第56話 国宝級? 鑑定不可のアイテム
新ダンジョン発見、このグランセルに戻った僕達はギルドにその報告をした。
回りにいた冒険者やギルド職員さん達の耳にも入り、ギルド内に騒ぎが起こり、詳しい話はギルド長室でギルベルト様にする事になった。
ギルド長室に入るとギルベルト様は驚きと喜びが混ざったテンションで僕達を向かえてくれた。
「よく来た、まあ座れ」
「はい」「…ん」
僕、ルーナさん、エリーさんはギルベルト様に促され椅子に座り、職員さんがお茶を運んできて、僕達の前に置く。
「新ダンジョンを発見したってのは本当か?」
「はい、中に入って確認しましたけど、間違いなくダンジョンでした」
「場所は?」
「エターナルアイスヘルの中心近くです」
「は!? エターナルアイスヘル?」
「はい」
「また何て所に発現したんだ……」
ダンジョンを発見した場所を聞いたギルベルトの表情がみるみる内に落ち込んでいる。
「やっぱりそうなりますよね?」
「はぁ、せっかくのダンジョンなのに場所が悪すぎるぞ……」
解ってはいたけど予想以上にガッカリしてるな、まあ、仕方ないよね。場所柄あそこじゃ……
エターナルアイスヘルに行くには標高5657mのウィルブルム山に登らなくてはいけない、山は中腹辺りから樹海のようになっているし、それを超えても、その先は氷雪地帯が続く。雪に埋もれたクレバスもあり、モンスターも多く生息している為、危険が多い。登山上級者並の技術と、モンスターと戦える実力がなければまず辿り着けない。
しかも、エターナルアイスヘルは年間最高気温マイナス40℃と言われる極寒の地なので人が住める場所じゃない。せっかくの新ダンジョンだけどグランセルやアタランテのダンジョンに行った方が楽に探索を行えるから無理にエターナルアイスヘルに行く人は殆ど居ないだろう。
「お前達はなんでまたそんな所に居たんだ?」
「魔法の修行のためにです」
「ん? 魔法の修行?」
「はい、魔法屋で買う以外の方法で魔法を覚えてるんで色んな修行をやってるんです」
「ほう、それは中々に興味深いな……だがそれより今はダンジョンの話だな。さてどう報告したものか……」
「何が問題なのじゃ?」
「ダンジョンがある場所が問題なんだよ。移動手段が無いんだ。エリーみたいに飛んで行ければまだ良いんだけどね」
「麓から転送魔方陣で移動すれば良かろう?」
「えっ!? それって広めちゃっても良いの?」
「転送魔方陣? なんだそれは?」
「別に我ら竜族やエルフ族の占有魔法でもないし、何の問題があるのじゃ?」
「皆に広めちゃうと犯罪に使われたりしないかな?」
「ならば特定の人間以外に教えなければ良いのじゃ。魔方式を隠して陣を張れば知らぬ者には読み解くことも出来ぬしのう」
「へぇーそんな方法もあるんだね」
「だーかーらー、ワシを無視するんじゃない! 転送魔方陣ってのは何なんだ?」
「あ、すいません無視した積りはないんですけど……」
エリーさんとの話に集中しててギルベルト様の声が耳に入ってなかった……
ギルベルト様に転送魔方陣についての説明をすると、これまでになく驚き、僕と同じ懸念を抱く。
「確かに色々と問題が有りそうだな。エリー、その転送魔方陣での移動を妨害する方法はあるのか?」
「勿論じゃ。特定の術式を組み込んだ陣以外の転送魔方陣を弾く結界を張れば良いのじゃ」
「ほう、そんなのも有るのか。なら問題はないな、それを教えてもらっても良いか?」
「教える気がなければそんな案は出さぬであろう?」
不安な点もあっさり解決すると、ギルベルト様の表情が少し嬉しそうに緩む。
それにしてもエリーさんはギルベルト様相手でも全く態度が変わらないから見てる僕の方がひやひやするよ……まあ、竜族のエリーさんにとっては人間の貴族階級を敬う必要もないんだろうけど……
「助かる。エリー、良かったらなんだが、一緒に王都に行ってもらえないか?」
「アステルとルーナも一緒に行って良いのなら良いのじゃ」
「それは問題無い。明日にでも出発したいんだが頼めるか?」
「どうじゃ?」
「僕は問題無いよ」
「…ん、私も良い…よ」
「じゃあ、明日の朝に中央広場に集まってくれ」
「解ったのじゃ」
おおっ! 王都に行くのは初めてだな……
「王都ってどんな感じなんだろうね。ちょっと楽しみだね」
「…ん、それよりアステル。持って帰ったアイテムの…事、聞かなくて良い…の?」
「あ、忘れてた」
