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第32話 アステル先生

 夕刻になり、僕達は今日の訓練を終えてギルドに戻った。


「あっ! ルーナさん、エリーさん、もうクエスト終わったんですか?」


 ギルドのロビーに入るとベンチに座るルーナさんとエリーさんを発見。


「…ん、ただいまアステル」


「ただいまなのじゃ」


「お帰りなさい、大丈夫でしたか? 怪我とかしてないですか?」


「…ん、何ともない…よ」


「大した相手ではなかったからのう」


「良かったです」


 大した相手ではない事ないよね? まあ、この二人ならそうなのかも知れないな……何にしても無事で良かった。


「アステルは大丈夫…だった?」


「はい、サトスさんやカレンさん達と一緒だったんで安全でした」


「サトス?」


「紹介しますね。右からサトスさん、メインさん、ダナンさんです。昇格クエストも一緒に受けたんですよ」


 僕はすぐ後ろに居たサトスさん達をルーナさんとエリーさんに紹介した。


「…あぁ、あの時の三…人」


「お久しぶりです、ルーナ様」


「は、初めまして、お会いできて嬉しいです」


「アステルとは仲良くさせてもらってます」


 ルーナさんを目の前にして三人ともガチガチに緊張してるな……そんなに固くならなくても良いのに……


「あと、カレンさんは覚えてますよね?」


「…ん、リオンの妹だ…よね、リオンもそこに居る…よ」


 ルーナさんが指差す方向を見ると受付でクエストの報告をしているリオンさん達が居た。


「兄さん!」


「おお、カレン、どうだった? グランセルは……ん? 何だ? その腕に抱えてるのは?」


「うん、この子は今日契約した新しい仲間よ。良い顔してるでしょ」


「契約? あぁ、従魔か……お前は人付き合い下手だし必要かもな」


「べ、別に下手じゃないわよ……今日だってアステル達と一緒だったし」


「こんにちは」


「アステル、カレンが世話になったみたいだな、礼を言う」


「いえ、僕の方こそ、ご一緒出来て頼もしかったです」


 クエストの報告も終わったみたいで、カレンさんがリオンさん達にサトスさん達を紹介、サトスさん達はルーナさんの時以上に緊張して、もう何を話してるか解らないくらい言葉が可笑しな事になってた。


「よし、クエストも終わったし、カレンに新しい仲間も出来たし、皆で飲みに行くか」


「ダメ、アステルのご飯が食べた…い。アステルご飯作っ…て」


「はい、今日はオークが沢山狩れたんで、肉料理作りますね。では皆さん僕達はこれで」


「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て、ここは食べに行くとこだろ?」


 皆に頭を下げて、ルーナさんと一緒に帰ろうとするとサトスさんに呼び止められた。


「何を言ってるんです? サトスさん。ルーナさんが僕のご飯を食べたいって言ってるんです。皆で食事は後日にしましょう。ね、ルーナさん」


「…ん」


「……本当に、お主の思考はルーナ中心に出来ておるな……酒には我が付き合うのじゃ。お主らは帰っても良いぞ」


「はい、じゃあ、失礼します」


「また明日…ね」


 何故か呆れた様に僕達を見る皆に見送られ、僕とルーナさんは家に帰った。


 家に帰ると、丁度これから食事の支度を始める所だった様なので、母さんとアイリスと一緒に、取れ立てのオークで肉料理のフルコースを調理、美味しそうに僕達の料理を食べるルーナさんにたっぷり癒された。




「おはよう」


 朝起きて、ダイニングの扉を開けると、エリーさんが朝食を食べていた。


「エリーさん、おはようございます。早いですね、昨日は何時頃帰ってきたんですか?」


「さっきなのじゃ」


「さっき?」


「うむ、今帰ったのじゃ」


「寝てないんですか?」


「そうじゃな、朝まで飲んでおったのじゃ。数日くらい寝ずとも問題ないのじゃ」


 よく店が開いてたな……


「リオンさん達もですか?」


「いや、奴等は早々に酔い潰れて寝ておったのじゃ」


 また飲み比べしたのか……懲りない人達だな……って事は、今日は皆ギルドに来ないかもな……


「じゃあ、一人で飲んでたんですか?」


「いや、お主が働いておった店で飲んでおってのう。店長とやらと朝までお主の話で盛り上がっておったのじゃ」


 どんな話ししてたんだろう? ……聞かない方が良さそうだな……


 そんな事を考えながら朝食を済ませギルドに行くと、サトスさん達とカレンさんがロビーで待っていた。


「おはようございます」


「おう、アステル待ってたぜ」


「皆さん、元気そうですね」


「今日はルーナ様と一緒にダンジョン入れると思うとテンションMAXだぜ」


「二日酔いって言うのにはならなかったんですか?」


「私達はあんまり飲んで無いからね。兄さん達はまた、エリーさんと飲み比べやって朝から青い顔してたわよ」


「ルーナ様、今日は宜しくお願いします」


「……様は、禁…止」


 様呼びするサトスさんに向かってピシッと指差してすルーナさん。


「ええっ! じゃあ何て呼んだら……?」


「ルーナで良い…よ」


「それはちょっと……じゃあ、アステルと同じルーナさんて呼ばせてもらいます」


「…ん」


 一通り挨拶も終わり、僕達は第一階層のマッピングと、採取のクエストを受けてダンジョンに入った。


「エリーさん、お願いがあるんですけど」


「なんじゃ?」


「サトスさん達に魔力操作を教えてあげてほしいんです」


「なんじゃ、そんな事か。お主が教えてやれば良いのじゃ」


「え? 僕が教えて良いんですか? 僕の中途半端な知識教えるのは逆に不味いんじゃ……?」


「大丈夫なのじゃ。アステル、お主は才能が無い分、人より多くの努力をしておる。それだけ深く理解も出来ておるのじゃ。それに教える事で更に深く理解出来る。これも勉強なのじゃ、我が見ておかしな所が有れば指摘するから、やってみるのじゃ」


「…ん、アステルは出来る子、頑張…れ」


 エリーさんがそう言うならやってみるか。


「解りました、やってみます。そう言う事なんで皆さん、僕が教える事になりました」


「ああ、宜しく頼む」


「宜しくね、アステル先生」


「せ、先生はやめて下さい……なんか背中がむずむずします」


「じゃあ、師匠でどうだ?」


「うっ……それも勘弁して下さい」


「ふふっ、頼むわねアステル先生」


 皆、からかう様にニヤニヤして僕を先生と呼び始める。


「頑張るのじゃアステル先生」


「頑張ってアステル先…生」


「ルーナさんまで……」


 むう、皆して僕をからかって……僕って、いつからこういう立ち位置になったんだ?


「先生も師匠も禁止です! そんな事言ってると教えませんよ」


「「「「「「あはははは」」」」」」

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