第8話 水魔法
僕達は今日もダンジョンに来ていた、目的は僕の魔法訓練。魔力操作もずいぶんスムーズに出来る様になったのでそろそろ頃合いだろうと、エリーさんから提案があったのだ。
「では早速初めるのじゃ」
「はい! お願いします」
魔法の説明から入り、どの魔法のを覚えるか選択する。先ずはエリーさんの薦めで、覚えておくと便利な水魔法を選択した。
水魔法。水や氷を作り出し操ったり物質を凍らせたりする魔法。様々な状況に応用が効きやすく便利。氷に変化させたり物を凍らせたりする凍結魔法を使うにはかなりの熟練が必要。
「先ずは水に魔力を流し操る訓練からじゃ」
そう言うとエリーさんは収納魔法から水袋を取り出した。
「あれ? エリーさんって収納魔法のスキル持ってませんでしたよね?」
「我を誰だと思っておる。この程度の魔法、見れば覚えられるのじゃ」
見て覚えられるものなのか? 竜族が凄いのか、エリーさんが凄いのか……
「魔法や自然、世界の理を理解すれば誰にでも出来る事なのじゃ。それには長い研鑽が必要じゃがのう」
「僕にも出来るようになりますか?」
「それはお主次第なのじゃ。ルーナと違ってお主は物覚えが悪いからのう」
「ぐっ……ど、どうせ僕には才能が無いですよ……」
「大丈夫だ…よ。アステルは…やれば出来る…子」
「ルーナさん……」
慰められると涙が出てきそうだ……
「ほれ、いつまでも落ち込んでおらんで、修行開始なのじゃ」
……落ち込ませたのはエリーさんでは?
━━気持ちを切り替えて、早速水に魔力を流し操作の練習をすると、意外にもあっさりと思った通りに水を操る事が出来た。
「ほう、お主魔法の才能は多少あるようだのう」
「アステル凄い…ね」
「えっ? ホントですか?」
「多少じゃぞ多少、自惚れるでないのじゃ」
「解ってますよ……そんなに多少多少言わなくても……」
ぐぬぬ、今に見てろよ直ぐに覚えて見返してやる。
この日、水を作り出したり、氷や霧に変化させたり、といった難しい魔法は使えなかったけど、水を操って弱い水弾を飛ばしたり物を包んだり出来る様になった。これをもう少し訓練すれば水弾で岩を破壊したり、水の刃を作り出し切り裂く事が出来る様になるらしい。
家に帰り早速母さん達に覚えた水魔法を見せた。
「うわーお兄ちゃん凄ーい」
「兄ちゃんカッコいい」
アイリスとアレンが目をキラキラさせ、尊敬の眼差しで僕を見つめている。
「そうか、カッコいいか」
やっぱり素直な妹や弟は良いなぁ、ここに居ると自分は出来る人間だと思えるよ。最近はずっと天才に挟まれて修行してたから自信が湧いてくる。
「ふふ、アステルの奴め、調子に乗っておるわい。まあたまにはこんな事もなければやる気を無くすからのう」
「…ん、アステルは頑張って…るから、誉めてあげないとダ…メ」
ルーナとエリーが遠目でアステル達を見ながら微笑んでいた(ルーナの表情は変わらないが心の中で微笑んでいる)
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魔法修行開始から数日が経ち、僕の水魔法はだいぶ実戦で使えるレベルになってきた。
僕達は前回と同じ5階層にやって来た。今日は5階層の奥地の巨木が立ち並ぶ森に向かう。
「さて、今日は実戦訓練じゃ。水袋は多目に持ってきておるかのう?」
「はい!」
「今日の相手はあ…れ」
ルーナさんが少し離れた場所にある木の側に居る、一匹のモンスターを指差した。
「……あれってベアーラビットですよね」
ベアーラビット。ウサギのような熊のような肉食モンスター、強力な爪と牙、高い瞬発力を持ちかなり狂暴な性格で5階層に生息するモンスターの中では最強クラス、先日のボブゴブリンよりも強い。
「大丈夫、アステルなら倒せ…る」
ルーナさんが修行相手を選ぶ時、かなりギリギリを見極めて選んでいる。
一歩間違えば死に至る危険性はあるが、そういったモンスターの相手をさせる時は、必ず一緒に居てくれて、本当に危なくなった時には、いつでも助けに入れる様に見守ってくれているのだ。
まあ、トロールはやり過ぎたと反省してたみたいだけど……
「……わ、判りました、やってみます」
僕もそれは理解しているので、怪我は覚悟の上で戦闘に挑んでいる。
右手に風切りを持ち、左手に水袋から取り出した水を纏わせて走り出す。
先ずは水弾を飛ばし先制攻撃、水弾はベアーラビットに直撃したけど大したダメージを与えられず、ベアーラビットの怒りを買った様だ。
あれ? 効いてないぞ?