僕は建物内で発見した装備や美術品等についてギルベルト様に聞いてみた。
「そうだな、ギルド規約ではダンジョン内で発見した物は発見者の物になってるからお前達の物って事で良いとは思うんだが……個人がダンジョンを発見した前例がないからな……建物内がダンジョンとみなされるかだな。それについては王都に行った時に国王様に聞いてみる」
「解りました。とりあえず発見したアイテムには全部目印を付けて収納魔法に入れてありますんで、見てみますか?」
「良いのか? ワシもどんな物があったのか興味があったんだ。アタランテの時はかなり良いものがあったらしいからな。君、ギルド鑑定士呼んできてくれ」
ギルベルト様はかなり嬉しそうに返事をして、お茶を持って来て部屋の端に控えていたギルド職員さんにギルド専属鑑定士を呼ぶように指示をだした。
僕は収納魔法から剣2本、槍1本、重装鎧1セット、軽装鎧1セット、男性用服を2セット、女性用服1セット、大角盾1つ、小丸盾1つ、よく解らない道具が3点、その他美術品と巻物を取り出す。
「ほう、これは中々面白い物があるのう」
エリーさんが巻物を手に取り広げると興味深そうに読んでいる。
「エリー、その字読めるの?」
「うむ、これは神世文字じゃな、ギルドの図書館にも幾つか文献があろう?」
「神世文字か、珍しいな」
「ギルベルト様も知ってるんですか?」
「ああ、読めはしないが知っている。学問ギルドで研究されている古代の文字だな」
「へぇー、エリーはそんな凄い文字が読めるんだ。やっぱり頭良いね」
「全て読めるわけではないが、この巻物くらいは読めるのじゃ」
エリーさんは事も無げにそう言った。
やっぱりエリーさんは凄いな、僕は古代文字とかにはあまり興味ないから調べた事もないけど、学問ギルドとかに行ったら喜ばれるんじゃないだろうか?
「それで、何が書いてあるの?」
「強力な武器のある場所が示してあるのじゃ」
エリーさんが少し口元を緩め簡単に内容を訳してくれた。
内容は《竜の住まう山、虹の生まれし泉の底、社の奥に眠る剣を抜きし者、世界を統べる王とならん》だった。
「世界を統べる剣か……物語に出てくる勇者の剣みたいでカッコいいね」
「ははは、勇者の剣かワシも子供の頃に読んだ本に憧れて剣の修行に明け暮れたものだ」
「ギルベルト様でもそんな時代があったんですね」
「ワシだって生まれた時からこんなおっさんではなかったのだぞ? ちゃんと可愛い子供の時代があったんだ」
「そ、そういう意味ではなくて……貴族の方でも勇者に憧れるもんなんだと思ったらなんだか親しみが湧きます」
危ない危ない、本当にそういう意味ではなかったんだけど、聞きようによっては失礼な言い方だったな……
でも懐かしいな、僕にとっての勇者は父さんだけど、回りの子達はよく物語の勇者ごっことかやってたよな……
「ルーナはそういうのあった?」
「…ん、私はあまり本読んだこと…ない、けど、小さい頃にお母さんに読んでもらった、妖精と勇者の話…は好きだった…よ」
ルーナさんの小さい頃かぁ、可愛いかったんだろうな……今でも可愛いけど。
そんな話をしていると、ギルド専属鑑定士さん達が部屋に案内されて来た。
早速、全品鑑定してもらうと
「これは……驚いた、全部魔法武具と魔法道具ですね。しかし、申し訳ないのですがこのランクのアイテムは私の鑑定力では詳しい鑑定は出来ないです」
ええっ!? Bランク鑑定士に鑑定出来ないアイテムって……国宝級? とんでもないな……
「美術品は特に変わったところは無さそうですが、どれも一級品の出来栄えですな、王宮に飾ってあってもおかしくない品ばかりです」
綺麗な絵だなとか思ってたけどそんなに凄いものだったのか……家には飾れないな……
「ただ1つだけ注意しておきますと、この武器3点、恐らく魔剣と魔槍です。詳しい鑑定を済ませるまで使用は控えた方が良いと思います」
「解った。急に呼び出してすまなかったな、仕事に戻ってくれ」
頭を下げて退出する鑑定士さん達。
結局、装備や道具に関しての詳しい鑑定結果は出なかった。魔剣や魔槍が普通の武器とどう違うのかは解らないけど、鑑定士さんの態度からすると何かありそうだな……でもギルド鑑定士に鑑定出来ない物って国家鑑定士クラスじゃないと鑑定出来ないって事だよね?
うーん、また1つ問題が増えた……
次回は初の王都へ、久しぶりにあの人も登場します。




