第40話 親方って何者?
フェリシアさんとアリシアさんが僕達の新しい仲間になった昨日。
ギルドでは、ルーナさんとエリーさんが倒したオリハルコンゴーレムの話題で持ちきりになっていた。
オリハルコンゴーレムは滅多に見付からない。そもそも探して見付かるモンスターではない。
物理攻撃のみだけど攻撃力はかなり強く、魔法が効かないし固すぎて傷を付けるのも難しいし直ぐに再生する上に、体の一部が欠損すると途端に逃げ出すタチの悪い事この上ない、ある意味、階層ボスより倒すのが難しいモンスターなのだ。
体の一部でも持って帰れたら御の字の、超希少素材をゴーレム一体分(約500kg)も持って帰ってきたのだからもう、大騒ぎだ。
探索前に受付嬢さんが冗談っぽく「43階層に行くなら、オリハルコンゴーレムが居たら倒して持ち帰って下さいね」と、言ったのを本気にしていたらしい。
頼んだ本人が一番驚いて居たのだからもう処置なしだ。
現在ギルドにある、オリハルコン鉱石の納品クエスト分を全部渡しても4割は残る。残りのオリハルコン鉱石もギルドが引き取りたいと申し出てくれたけれど、持っていく所があるからとルーナさんが断り、ギルド側も強制は出来ないので、しぶしぶ引き下がった。
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そう言う訳で、今日はパーティーメンバー全員で親方の所へ向かっている。
僕とルーナさんの後ろを歩くエリーさん、その両手にはフェリシアさんとアリシアさんが手を繋いで楽しそうにしている。すっかりなつかれたエリーさんが少し複雑な表情なのは見ないふりしとこう。
なんであんなに、なついたのかは解らないけど、朝起きた時に「柔らかかった」「ふわふわだった」と意味不明な事を呟いていたのが原因かも知れない……
工房ファゴットにやって来た僕達。相変わらず調理器具しか並べられていない店内。武具は全てオーダーメイドなので仕方ないのだけど、展示品くらいは置いておいた方が良いのでは? とは親方には言いにくい。
「こんにちは」
「親方居…る?」
作業場の方に入り声を掛ける。
「おう、ルーナ、それにアステルと……そっちのは初めてだな」
「紹介しますね。僕の魔法の先生でパーティーメンバーのエリーさんと、昨日パーティーメンバーになったフェリシアさんとアリシアさんです」
「そうか、今日はそいつらの武具でも作りに来たのか?」
「お土産、持って来…た」
ルーナさんがオリハルコン鉱石を親方の前に置くと親方の目の色が変わる。
「こりゃぁ……オリハルコンじゃねぇか」
「…ん、前に加工したいっ…て、言ってたか…ら」
「すげぇな、こんなに大量なオリハルコン鉱石は初めて見たぞ。よし、今日は店じまいだ」
「ええっ!? まだ朝ですよ?」
「こんだけあれば色々作れるな。ルーナ、聖剣作ってやる」
「私は、斧が良…い」
「斧か……なら聖斧だな、今使ってるやつと同じくらいの大きさで良いのか?」
「…ん」
「そうと決まれば先ずは人集めだな……先ずは、レノバン、それとライアス……相槌はドイルで決まりだな……」
親方がぶつぶつ言ってる人の名前、僕の聞き間違えじゃなかったら、とんでもない人達だ。レノバンと言えばアタランテ神殿の大司教様、ライアスは王都の国家錬成師筆頭、ドイルはこれまた王都の国家鍛冶師筆頭……あれ?ライアス様とドイル様は解るけど、レノバン様はなんで名前が出てるんだろ?
「場所もここじゃ無理だな……王都の工房を国王に借りるか……」
おいおい、国家工房を借りるとか、さらっと言ってるぞ? この人何者?
「なんだ、まだ居たのか? さあ、閉めるぞ。さっさと帰れ。ルーナ、完成したら連絡する、アステルの家で良いんだな?」
「…ん、宜し…く」
有無を言わさず僕達は追い出された。もう、オリハルコン加工しか頭にない様だ……あぁ、そうだ、あの目は海の時のルーナさんとエリーさんの水弾合戦の時の目にそっくりだ……楽しさで周りが見えてない……
「アステル、あ奴はいつも、あのような感じなのかのう?」
「いえ、いつもは寡黙でいぶし銀って感じのクールな人なんですけど……今日は職人魂に火が付いて我を忘れてるみたいです……」
「…ん、親方楽しそ…う」
お土産渡すついでに、フェリシアさん達の防具の相談をしたかったのだけど、暫くは、無理そうだ。親方が落ち着いたらまた相談に来よう。
あっ! フェリシアさん達の調理器具……仕方ない、別の店で探そうか……
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予定外に時間が空いたので、今日もダンジョンで探索する事になった。
フェリシアさん達の武具を揃える為にお金は必要だからしっかり稼がないとね。
魔法はエリーさんが教えてくれる事になったから買わなくて良くなった。二人もお金が掛からないのは大賛成の様だし。
とりあえず、二人を鍛える前に、特性を知らなくては効率が悪いので、二人のギルドカードを見せてもらう事にした。
フェリシア
筋力83
魔力120
瞬発力98
生命力141
スキル
土精霊の加護、罠師D
アリシア
筋力72
魔力122
瞬発力133
生命力85
スキル
風精霊の加護、捕縛D
おおっ! 凄い、二人とも加護持ちだ! 神の加護に比べると精霊の加護はランクが落ちるけど、どちらもかなりレアな魔法士向けの良スキル、エリーさんも教えがいあるだろな。
「あの……これって、どうなんでしょう?」
カードの内容を見たフェリシアさん。スキルの良し悪しは解らないようで、僕達に尋ねてきた。
「二人とも冒険者向けの良いスキルを持ってますよ。ね、エリーさん」
「冒険者向けというのは我には解らぬが、このスキル名からして、風魔法と土魔法の才能があると考えれば良いのかのう?」
そうか、スキルって人族が作った魔道具で鑑定したものだから、エリーさんには馴染みがないのか……
「そうですね。風精霊の加護は風魔法の適性が高いのと、鍛え方次第ですけど、広域探知スキルを覚えやすいのと、瞬発力が上がりやすいスキルです。土精霊の加護は、土魔法の適性が高いのと、鉱物探査スキルを覚えやすいのと、生命力が上がりやすいスキルです」
「アステルさん詳しいですね」
「ふふ、冒険者やスキルに関する知識なら誰にも負けません」
「アステルは、勉強家だ…ね」
「ふふ、それほどでも、ありますよ」
「ただの冒険者バカとも言えるがのう」
「ぅぐっ……冒険者バカは酷いですエリーさん……」
料理以外に人に自慢できる数少ない特技なのに……
少しいじけて地面を弄る僕の頭を、ルーナさんは優しく撫でて、慰めてくれた。




