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第92話 無詠唱魔法と術式魔法

 リオンさんパーティーと別れた僕達は、前回ルーナと探索した続きから探索を始めることにした。


 今日はダンジョン内のあちらこちらで、もう冒険者達がモンスターとの戦闘を始めていて、最初の部屋のモンスターは根こそぎ狩られている。


 最初にモンスターと戦闘をしたのは3部屋進んだ先の部屋だった。


 隊列は前衛にカレン、中衛遊撃に僕、後衛はメインだ。ルーナ、エリー、クレアさんは、モンスターが弱い内は戦闘には加わらず、僕達に指導をしてくれる。もちろん、危険だと察したら助けてくれる。


 その最初の戦闘で僕はミスをしてしまった。戦闘開始と同時にメインが雷魔法でモンスターの動きを止める。そして、カレンが前に出て、僕がカレンの背後を守るという作戦だったのだけど、メインの雷魔法が無詠唱だった事に驚いて、前に出るのが数秒、遅れてしまったのだ。


 今回はルーナ達が一緒だったお陰で、カレンに怪我は無かったのだけど、もし僕達3人だけだったらこの数秒が命取りになる。


 ここのモンスターは強い。青銅(ブロンズ)ランク冒険者だけでも第1階層を探索する事は可能だけど、攻撃を受けてしまったら大怪我では済まないくらいに敵の攻撃力は高い。


 今回の相手はスノーマンが3体。こいつは氷のブレスを使ってくるので死角からブレスでも吐かれたていたら大変な事になっていた。


「いつまでも引きずってんじゃないわよ。ほら、元気出して」


「そうよ。そもそも、いきなり無詠唱でアステルを驚かそうって、私達が吃驚させたんだし」


「いや、それでも戦闘中に、それくらいの事で集中力を切らしたのは僕が━━」


「おーい、あんた達。反省会するのは良いけど、ここはダンジョンだよ? モンスターは次から次へと溢れてくるんだからちゃんと警戒しなきゃダメだよ?」


「はい、気を引き締めます」


 歩きながら3人で反省会をしていたらクレアさんに呆れられながら注意を受けた。


 僕達は気を引き締め直してまた探索を再開させ、辺りが暗くなり始めるまで探索を進め、今日の探索を終えた。



「アステル君の料理は久しぶりだねぇ」


「私達もゴブリン討伐の時以来だから久しぶり」


「アステルと組むと、ダンジョンでも美味しい料理が食べられるから絶対に特だよね」


「本当にルーナちゃんとエリーちゃんが羨ましいよ」


「…ん、アステルのご飯は絶…品」


「唯一の取り柄じゃからな」


 ……エリー、ちょっと酷い。泣くぞ? みんなも料理以外に誉めてくれても良いんだよ?


 モンスター避けの結界魔道具を設置して、野営の準備をしながら、みんな今日の晩御飯の話で盛り上がっている。


 今日の料理は、今日狩ったブリザーベアの竜田揚げ、氷樹の葉と雪花のお浸し、町で買っておいた茸と昨日の残りの蟹の炊き込みご飯、デザートはフローズンキューブの核の心太。


 フローズンキューブの核は、ジェリーのと違って無味だからスリンゴとハニーシュガーの心太にピッタリ合う。ジェリーの核は魚介出汁みたいな味がするから心太よりは刺身やラーメン風にした方が美味しい。


 みんな、我先にと奪い合うかの如く、ガッツいている。


 お、女の子なんだからもう少しお淑やかに……ってのは無理か、冒険者だし。


「アステル君さあ、私にだけ敬語だよね?」


「はい、それは冒険者の大先輩ですし」


「ルーナちゃんだって大先輩だよ? なーんか疎外感を感じるなぁ。タメ口で話してよ」


「それはぁ……」


「あー、アステル君は私の事嫌いなんだー」


「酷ーい、クレアさんも仲間なのにー」


「そうよ。なんでクレアだと敬語で話すの?」


「…ん、アステル。敬語禁…止」


「そうじゃな。1人だけ仲間外れにするのはどうかと思うのじゃ」


 うっ、なんでみんなに責められてるんだろう?


