悪役令嬢、安堵する
「はああぁぁぁぁ。」
「深いため息ですね。」
現在帰宅中、馬車の中。
気が緩んだことで、安堵のため息をついてしまいます。
…しょうがないよね!! 城で疲れちゃったからね!!
ハプニング二連続きっっつい!
「お疲れ様~フィナ。」
「ええルミリア。いつの間に此処にいたの?」
「お嬢様、ついさっきですよ。馬車の中で隠れられる訳ないでしょう。」
「それくらい分かっているわ。つい聞きたくなるのよ。」
空中から急に現れたルミリア。
反射的に悪態をついてしまったわ。
あら?さっきの私の発言は悪態カウントなのかしら?
「お嬢様一応貴族に復帰するのですから、目上の方に対する礼儀はちゃんとなさってくださいね。」
「私目上じゃないよ?」
「精霊王様は頂点です。今はある意味対等になっておりますが、」
「ねえ、ある意味ってどういうこと?」
「神と人の差は大きいのですよ。」
「お~い、聞こえてる~?」
「分かったわ。ギリギリカウントされないのはアウトなのね。」
「はい。」
「ギリギリセーフがアウトってもうセーフじゃなくない?」
「確かに。」
‥‥やばい。
この空間マジで楽。
王城はキリキリとした空気が辛いのよ。
「ここは楽ね…。」
「何しみじみと言ってるんですか。」
「精霊界は楽じゃなかった?」
「なんていうか…この、身内だけ空間に気が緩むというか…」
「「……」」
本音が言えるのっていい事ね。
って、ルミリア、ニストとなにこそこそ話しているのよ。
2人に共通の話題なんてなかったはずだけれど。
「2人共?何の話?」
「フィナの話。」
「ちょっと!?」
まさかの私!?
あ、でもそうか!主人と契約者って私を中心につながってるから、私が共通の話題になっちゃうのか。
でもそれなら、何故さっきからニストは黙りこくって俯いているのかしら?
「フィナ。」
「何?」
「ニストの事を信頼してる?」
「? ええ、もちろん。」
ニストと対照的にルミリアは頬が緩んでいる。
それはそれで色気が半端じゃないルミリアを前にすまし顔で座っていられる私の隠れた努力を誰か褒めてほしい。
けどルミリア本人は気づいてないし、ニストは一切変わった様子がない。
ていうか、よく考えたら2人とも美形よね。
自分も美人って自覚しているけれど、昔の感覚か、馬車内の空間がキラキラ輝いて見える。
思わず遠い目をしたくなる…
ニストが礼儀ちゃんとしろって目をしていたから堪えたけど。
「じゃ、いいよ。」
「一体何を?」
「あれ?ニストを精霊界に連れていくって話をしていたんでしょう?」
「ニストから聞いたのね。でもいいの?」
「フィナが信頼している人なら大丈夫。」
「どこから来るのよその信用。」
まったく、人間はあなたの子ども(精霊)たちと違って、ずるがしこいのよ。
契約者の信頼だけで精霊界に連れて行くなんて警戒心が足りないでしょう。
私が家族を人質にでも取られて、『こいつを精霊界に連れていけ』とでも命じられたら、私は従うわよ。
つまり私でも裏切りの心配があるのよ。
そんな心情が表情にありありと表れていたようで、ルミリアは呆れたように言った。
「素行調査するに決まっているでしょう。ニストだって、あなたのすぐ近くにいたから、素行調査の対象だったの。ちゃんと調べてる。」
「ならなぜあの阿呆王子の素行調査しなかったんですか。」
「ねえニスト、目上の人に対する礼儀は?」
「アイツ?気遣い過ぎた愛しい子たちがちょっとしたミスを…」
「なに?なにがあったんですか!」
「内容がやばすぎて私に伝えるのすら嫌になったっぽい。」
「納得です…。」
「…今思えば私よく耐えれていたわね。」
こう思えばもう、さっきまでのお城の空気も軽いものに思える。
あの馬鹿と婚約している最中なんてもう…言葉に表したくもないわ。虐めとか虐めとか虐めとか暴虐不遜な態度とか態度とか態度とか。
率先して王族が行うせいで他の貴族子女からも虐めが始まったし。
………
「次会ったら殴る…」
「黒手袋を用意いたします。」
「身体強化かけてあげる。」
主語がなくても伝わる。
「俺も殴ります。」
「私も殴りたい。」
同じことを言う2人。
顔を見合わせ、息の合った動きでサムズアップする。
‥‥‥?
何か今もやっとしたぞ?
一体何が…。
「どうした、フィナ。」
「え…?何?どうしたの?」
「急に考え込み始めたから。」
「いやなんか、分かんないけどもやっとして。」
「もやっと…?」
少し相談したら軽く考える動作をするルミリア。
訳が分かっていない様子、つまり私と同じカンジなのがニスト。
するとルミリア、ふっと顔を上げ、視線を私とニストに往復させる。
「あ、あああぁぁ。」
納得した、という様子で軽く声をもらすルミリア。
やっぱり何があったか分からないわ。
「何か分かったの?ルミリア。」
「いやいや、何でもないよ。ただ…。」
「ただ、どうされたのですか?」
「ふふふふふ。」
笑ってごまかすルミリア。
しかしルミリア、流石にごまかせないし背後に『面白そう』って書かれているわよ。何があったの、教えてくれないかしら・
「あ、そろそろ着くんじゃない?」
「あら、いつの間にこんなに経っていたのかしら。」
「話し込んでいたらあっという間でしたね。」
窓の外は、見慣れたお屋敷近くの景色。
公爵家だからかお屋敷は城と近いけれど、それでも馬車で30分はかかる。はずなのだけれども、体感5分くらいで着いた。
久々の景色なのだから、もったいない気がしてきたわ。
「フィナ、今日は一旦精霊界に帰るよ。ニストも準備してね。」
「もうですか?お嬢様も、もう少しいたっていいでしょう。」
「作戦会議の予定が入ってるんだよ。お願い、今日だけだから。」
手を合わせて、ねっ!と小首を傾げるルミリア。
あざとい。そして可愛い。
「取り合えず着いたから、降りましょうか。」
恋愛要素を増やしたい…!
けどやり方がわからない‥‥‥!




