第81話 ルーナの物語 ルーナ冒険者になる
明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
ルーナが村を出て国中を旅して7年と少し、旅を終えたルーナは再びグランセルに戻って来た。
戻って来た目的は冒険者になるためだ。
この旅の間、ルーナが利用した安宿は多くの低ランク冒険者も利用していたため、冒険者という職業に興味をもったのだ。
出会った冒険者はガイやダルのような善い人、ルスカのような悪い人様々だったが、多くの冒険者は上を目指して生き生きと仕事をしていたのが印象に残ったのだろう。
『ガイとダルと一緒に仕事出来たら良いな』
ルーナはこの町で世話になったガイとダルに会うため、以前泊まっていた安宿に足を運ぶ。
「こんにち…は」
「おや? ルーナ、久しぶりじゃないか、大きく……なってないねぇ」
ルーナを見た女将が以前とあまり変わっていないルーナの容姿を見てキョトンとしておかしな言葉を言う。
「少しだけ身長が伸びたみたいだけど、変わらないねぇあんたは」
「…ん、女将さん久しぶ…り」
「また暫くこの町に居るのかい?」
「…ん、そのつも…り。ガイ…とダル…は元…気?」
そう尋ねるルーナに女将さんの表情が少し暗くなる。
「ガイもダルも、もうグランセルに居ないんだよ。2人とも冒険者を引退して田舎に帰っちまってねぇ」
「……そう」
女将さんの話によると、ガイとダルは前年の中頃に依頼中に大怪我を負って冒険者が続けられなくなったそうだ。
治療を続ければ治りはするものの、部位欠損クラスの怪我は低ランク冒険者には治療代も高く、復帰までにそれなりの時間が掛かるため、引退を決意したということだ。
「冒険者なんて仕事やってたら珍しい事でも無いからねぇ。死んだわけじゃないから縁があればまた会えるさね」
「…ん」
ルーナは少しガッカリしたが、どうすることも出来ないので諦める事にした。
「またうちに泊まるのかい?」
「…ん、宜し…く」
ルーナは以前と同じく10日分の宿代をまとめて払った。
━━翌朝ルーナは冒険者ギルドに来ていた。
「あなた本当に16才?」
「…ん」
小柄なルーナがどうしても16才に見えない受付嬢が怪しみながら確認してきた。
ルーナは収納魔法から身分証を取り出し、受付嬢に渡す。
「あら、本当に16才なのね。ごめんなさいね、疑ったりして」
「…ん、大丈…夫。よくある…事だか…ら」
詫びを入れた受付嬢がルーナの台詞を聞いて少し苦笑いしている。
ルーナは登録を済ませ、冒険者についての説明を受けた後、測定室に案内され、ステータス測定を受けると━━
「なんじゃこりゃあーーー!!」
━━測定員のおじさんが表示されたステータスを見て驚きのあまり叫び声をあげた。
「ちょっと、なに大声上げてるんですか? みんな驚いてますよ」
閉じているドアの外まで響き渡る声を聞いて、ギルド職員のお姉さんが注意しにくる。
ルーナを案内してくれた受付嬢さんもやって来て測定員のおじさんと話し、表示されたステータスを見て━━
「「なんじゃこりゃあーーー!!」」
━━同じように叫び声をあげた。
「測定器壊れてるんじゃないか?」
「いやいや、まだ新調したばかりだよ?」
「あり得ないよね? この数値は……」
騒ぎはあっという間にギルドに居た職員に広まり、ルーナは別室に案内された。
この時、職員以外に情報を漏らさなかったのはギルドの教育の賜物だろう。が、職員の態度から何かあったであろう事を、その場に居た冒険者達は覚っていた。
「異常だな……新人冒険者で……いや、冒険者全体を見渡しても、これほどの者は見たことがない。恐らく測定器が出来て初の事だろうな……」
ルーナのギルドカードを眺めながら副ギルド長のターセルが呟く。
ルーナのギルドカードに記録されていたステータスは
筋力1200
瞬発力1200
魔力1200
生命力1200
スキル
スキルドレイン、剛力A、剛体A、剛拳、剛脚、俊足、斧術B、短剣術B、体術B、観察眼A、自然治癒A、毒耐性B、麻痺耐性B、病耐性A、菌耐性A 、収納魔法D 、ー、ー、ー
この当時、測定出来る限界値を超えているため測定不能なステータス。異常なほど多いスキルの数々。
1つか2つのステータスが測定不能になる者は、現役の冒険者にも数人存在する。
しかし、全ステータスが振り切ってしまう事など異例中の異例だ。
「測定員が叫びたくなるのも頷けるな……君、人間だよね?」
そう訪ねられたルーナが首を傾げる。
「ああ……悪い悪い、あまりにも凄すぎて変なこと言った。気にしないでくれ」
「…ん」
「スキルドレインか……実際に目にするのは初めてだが、末恐ろしいスキルだな……この年齢でこのスキルの多さは異常だぞ……それだけ過酷な環境を生き抜いて来たって事か……」
ターセルが1人ぶつぶつと呟きながら何度もギルドカードとルーナの顔を見ている中、ルーナは目の前に出されたお菓子を食べながらお茶を啜っていた。
暫くターセルと話をして……というよりはターセルが1人で話をしてルーナはギルドホールに戻る。
「凄い実力を持っているが、君はまだ若い。無理せずじっくりとやりなさい」
「…ん、ありが…とう」
最後に一言ルーナに言ったターセルは受付嬢に引き継ぎ、自分の部屋に戻った。
「早速、今日からクエストを受けますか?」
「…ん、やる。どうし…たら良…い?」
「そうですね。普通はあそこにある掲示板から自身に合ったクエストを選んでこちらに持ってきてもらうのですが、初めてだと判り難いですよね? こちらで紹介しましょうか?」
「…ん、お願…い」
親切な受付嬢さんの勧めで幾つかのクエストを受けたルーナ。
「あなたの実力なら危険は無いと思いますが、絶対に無理は禁物ですよ?」
「…ん」
「今日は初めてのダンジョンを楽しむつもりで頑張って下さい」
「…ん、行ってき…ます」
ダンジョンの入り口まで案内してくれた受付嬢さんが頭を下げ見送る。
普通はここまで世話を焼かないのだが、ルーナは特別なのだろう。
『あれ? 外に出た……』
初めてダンジョンに入った者が必ずといって良いほど思う事をルーナも思った。
地下に下りたはずなのに外と変わらぬ景色に松明や照明器具も無いのに外と同じく明るい。
生物の気配は外より多い。しかし、警戒するほど強い生物の気配は感じられず、ルーナは受付で貰った依頼書と迷宮地図に目を通しながら歩く。
『ん、覚えた』
クエストに必要な素材を記憶し、収納魔法に依頼書をしまい、地図を確認しながら奥へ奥へと進む。
道中、ゴブリンやオークやホーンラビット等のモンスターと遭遇するが、武器を使うまでもなく拳1つで倒し、解体していくルーナ。
『凄い、探さなくても獲物が沢山。狩り放題』
あまりにも多くの獲物に狩人の血が騒ぎ、奥へ奥へと歩を進めるルーナ。
気が付くと貰った地図には載っていない場所に居た。
今日からルーナの物語冒険者編スタートです。
冒険者編が何話続くのか決めてませんが、楽しく書きたいと思ってます。