「ゴガァーーー!」
ベアーラビットは僕を睨み付け、地面すれすれをジャンプして突進して来た。
ギリギリまで引き付けて……ここで横に転がり突撃を躱す、よし相手に隙が生まれた今の内に収納魔法から水袋を取り出す。
後方の大木にベアーラビットがぶつかると、大木は激突された所が粉々に砕けて倒れ落ちた。
うひゃー! 当たったら死ぬよね……でも水弾攻撃がダメでもこれはどうだ! 僕は水弾を飛ばし、今度はベアーラビットの顔にまとわり着かせた。
ベアーラビットは、まとわり付く水で呼吸が出来ず、顔を腕で拭い、水を取ろうとするが、絡み付いた水は中々剥がすことが出来ない。
僕はすかさず踏み込み、先ずは危険な腕を斬りつけ、ベアーラビットの右腕が切り落とした。
よし! 先ずは一本、もう一発だ!
再び水弾を飛したけど、ベアーラビットは学習した様で、水弾を残った左腕で叩き落とした。
ジリジリと隙を伺い距離を積めてくるベアーラビット
変に動くと僕がやられる……冷静になるんだ。エリーさんにも言われただろう、奇声を上げている暇があるならどう動くか考えろって……奇声を上げてる自覚はなかったんだけどね。今考えると恥ずかしいよな……
ベアーラビットの周りを左へ左へと移動し、隙を伺い水弾を放ち牽制を入れる、右腕の無いベアーラビットは、水弾を防ぐ事が出来ず苛立ち始め、無謀な突進をしてきた。
甘いよ、そんな単純な攻撃には当たらない、ここだ!
僕はベアーラビットの右側から踏み込み、腹部に風切りを突き立てた。
激痛でベアーラビットがもがき、その場で暴れまわり、暫くすると、出血の所為かベアーラビットの動きが鈍くなっていた。
僕は素早くベアーラビットの背後に回り、背中から飛び付き、風切りでベアーラビットの喉を切り裂き、ベアーラビットはその場に伏した。
多少時間は掛かったものの、僕はベアーラビットの動きを冷静に見極め無傷で勝利を納める事が出来た。
「やりましたよルーナさん」
僕はルーナさんに向かい右腕を上げガッツポーズした。
「グガアァーーー!!!」
僕の後方から咆哮が聞こえ、顔を向けるとベアーラビットが低空の突撃を放った後だった。
もう一匹居たのか! 不味い、避けられない!
僕は魔力を背中に集中し衝撃に備えた。
直後、僕の横を影が通り過ぎ、ベアーラビットが飛んできた方へと弾き飛ばされ、地面を数回跳ねた後、そのまま動かなくなった。
「ダンジョンで気を抜いちゃダ…メ」
その場に居たのはルーナさん、なんとルーナさんはあの一瞬で僕の後ろに回り込み、飛んでくるベアーラビットを蹴り返したのだ。
「……すいません、助かりました」
「まったくお主は、折角誉めてやろうと思うておったのに、詰めが甘いのじゃ」
エリーさんに軽く額にチョップを入れられ説教をされた。
この後ベアーラビット二匹を美味しく調理し、二人の機嫌を回復させ皆で気分よく家に帰った。




