悪役令嬢、バグる
「ま、まままままっままま…」
「バグった!?」
「失礼な!」
「あ、フィナ戻った。」
口からこぼれた言葉はひたすら『ま』だけで、ルミリアにバグったといわれてしまった。
人をバグったとか失礼な。
ニストと少年は理解していないようだけれど。
で、一回怒って落ち着いたことで正常に戻った脳で、改めて言葉を吟味する。
まおうとは、あの『魔王』だろうか。
ルミリアが前、二柱の神のもう一柱だと言った、魔族の王。
‥‥‥‥‥‥地っ味――
「…なんか既視感ありますね。その容姿。」
「‥‥‥教えてくれない?ニスト。」
「おや、素直なのは珍しいですね。」
「この‥‥!」
この慇懃無礼執事!
恨みがましい目で見ていたら、そのまま気にせず話し始める。
「自分が精霊王様と初めて御会いした時と同じです。」
「あっ…と、いうことは、変身魔法を使っているのね。」
「あったりー。」
タネに気づいた私たちに対し、少年は少し気だるげに返す。
そしてニヤリと笑い、
嫌な予感がした次の瞬間、視界が白く染まる。
光を直視してしまい、なかなか目を開けられない私たちに向かって、
「おやおやぁ?ルミに魔法は見せられてたんだろー?
光ることも忘れてたのですか~wお嬢様?」
滅茶苦茶煽る声が聞こえてくる。
やれ「馬~鹿!」だの「阿~呆!」だの
「それ以上フィナを馬鹿にすると本気で殴るよ。」
ルミリアの鶴の一声で黙ったが。
その後やっと目を開けれるぐらいになってきた。
(…アイツ絶対光わざと強くした)
目を開けた先にいたのは…
艶やかな漆黒の髪に、深紅の瞳をした、17ぐらいの絶世の美少年だった。
男性に『絶世の』というのはおかしいかもしれないが、そうとしか言いようがない。『傾国の』でもいいかもしれないが、それはもっと男性にふさわしくないだろう。
まあ、俗っぽく言えばすごいイケメン、完璧な美形。
眼の形はつり目より、だがアーモンド型ともギリギリ言えるだろうか。
髪は長く、腰まではあるだろう。後ろで一つに括られている。横髪は、右はそのまま流し、左は後ろ髪と一緒に括っている。
肌の色はルミリアより少し濃いぐらい。
横髪で隠れてよく見えないが、恐らく右耳にだけイヤリング(もしくはピアス)をしている。
服も『いかにも平民』という服から、貴公子のような美しい物に変わっている。
こんなに美しければ『少年』と呼称するのもおこがましくなってくる。
そんな『美少年』は、未だニヤニヤと笑い続けている。
タダの少年の時なら苛ついただけのその表情すら、美少年の今ならゾクゾクとするような色気を伴っている。
「美形は得ね…」
「それフィナが言っちゃうの?」
本音を思わず漏らすと、すかさずルミリアのツッコミが入る。
しかしルミリアよ、私も美形であると理解しているが、あなたたちは度合が違う…!
「2人並ぶとアレね。」
「何というか、アレですね。」
語彙力が崩壊し、もうアレとしか言いようがない。
絵画にもないような美しい絵面。
「アレってなんだ。」
不機嫌気に真意を問う美少年。
だが、私もニストも最早感嘆のため息しか出ない。
「そんなことより、会議は始めなくてよろしいのですか?」
そう口を挟んだのはアミレーナさん。
呆れたような目で面子を見渡し………ん?
美少年を見る時だけ視線の温度が低いような?
「そうだった。ちゃんと会議しなきゃ。」
「脱線しまくったな。」
「そうですね。さっさと始めましょう。」
「あなたはいい加減座りなさい。」
そしてようやく、会議が始まる。
ようやく会議までこぎつけた・・・!けど、全然進まない…!