「分かったよ。分かりました。敬語は止めるから、そんなに責めないでよ」


 そう言うと、みんな楽しそうにハイタッチしながら「イエーイ」と騒いでいる。



 その後は、メインの無詠唱雷魔法の話になる。僕よりだいぶ後から無詠唱魔法の訓練を始めたメインが、もう雷魔法を無詠唱で使えているのはどういうことだろう? と、思っていたら、クレアさんも、雷魔法と水魔法の氷変化までを、もう無詠唱で使えるようになっているのだという。


 それと、ここに居ないクリュスさんは火魔法と風魔法、リイナさんは土魔法と回復魔法を無詠唱で使えるらしい。


 氷への変化はまだ出来ないそうだけど、水魔法は、リオンさんパーティー全員と、メインが使えるようになっていると、いう事だ。


「僕は水魔法と土魔法の2つを覚えるのに1年もかかったのに、みんなどうやってそんなに早く覚えたの?」


 氷魔法を入れれば3つだけど、氷魔法は水からの変化になるので、僕が覚えてる魔法は水と土。水魔法は魔力操作の基本として全員に水操作から教えたからまだ解るとして、他の魔法を自力で覚えるのはかなり難しいはずだ。


「実はねぇ。みんな前から使ってた魔法は発動の感覚を覚えてるから結構簡単に無詠唱で発動出来るようになったのよ」


 メインの話を聞いて「はっ」とした。そんな方法があったのか……


「ほう、それは興味深いのう」


 この話にエリーも驚いているようだ。メイン達の話によれば、最下級の魔法でも、しばらく使っていれば、魔力を、その属性に変化させられるコツが掴めて来るのだという。


 リオンさんパーティーの人達はもちろん、メインも、もう魔法を使い始めて1年以上になるから覚えるのはそう難しくなかったそうだ。


 ただ、使える魔法にも相性があって、どの魔法でも簡単に無詠唱で発動は出来ない。無詠唱を覚えてしまえば、術式魔法は使わなくなるし、無駄に魔力を消費してしまうので、魔法屋で消去すれば良いと、言う事だ。


 魔法が属性適性に寄って覚えやすい覚えにくいがあるのはエリーに聞いて知っていたけど、属性変化の感覚を魔法屋の術式魔法で掴めるようになるのは盲点だった。


 今回のダンジョン探索が終わったら早速買いにいこう。


 ただし、収納魔法の上級(S、Aランク)は内部の時間の流れを遅くする術式が組み込まれている為、発動は誰も出来なかったそうだ。


 これについては、異なる2つの魔法を同時に、しかも継続的に発動させるのには長い修練が必要だと、エリーが言っていたのでかなり難しいのだろう。


 エリーの感覚で長いと言うんだからかなり長いんだろうな。




 食事も終わり、今日はもう、休む事にした。


 今日の夜番は、最初が僕とルーナ、次にエリーとメイン、最後がクレアさんとカレンで交代でやることになった。


 モンスターのほとんどは、結界魔道具で寄ってこないのだけれど、ダンジョン内にはモンスターだけが居るわけじゃない。


 極希にだけど、探索中の冒険者に襲われる事がある。


 普通に考えればあり得ない話だけれど、冒険者狙いでダンジョンに入る輩も居るのだ。


 ダンジョン内は、常にモンスターと隣り合わせな為、何があっても自己責任になる。いわば無法地帯なのだ。


 まあ、このパーティーを襲う人が居たら逆に可哀想に思えるけどね……まず無事に帰れないだろう。


 そんな命知らずが居ませんように。


 ━━と、そんな心配は無用だった。朝まで平和そのもの。朝は軽めの食事をとって昨日と同じ隊列で探索を開始した。




「あー、外れかぁ」


 今日の探索を開始してから、3時間。今回進んだ道は行き止まりだった。2時間ほど戻った所に別の道があったので、戻ってそっちに行ってみる事にした。


 しかし、その道に待っていたのは、全員が嫌悪感を覚える出来事だった。

 更新が遅くてすいません。ゆっくりでも完結出来るまで書き続けるので、気長にお付き合い下さい。

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