が回答する前に、ニストが答える。


「信用ですよ。自分の上にいるのは信用できる人物がいい。そう思った老齢貴族は染まりやすく柔軟な若者を、形だけでも派閥内で頂点にするのが嫌だった。だから公爵、侯爵がいる中で、伯爵が代表なんですよ。」

「ふーん。」


分かったけど解らない、といった顔と声音をするルミリア。

けど話が進まないと分かっているからか、「どうぞ」と促す。


「第二王子派は若手貴族。特に権力が低い貴族が多いわ。権力が低いということは凝り固まった価値観ではやっていけないという事、つまり賢い者を頂きにおかないと没落してしまうような危うい貴族が多い。」

「なるほど。爵位が高い者が少なく数が多いのはそういう事か。」


美少年は疑問が解けたとつぶやく。

私は素っ気なく「そう。」と言い、説明を続ける。


「最後は中立派。といってもここはあまりいないわ。高い権力を持つ貴族の内、実力主義だけれど第二王子につく気はない貴族がここ。けどここもちゃんと派閥だから、代表がいるわ。それが家。」


また頷く2人。

私はまだ話を続ける。


「で、私の婚約は日和見している高位貴族を第一王子派に引き込むのが狙いよ。だからこそ、立太子していない第一王子が大きい顔が出来ていたの。」

「婚約は断れなかったのか?」

「‥‥‥」


すらすらと話していたが、

美少年の質問に黙り込む。


「調べたが現王は中立派だ。中立派を第一王子派につけるような真似はしないだろう。王命じゃないのなら断れるはずだ。」

「‥‥‥」


目を逸らす。

ちょっと軽く黒歴史…


言えない!

言えないったら言えない!!

お母様に貰った花のバレッタをからかい混じりに取られて、『返してほしいなら婚約しろ』にうっかり頷いてしまったなんて!!


「あ…、うん、どんまい。」

「え!?なんで!?」

「念話念話」

「女の子に許可なしで念話を使うなんて!」

「なんでルミが怒るんだ!?」


ちょっと勝手に念話使わないでよ!?

ルミリアの言うとおりだわ!!


「女の子にそんなことするなんて最低です!」

「絶対もてません!」

「個人情報の侵害です!」

「陛下が嫌いなタイプ!」

「ぐはぁ!!!!」


たたみかけたのはメイドさんたち。

これ幸いにといった様子で言葉で殴る殴る。

ついに最後の言葉で倒れ…倒れた?なんで?


落ち込んだ様子の美少年。

畜生、落ち込んでいても様になるなこの美形!


「おーい、セルシエ?話を続けるよ?」

「分かった。」


しかしルミリアが一声かけた瞬間すくっと起き上がる。

そのままマイペースに「続けてフィナ」と声をかけてくる。


「あ~…もう次進むわね。で、どこまで話したっけ?」

「忘れるなんておっちょこちょいですね。」

「シャラップ!!」

「どこの言葉ですか?」


ニストに混ぜっ返された。

思わず前世の言葉で返してしまった。分からないわよね当然。

でもめんどくさいので放置。


「カトラウェンは公爵家。もっといったら第一王子派最大権力。」

「なら別にあのクソ王子がカトラウェンの屋敷にいてもおかしくないんじゃ。」


ルミリアがまた疑問を呈する。

さっきから資料は見ていないから仕方がないかもしれないけど。

私は机上の資料の内、『第一王子派際最高位貴族カトラウェン公爵家の人間』を顔の横に掲げ、


「そうね。けどカトラウェン家の現当主は、実力主義なのよ。」


資料を眺めるルミリアに語る。

そこには確かに『父親とそりが合わない』『実力主義』の文字がある。


「カトラウェン公爵は強かでね、爵位を相続するまでは元公爵に従順だったのよ。」




父親を騙し切ることに成功した現当主はカトラウェン家を第二王子派ないしは中立派に変えようとした。


だが20年以上にわたる演技が終わり、油断した公爵は最後の最後でしくじった。

カトラウェン家を他の派閥にいかせてはならないと焦った元公爵が貴族、平民、暗殺者などのありとあらゆる伝手を使い、長男を陥れた。


 だが、長い時間があった公爵が対策をしていないはずがない。父親に引き合わされたものではない、信頼できる家臣と協力して策略から逃れ続けた。


 しかし、幼い弟を人質に取られた家臣の一人が、公爵に毒を盛った。解毒薬を飲んだ自身が毒味をし、公爵に毒を食べさせた。そしてしびれ薬で声さえ出せなくなった公爵を、地下牢に閉じ込めた。


 他の家臣は公爵を助けようとしたが、よりにもよってその家臣は屋敷で一番強かった。そうして救出に手間取っている間に前公爵が第一王子派と共に屋敷を乗っ取ったのだ。


 家臣らは公爵家を追放され、裏切った家臣は未だ弟を人質に取られている。現当主は牢の中で、長男だからという理由で生かされている。




「何この資料!詳しすぎ!?」

「!?」


『カトラウェン家の人間』の資料!

半分以上は私も知らなかったのだけれど!?

家の密偵部隊も掴んだのは『乗っ取られた』『裏切り者がいる』『現当主は生きている』くらいの断片だけよ!

…流石精霊情報網


「で、現公爵がまだいるカトラウェン家にクソ王子を連れて行かないとフィナは思っていたわけか。」

「ええ。予想が外れたわ…」

「今この瞬間も生きてるよな?」

「契約精霊が契約解除はされてないって言ってるから。」


契約者が死ぬと精霊契約が解除される。常識だ。

何故なら気に入った血筋に沿う精霊が、何体かいた前例がある。

そしてその精霊は契約破棄を行っておらず、契約者の死を看取った後、新たな契約者を血筋から選ぶのである。

なお、契約者を殺して精霊を奪おうとした不届き者もいたが、契約者を殺した者と契約する精霊はいたことがない。

(後日アミレーナさんに聞いたら「そんなことしたら陛下に嫌われます!」とのことだった)


「じゃあ、状況把握は終わりだな。次、第一王子を捕まえることについてを話そう。」



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