第91 ラッキーボーイ?
朝、目を覚ますと、いつものようにルーナは僕のベッドに潜り込んでいる。
今日は何故かエリーまで……ベッドが3つある意味がないよね?
左右から抱きつかれてるから2人が起きるまで起きられない。うーむ、どうしよう?
「ルーナ、エリー、朝だよ。起きて」
このままでは2度寝してしまいそうなので2人を起こす事にした。
「……ん、アステル、おはよ…う」
眠そうに目を擦りながらルーナが体を起こす。
「ふぁ……なんじゃ、もう朝か……」
エリーも欠伸混じりに返事をしながら体を起こす。
「って、エリー、服!」
エリーが体を起こすと、掛け布団がずり落ち、エリーの体が露になる。僕はサッと目を反らし、心臓がバクバク音をたてた。
「なんで服を着てないの?」
「ああ、眠る時には邪魔じゃからな……この方がよく眠れるのじゃ」
一応、僕も男なんだから、もう少し気を付けて欲しいな……
と、朝から驚かされながら、今日も1日が始まる。
着替えを済ませ、部屋から出ると丁度同じタイミングで隣の部屋からフェリシアとアリシアが顔を出した。
「おはよう、フェリシア、アリシア」
「おはようアステル。ルーナとエリーは?」
「もう、出てくるよ」
皆で食事を済ませ、リオンさんパーティーとサトスパーティーと合流し、転送施設に向かうと、稼働開始1時間前にもかかわらず既に100人以上が列を作っていた。
「1時間も早く来たのに凄いね」
「まあ、そうだろうな。今が稼ぎ時だからな」
リオンさんの言う通り、今が稼ぎ時。新ダンジョンでは、今までこの国では採れなかった様々な植物、鉱石、モンスター等の素材が採れるようになる。その上、宝物庫を発見する可能性や、低層階の階層ボスを倒せるチャンスが回ってくる。
階層ボスを倒すと財宝が現れる。宝物庫ではそれと同じくらいの財宝をモンスターが守っている。どちらも深層に行くほど当然モンスターが強く強くないと手に入れる事が出来ない。
他の2つのダンジョンは、もう、低層の階層ボスは倒されてしまっているので、高ランク冒険者パーティーじゃないと、階層ボスなんて見ることも不可能だ。宝物庫も低層階は探索されつくしてるから発見も難しいから、低ランク冒険者にはほとんどチャンスがない。
その点、新ダンジョンはまだ僕とルーナが発見した時に2日ほど探索しただけだから階層ボスも宝物庫もまだ未発見だ。
銀ランク以下の冒険者でも倒せる可能性が高い階層ボスや宝物庫の守護モンスター。もう、みんなギラギラと目を輝かせながら今か今かとゲートのオープンを待ち望んでいる。
よく見ると、冒険者ではない人達も結構並んでいた。ダンジョンに入れるのは冒険者だけではない。貴族や商会等の私設団や、正騎士団なんかもたまに探索に入る事がある。
登録している冒険者と違って、色々面倒な手続きがあるらしいけど、今回はそれをしてでも採取に出たいんだろうな。
列に並んでいる間に、皆で話し合った。今回、せっかく会ったのだから合同で探索に行きたいのだけど、ダンジョン探索には人数が多過ぎて動きにくい。
と、いうことで、パーティーメンバーを入れ換えて2パーティーに分かれて探索する事にした。
僕と一緒に探索するのは、ルーナ、エリー、メイン、カレン、クレアさん。
フェリシアとアリシアは、リイナさんに弓での立ち回りや、サポートの上手いやり方を教えてもらいたいということで、リオンさん達の方に入った。
ルーナもエリーも僕も弓を使ったことがないし、前に出て戦う事が主なので、後衛のリイナさんに色々教わるのは、かなり勉強になるだろう。
余談だけど、フェリシアとパーティーが組めた事を、サトスがやたらと嬉しそうにしているのをカレンとメインが見て「遊びに行くんじゃないのよ」「気合い入れろ」と、気合いを注入されていた。
……普通は平手でやるんでは? グーはダメだよ、グーは……
そんなこんなで、やっとゲート稼働の時間がやって来た。
もう、僕達の後ろには最後尾が見えないくらい長蛇の列が出来ている。
稼働開始と同時に歓声が湧き、列が動き始め、20分ほどで、僕達の順番が回ってくる。
流石に1度に20人、転送出来るから回転が早いな。
入口でお金を払って、いよいよ転送開始。
「これが噂のゲートかぁ」
「ドキドキするな」
「ちょっと怖いよね」
うちのパーティーメンバーは慣れているのでこれと言って何も感じないのだけど、リオンさん達7人はワクワクとドキドキで緊張した面持ちになっている。
「じゃあ、早速起動するぞ」
「誰が唱える?」
「ここは、リオンが適任っしょ」
「俺か? よし解った。〝我が魔力を糧に、彼の地への道を開け、ゲート〟」
リオンさんが起動句を唱えると室内が真っ白な光に包まれ、転送が完了する。
「……もう、転送されたのか?」
「さっきと同じ場所に見える」
「何をやっておる。さっさと部屋を出ねば次が来るのじゃ」
エリーに促され、僕達の後からリオンさん達が転送室から出て、ギルドホールに移動すると、転送されたことを実感したのか、また皆騒ぎ出した。
今の内にしか見れない光景だなぁ……僕も初めての転送の時は興奮したけど、慣れると、ね。
と、考えながら、ふと、アイスヘルに出る扉の方を見てみると、何やら貼り紙が……
【危険、出るべからず】【解放厳禁】……なんだこれ?
あとで、ギルド職員さんに聞いてみたら、ここの設備を作っている時に職人さんが何人も転送された実感を得ようと、外に出てフロストバーンに拐われそうになった人が居たそうな。
幸い、正騎士団の人が気付いて、事なきを得たのだけれど、危険だから解放厳禁にしたらしい。
なるほど、そういえば修行に来たとき幻魚を持って行かれそうになったことあったな……
「さあ、どっちが大物発見出来るか勝負だな」
ダンジョンに入る直前、リオンさんがそう言い出した。
「兄さん、負けないわよ」
「絶対、うちらが勝つっしょ」
「へへーん、こっちにはラッキーボーイ、アステル君が居るから断然有利だよ」
「いつから僕はラッキーボーイになったんですか?」
「あれ? アス君気付いて無かったの?」
「はい?」
「アステルはな━━」
リオンさんが言うには、僕は奈落の谷に落ちても生存し、そこでルーナに出会ってパーティー組んでる。リオンさん達と一緒にアタランテダンジョンで探索した時には宝物庫も発見、そしてこのダンジョンの発見者。しかも神剣に選ばれて神の加護も受けてる。
ここまで、幸運に恵まれてる人間は珍しいと、いうことだ。
言われてみれば凄いな……でも何度も死にそうな目にも遭ってるし綱渡りみたいな幸運だよね。
ダンジョンに入った僕達は左右に分かれて別々な道に向かい探索を開始した。




