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第49話 黒幕捕獲

 ルーナさんが突撃して行った砦奥の大きな屋敷に入りると、屋敷の中でもルーナさんに倒された人達が沢山倒れていた。


 ルーナさんが戦闘(蹂躙)したであろう痕跡を辿って屋敷の3階の1室に入ると他の戦士系の武装の連中とは違い、ローブを纏った3人の男女がルーナさんに芋虫状に縛り上げられていた。


 50歳を過ぎたぐらいの男性と30歳前後の男性、それと30歳前後の女性、3人とも同じ柄のローブを着ている。


 このローブどこかで見た気がするな……


「お主らがここの代表か?」


「貴様ら誰の手の者だ? ここがどなたの所有する場所か知って攻撃してきたのだろうな?」


「我らは冒険者なのじゃ。誰の所有物かなどは知ったことではないのう」


「冒険者? たかが平民風情がこんな事をしてただで済むと思うなよ!?」


 平民風情? って事はここは貴族階級の人が関連した砦って事か?


「あなた方は貴族の方ですか? 知らない事とは言えとんだご無礼を致しました」


 僕は1歩前に出て手でエリーさんを静止して話を代わる。


「今さら頭を下げた所で許されると思わい事ね」


「はい、それは重々理解しております。如何様にも罰を受ける覚悟は出来ております。ですが、本当にここは貴族の方の所有する砦なのでしょうか? 宜しければ所有する方のお名前をお聞かせ頂けないでしょうか?」


「貴様! 平民風情がワタシが嘘を言ってると申すのか!?」


「いえ、決してあなたが嘘を言っているとは思っていませんが、何分冒険者の性分と申しますか……ただただ相手の言うことを信じる事も出来ません。盗賊などはよく言葉で油断させて後ろから襲って来ることもありますので」


「盗賊だと!? どこまで我らを侮辱すれば! よく聞け、我が主の名はデブリス・ゴウショウ様だ! 貴様など謁見も許されぬ大貴族だ! 解ったらさっさと縄を解け!」


 うわぁー、言っちゃったよこの人……こんなに簡単に黒幕の正体が解っちゃって良いのか? ……ひょっとして騙されてる? それともこの人が馬鹿なだけなのか?



 デブリス・ゴウショウ。元商人の1代貴族で現在の爵位は名誉男爵。ロックウェル領の前領主オリバ・ロックウェル様に商会の研究部門の成果を認められ爵位を与えられ小さな町を治める様になった結構有名な人だ。


 その町は、デブリスが治める様になってから名前をエジシンに改め、商会の研究部門は魔道学院になり、国中から成人前の若者や国の学問ギルドに入れなかった研究者等を集め、作物や家畜の品種改良や暮らしに役立つ魔道具等の開発で現在は学問と研究の町として有名になっている。



 しかし……この人、主は大貴族と言ってるけど名誉男爵って大貴族では無いよね? まあ、平民からすれば雲の上の人には違いないし、名誉男爵っていってもデブリス・ゴウショウ様なら爵位以上に財力も権力も持ってそうだけど……


「なんかあっさりと黒幕が解っちゃったんですけど、どうします? ルーナさん、エリーさん」


「……その者が嘘を言っておる可能性は無いのかのう? あまりにも簡単に喋り過ぎではないか?」


「…ん、怪し…い」


 確かにそれは僕も思った……っていうか、誰がどう考えても黒幕を隠す為に態と関係無い人の名前を出したとしか思えないよね?


「き、き、貴様! たばかりおったな! 誘導尋問で証言を吐かせるなど、恥を知れ恥を!」


 うーむ、この態度がますます怪しい……演技にしか見えない……


「とりあえず、ギルベルト様に連絡してこの3人をグランセルに連れて行きましょう。あそこなら魔道具で嘘をついてるか調べられますから」


「うむ、そうじゃのう」


「…ん、それが良いと思…う」


 早速、ギルベルト様に遠話器で連絡、砦は外に出られない様にエリーさんが周りを土操作で壁を作って固め、次来る時のために結界は消滅させ、後々証拠固めに役立つかも知れないので倒した人達は死なない程度に回復魔法を掛けて癒しておく。


 幸いここには拐われてきた人は居なかった。後はグランセルに戻ってからだな。




 グランセルに戻った僕達、直ぐにローブの3人をギルベルト様に引き渡す。


「よくやったなお前達」


「いえ、まだあの人達が言ってた証言の裏付けが出来てませんし」


「それは直ぐに調べがつくだろう」


「でも、本当にゴウショウ様が黒幕って事になったら一介の冒険者の僕達には手出し出来ませんよ?」


「そうだな。まあ、その時はワシが何とかする。数時間もあれば調べがつくからここでゆっくり待つと良い」




 ギルド長室で待つこと4時間。


 結果ローブの男達は馬鹿だと結論が出た……魔道具で調べたから間違いないそうだ……よく今までバレずに居たもんだ……


「お前達に頼みがあるんだが聞いてくれるか?」


「はい、なんでしょう?」


「デブリス・ゴウショウを何とかする為には奴の主にあたるロックウェル卿に話を通す必要があるんだ。そこで、お前達の移動力を借りたい」


「移動力?」


「ああ、ここからロックウェル領まで普通に移動すれば1番近いイルムでも7日はかかる。お前達はそれを数時間で移動出来る手段を持っているだろう? ワシをロックウェルの町まで連れていってほしいのだ」


