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悪役令嬢、正体を知る


「セルシエーーー!」

「おっすルミリア。」


時間:帰宅から3時間後

場所:城in精霊界

相手:街であった平凡少年

人 :私・ルミリア・ニスト・少年



さてこの状況、一体どうしたものなのでしょう。


「さて、作戦会議を始めましょう。」

「元々は作戦会議のための集会じゃないんだけどな。」

「え?そうだったの。」


『作戦会議に来て』って言われたけれど、そのための会議じゃなかったのね。

で、急遽変更したと。


「題して、『第一王子捕獲会議(あのクソ王子を捕まえるかいぎ)』!」

「そうなのね。」

「精霊総動員の結果、なんか貴族の屋敷にいるっぽい。」

「俺は状況把握しかしてないから、追跡できてない。そっち頼んだぜ。」

「もちろん!任せちゃって。戦力としては期待させてもらうけどね。」


精霊王と少年の阿吽の呼吸。

でも本人たちは至って普通そうにしてる。

時折入ってくる精霊メイドたちも、普通そうにしている。


「そもそも、こちらの方はどなたなの?」

「おおっと、名前を聞くときは先に名乗るのがマナーだぜ。」


口調だけは小馬鹿にしたように言う少年。

けど、私はこれでも公爵令嬢として生きてきた。

前世の記憶があっても、その時培った観察眼は変わらない。

茶色い目の奥にかすかに見える鋭い光…


―――こいつ、私を見極めようとしている。


だけど、一体どうして?

ルミリアや精霊に危害を加えるとでも思っているのかしら?見たところ彼らと少年はかなり親しげだ。友人を守ろうとしている?

だったら結構真っ当な理由かもしれない。

だが‥‥‥心外である。


「私を警戒しているようだけれど、皆に私が危害を加えることは無いわよ。」

「そこまで分かってんなら、言われただけじゃ納得できないのも分かるだろ。」

「え?……ちょっとセルシエ、フィナを虐めないでよね。」

「どうしてそうなった!?」


少年は未だ私を警戒している。

一応後ろにニストもいるのだけれど、見るからに『私の従者』感があるからか、主の真意を見極めればいいと思われたようで放置されている。

(ニストは席を座らないと固辞して立っている。)


「セルシエ、話が進まないでしょう。」

「お前…多少はあっちも注意しろよ。」

「フィナは悪くないし。」

「そんな簡単に気を許しているから不安になるんだよ…」


ルミリアがまた少年を諫める。

それだけ聞くとルミリアが私が絶対的に正しいと言ってるように聞こえる。

だが、何か違和感がある。

前提条件、立っている立場など、根本的なところが違う気がする。


「それより皆様、自己紹介はしなくてもよろしいので?」

「「「‥‥あ」」」


そういえば…

最初に睨み合いが始まったせいで、自己紹介を忘れていた。

ルミリアが空気を換えるためか、わざとらしい咳払いをして、それぞれ自己紹介を促そうとした。

しかしながら、私と少年の間の空気的に、どちらも先にやろうとしないことを察して、ルミリアが紹介を始めた。


「改めて…セルシエ、彼女はフィナ。正確にはフィナイース・ロマ・オーランドル。」

「どうも。」

「‥‥‥」


少年――セルシエは、何も言わない。


「彼女は公爵令嬢で…。」

「は? 何で公爵令嬢なんて引っ張って来てんの?」

「話の途中!」

「はい。」


『公爵令嬢』のワードに驚いた少年は声をあげたが、ルミリアに窘められた。


「10年前からの私の契約者!」

「そうか契約者か。‥‥‥?」

「…? どした?」


納得したような顔を一瞬見せた直後、疑問を浮かべる少年。

ルミリアが話しかけたのも聞こえていない様子。

かくいう私も謎だ。何故急に黙り込んだ?


「おま…契約…?‥‥‥い、いっいぃぃ何時から…?」

「へ? だから10年前」


かすれた声で、ルミリアに問う少年。

凄い慌てよう。絶対私たち視界に入ってないわね。


「ま…え?」

「おーーーいセルシエーーー、どうしたのーー?」

「ちょっ!タンマタンマタンマ!!」


ルミリアが少年の顔を覗き込み、眼前で手を振る。

少年の顔がルミリアの頭で隠れたから表情は見えないが、さっきにもまして慌てていると声音で分かる。


少年はグイ―――とルミリアの顔を遠ざけ、やっとこっちを視界に入れる。

変わらず焦った様子のまま、もはや警戒だけを瞳に浮かべて、こっちに話しかける。


「おい!聞いてねえぞ!契約紋は!?」


そういって瞬時に目の前に…え、早すぎない?テーブル跨いだでしょう。マナー違反じゃない?

そう思っている間に速攻で私の左手をとり、手袋を取り外す。

「ないじゃねえか!?」と叫び、今度は私の眼をジッと見つめる。

そして、何かに気づいて、目を見開いた。

…といっても私の知ったことではなく‥‥‥


「この鍵が、契約紋の代わりなの。」


と、服の下に収めていた鍵を手繰り寄せる。

試しに見せびらかすように軽く振ると、


「おいルミ!いつの間に契約なんてしたんだ!」

「なんでセルシエに言う必要があったのさ。」


ほぼほぼ怒鳴り声でルミリアに確認し、ルミリアに呆れながら返される。


「自己紹介は?」


そこに割り込んだのはニスト。

空気読めない様子と思われるかもしれないが、むしろ読んでいるといえるだろう。

脱線した話題を戻すには、ここの空白時間に割り込む必要が、どちらにしろあっただろう。


またコホンと咳ばらいをするルミリア。

そして自己紹介を続ける。


「フィナ、彼はセルシエ。人間じゃないよ。」

「それは紹介としてどうなの?」


このタイミングでボケれるルミリアはある意味凄いと思う。


「じゃあ、彼はセルシエ。魔王だよ。」

「そうちゃんと身分を紹介………まおう?」

「魔王。」


‥‥‥????????

ルミリアの顔を凝視。笑っている。

少年の顔を凝視。笑っている。

ニストを振り返る。後ろに理解不能と書いてある。


ん?…んんんんんんんんんん!?



遅れてすみませんでした

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