第82話 ルーナの物語 ルーナ、迷子になる
道に迷ってしまったルーナだが、これといって焦ってはいなかった。
この程度の事は徒歩で海を目指していた頃に慣れているからだ。
『食べ物も沢山あるし、仕事の物採ってから帰り道探そ』
と、そんな事を考えながら依頼の品を採取して回る。
今、問題があるとするなら、モンスターの数が多すぎる点だ。
この辺りのモンスターならルーナは何匹いようと苦にならないのだが、無視も出来ない。
火を起こして食事を作ろうにも、10分と開けず何処からともなく湧いて出てきて襲い掛かってくる為、のんびり食事も出来ないのだ。
モンスター避けの結界魔道具があれば寄ってこないので安全なのだが、残念ながら最初に持っていた魔道具が壊れてからルーナは修理も購入もしていなかったので持っていない。
もしくはある程度勘の鋭いモンスターであれば、ルーナの強さを感じ取って襲い掛かっては来ないのだろうが、この辺りのモンスターはそういうタイプではないようだ。
帰ってからご飯食べるつもりだった為何も持ってきてないルーナ。
空腹感が押し寄せてくるが食べられる物は今日取ったモンスターだけだ。
ルーナは仕方なく収納魔法からホーンラビットの生肉を取り出しそのままかぶり付く。
『生肉は久しぶりだな……醤油とワサビが欲しい……』
塩は持っているが醤油とワサビまでは持ち歩いていないルーナ。
生肉は旅をしている時、雨季によく食べていたので食べるのに抵抗はないが、暫く宿での食事が続いていた為、満足は出来ない。
生肉片手に野草を探すルーナ。オーク肉も持っているのだが、これは納品の品な為、今は食べる事が出来ない。
結局丸1日ダンジョンを彷徨う事になったルーナ。ダンジョン内にも夜がある事に驚きながら、夜は木の上で仮眠を取り過ごした。
『仕事の物は集まったけど、どうやって帰ろう……』
地図は持っているが、初めて入ったダンジョンの景色はまだ殆ど覚えていない。決して記憶力は悪くないルーナだが、今回は狩りに夢中になりすぎてどんどん奥へ進んでしまった為、道順を覚えられなかったのだ。
現在地が何処なのか解れば帰る事も可能なのだが、それも解らない。
現在ルーナが居るのは第2階層。ルーナも1階下りたのは覚えている。
先ず探すのは第1階層に上がる階段。そこまで行ければあとは地図を見ながら帰る事が出来る。ルーナとりあえず地図に書かれている目印的な植物(大木等)を探す。
━━暫く彷徨っていると、少し離れた場所から人の声が聞こえてきた。
「おい、ダンジョンにガキがいるぞ」
「はあ? なにバカな事言ってんだ。ダンジョンにガキが居るわけないだろ」
「じゃあ、あれは幻か?」
「……マジで居やがる」
声のする方を見てみると4人組の男達がルーナを指差し騒いでいた。
4人組は狐目、顎髭、スキンヘッド、の優男と太めの大男とそれぞれ特徴的な男達だ。
ルーナがその4人組の所へ近付いて行くと、男達は不思議そうにルーナをマジマジと見ている。
「幻じゃないよな?」
「ああ、目の前に居るぞ」
「嬢ちゃん、何でこんな所に居るんだ? どうやってダンジョンに入った?」
「…ん、仕事で来…た」
「仕事?」
更に不思議そうにしている男達にルーナは収納魔法から依頼書を取り出して見せる。
「依頼書……って事は、お前冒険者なのか?」
「…ん、昨日か…ら冒険…者」
「どう見てもガキにしか見えねぇ……」
「けどよ、依頼書持ってるって事は受付通してるって事だよな?」
「まあ、小せぇ奴もたまには居るだろ。邪魔したな」
納得のいった4人組はその場を立ち去ろうと歩き出す。
ルーナは狐目の男の服を掴んで引き止めた。
「帰り道解らな…い」
「はい?」
「今何処…か解らな…い。教え…て」
ルーナは地図を見せ、男に現在地が何処なのか尋ねた。
「なんだ、迷子になってたのか」
「はははっ、新人あるあるだな」
「嬢ちゃん、人に何かをしてもらうときは対価を払うもんだぜ?」
あるある話に笑いながら狐目の男が対価を要求してくる。
「対価?」
「そうだ、対価だ。つまりは金か物だな。金は持ってるか?」
「…ん、少しだ…け」
「よし、ならギルドまで連れてってやるから2000ゼル払いな」
「…ん」
「ちょっ、おま、2000ってボリ過ぎだぜ?」
「あこぎだなお前ぇは」
「「「「だははははっ」」」」
常識的には多すぎる対価を請求する狐目の男に仲間の3人はボッタクリ過ぎだと笑う。ルーナは何故笑われているのか理解出来なかったが、男に言われた通りお金を取り出し渡す。
「おおっ、マジで払いやがった」
「はははっ、素直だな。新人はそうでなくちゃいけねぇ。よし、ついて来い」
狐目の男達はお金を受け取って上機嫌で歩き始め、ルーナは黙って後を付いていく。
「新人、あれはお前が片付けろ」
「…ん」
移動しながら狐目の男が、前に見えるモンスターを指差しながらルーナに指図する。
ルーナは素直に従いこちらに向かって来ていたモンスターの群れを倒していく。
「おおっ、すげぇな。素手で倒してるぞ」
「格闘タイプか、珍しいな」
「いや、斧背負ってるから斧術使いだろ?」
「なんで使わねんだ? 変な奴だな」
ルーナの戦いっぷりに驚きながらも、ルーナの強さには気を止めず、ルーナは変な奴認定された。
帰り道で襲ってくるモンスターはルーナが1人で倒し、解体を始めようとすると━━
「解体はやらなくて良いんだよ。魔石取って血抜きだけやってあとはギルドに渡せ」
「そうだぜ? こんな所で解体なんかやってたら他のモンスターにまた襲われるだろ?」
━━と、教えてもらい。対価としてオーク肉や魔石を数匹分渡す。
そんな事を繰り返し、多くの対価は払ったものの、ルーナは色々な冒険者としての知識を学んだ。
━━ルーナ達がギルドに戻ると、前日にルーナの受付をしてくれた受付嬢さんが、ルーナを見付けて駆け寄って来た。
「ルーナさん、無事だったんですね。昨日帰って来なかったから心配したんですよ?」
「…ん、道に迷って…た」
ルーナは受付嬢に事情を説明する。
「新人、また解らねぇ事があったら遠慮なく言えよ」
「…ん、ありが…とう」
楽して儲けた男達は上機嫌でルーナに声を掛け、その場を後にした。
ルーナは親切な人だなと、男達に感謝し。クエスト達成報告を済ませ宿へと帰る。
「あ……名前聞いてな…い」