「なるほど、エリーさんどうですか?」


「かまわぬのじゃ。そのロックウェルの町が何処にあるのかは知らぬが、さっきの砦付近であれば大した手間でもないからのう」


「助かる。では明日の朝に出発ということで良いか?」


「我はかまわぬのじゃ」


「…ん、良い…よ」


「問題ないです」



 翌日、僕達はロックウェル領ロックウェルの町に出発した。


「はーはっはっはっ! 凄いなドラゴンは! 王都の魔道船の倍は早いんじゃないか?」


「魔道船に乗ったことあるんですか?」


「ああ、2度だけだがな。あれも快適で良いがエリーの背に比べれば玩具に等しいな。なあエリー、ワシに仕える気はないか?」


「ないのう。我は今の生活が気に入っておるし、ルーナやアステルから離れる気もないのじゃ。空を飛ぶのが気に入ったのであれば、飛行系モンスターでも従魔にしてはどうかのう?」


「飛行系モンスターか……それも一考だが、ワシはお前さんの背が気に入ったのだ。だが、無理には頼めぬな、たまにで良いから乗せてはもらえないか?」


「ふむ、気が向いたらのう」


 ギルベルト様はよっぽどエリーさんの背中が気に入ったらしく、いつまでもテンションが高いままだった。




 グランセルを出発して3時間が過ぎた頃、ロックウェル領ロックウェルの町が見えてきた。


「あの町がそうかのう? そろそろ地上に降りて歩くのじゃ」


「いや、そのまま町の上まで行って広場に降りれば良い」


「ええ!? そんな事したら大騒ぎになりますよ?」


「大丈夫だ、問題ない」


 ああ、ギルベルト様が悪い顔してる……イタズラしようとしてる子供と同じ顔だ……


 言われるままエリーさんはロックウェルの町の中央広場に竜形態のまま着地する。


 案の定町は大騒ぎになり、衛兵さんが青い顔で僕達を取り囲んで震えていた。


 その衛兵さんに混じって、20代半ばくらいのの他とは違う高貴な武具を装備した男性が見えた。


「おうっ! クロ坊、久しぶりだな」


 ギルベルト様がエリーさんの背中から飛び降りてその高貴な武具の男性に向かって声を掛けた。


「ギ、ギルベルト様?」


「少し見ない内にでかくなったなクロ坊」


「グランセル卿、公の場でクロ坊は止めて下さい」


 ギルベルト様を見て我に帰ったのか、クロ坊と呼ばれる男性が目尻をピクピク顔を引き釣らせながらギルベルト様の両肩をガシッと押さえる。


「いや、悪かった、ロックウェル卿久しぶりだな」


「で? これはどういう事です?」


「いや、ロックウェル卿に久しぶり会うものだから少し驚かせてみようかと」


「やり過ぎでしょう! 何考えてるんですか? 私だけでなく町中大騒ぎですよ! 子供ですか!?」


 だよね。普通は怒るよね……って、ロックウェル卿? この地の領主様相手にクロ坊って、2人は結構親しい仲なのか? じゃなきゃそんな呼び方出来ないよね?


 エリーさんも人形態に戻り、衛兵さん達が町民に事情を説明し、騒ぎは治まった。


 僕達はクロム様の屋敷に招かれ、ギルベルト様からクロム様へ今回の来訪の経緯が説明された。


「なるほど、一概には信じられませんが、貴方が私にそんな嘘を言う道理もありませんね」


「これが、ここに居るルーナ達が持って帰ったその研究所の資料と、連れ帰った者達を取り調べた資料だ、それとその連中が着ていたローブだ」


「これをその者が着ていたのですか?」


「ああ」


「はぁ、馬鹿なのですかね?」


「馬鹿なのだろうな」


 クロム様が呆れたように頭を抱えて鬱ぎ込んでいる。


「あの、そのローブって?」


「これはな、魔道学院の教師が身に付けている制服だ」


 あ、そうか、道理で見覚えがあると思った。ダメだろう証拠になるような物着てたら……でも逆に考えると怪しすぎて疑わないよな、そういう狙いだったのか?


 ここからの対応は早く、ロックウェル領正規兵が学院を制圧。


 ━━数日後、取り調べが終わり、罪が確定した。


 デブリス・ゴウショウとそれに協力していた学院長、学院幹部、一部の教師が捕縛され、馬鹿3人組の居た砦に居た人達も捕らえられ、イルム西の屋敷のようなデブリス関連の研究施設の人間も全て捕縛。公に公表された後に死罪もしくは極刑になるという事らしい。


 デブリスの一族は犯行に関係していた人はデブリスと同じ刑に処され、関係していなかった人達も国外追放になった。


 研究資料等は王都に保管され、実験台にされ魔改造された人は保護され検査を受け治療されるらしい。


 モンスターや獣は殺処分、学院はこれまでの成果を考慮され取り潰しするのは如何なものかと、人材育成の為と理由をつけて学問ギルドが管理、エジシンには新しい町長が任命される事になった。


 こんなにあっさりと解決してしまうと逆にまだ何かあるのではないかと不安になるものの、一先ずはエルフ族の危機も去ったと考えても良いだろう……本当に良いのかな?


 僕達5人にはグランセルギルドから依頼達成の報酬として、破格のゼル(先日の防具代が安く思える程)が支払われた。


 アレンも家に帰って来て、デイジー達もまたグランセルに遊びに来るようになり、僕達は日常に戻った。

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