第31話 モンスターショップ
新武器、新陣形の訓練を初めて三日目の朝、僕達はギルド会館の一室にある従魔店に来ている。
ティガと契約してから色々勉強して知ったのだけど、従魔は普通にギルドに売っていた。パーティーを組んでる冒険者には、あまり従魔契約をする人は居ないのだけど、人間関係を作るのが苦手なソロ冒険者は、結構従魔を連れている人が多いらしい。
グランセルギルドでは、受付ロビーのある1階ではなく、階段を下りた地下1階の大きな部屋が販売店と契約室を兼ねて設置されいる。案内板が有る訳でもないので、今まで全く気が付かなかった……
今回ここに来た理由は、メインさんにティガを貸してたら、気に入られて「ティガ頂戴」と言われたからだ。勿論、もう家族同然のティガを「くれ」と言われてあげるわけもなく、ここを薦めた。
そしてもう1つの理由がカレンさん、カレンさんは、口の悪さが災いして、リオンさん達以外でパーティーを組めるのが僕達だけ、このままでは青銅ランク昇格クエストをソロでやらなければならない。いくらカレンさんが強くても流石にそれは危険なので、今の内からお供を育てて役に立てようという事なんだけど……クエストまでに育つのか?
サトスさんとダナンさんに関しては「世話するのが面倒だ」「始終モンスターと一緒にいるのは耐えられない」と拒絶の姿勢を取っている。
まあ、良い関係を築けなかったらリスクが有るわけだし、仕方ないよね。
ここに売っているモンスターは、主にグランセルダンジョンの五層~二十層クラスのモンスターの幼体だ。
即戦力にはならないけど、関係を築き易く、契約もしやすい。ティガと比べると見劣りするけど、十五階層以上のモンスターを育てると、銀ランク冒険者ぐらいの強さになるから僕達にとっては心強い。
「良さそうなの居ました?」
「うーん、どの子も可愛くて迷うわぁ」
「……可愛いって、ペットじゃないんだから……」
「何言ってんのよ。可愛くて強い、格好良くて強い、これは絶対よ!」
「そうね。やっぱり連れて歩くなら見映えは大事よね」
それって本当に重要なのか? 女の子の考えはよく解らない……
強さは必要だから当然深層のモンスターが良い。その中で可愛い……は、今だけだから除外して、格好良い? モンスターに格好良いも何もあるのだろうか?
ティガは将来的に雄々しい感じにはなるよな? こいつを基準に考えるなら猛獣系、強そうと考えるなら恐竜系、ダンジョンでは動きが制限されるけど妖鳥系モンスターも悪くないかも……
魔法が使えないカレンさんなら魔法が得意な悪魔系モンスターが良いと思うけどこの店には居ないみたいだな……
檻に貼られているモンスターの特徴が書いてある用紙とモンスターを見ながら一匹ずつ確認していく。
「このボルトウィングも結構可愛いわね、私と同じ雷魔法が得意みたいだし」
「私はこのホワイトファングが凛々しくて良いわ」
ボルトウィング、体長1m程で、雷のブレスを吐き、鋭い爪を持つ鳥モンスター、ヒット&アウェイが得意
ホワイトファング、体長1m50cm程で、雪の様な真っ白な毛の狼モンスター、鋭い牙を持ち、素早さと知能が高く、力もそこそこ強い
「メインさんって戦闘時の事考えてませんよね? 同じ雷魔法が得意だと、雷魔法が効かない相手と戦う時どうするんですか?」
「ま、まだ決めた訳じゃないわよ、可愛いって言っただけでしょ」
本当かなぁ、言わなかったら決めてたよね?
「な、何よ、その目は……」
「いえ、別に何でも無いです。じっくり考えてから決めましょう。急いでも良い事無いですから」
ここに居るのは約50匹、全てのモンスターを見て二人が選んだのは
カレンさんは結局ホワイトファングにした。足を止めて戦うタイプのカレンさんに機動力の有るホワイトファングは相性が良さそうだ。
メインさんはキックスパロー
キックスパロー。体長3m程の鳥モンスター、強靭な脚力とポッチャリ体型が特徴でそのキック力は岩をも砕くと言われる飛べない鳥で、とても美味しい。
大きくなったら背中に乗って移動しながら攻撃出来るし、近付く敵はキックスパローが何とかしてくれそうだからこちらも相性は良さそうだ。
どちらも十五階層より深層のモンスターで、値段……が結構凄い。メインさんは先日買った武器と合わせて貯蓄が無くなったらしい……
契約を済ませ、早速名前を決めた。ホワイトファングは雪の様に白い所からユキ、キックスパローはチュンチュン鳴くのでチュン助、に決まった……このネーミングセンスは如何なものだろう……
ここでの用事も終わったので僕達はダンジョンに移動した。
「さあ、準備万端鍛えるわよ」
「って言ってもまだ弱いですから無理させると死んじゃいますよ?」
「それもそうね。まあ、私達が守ってやれば良いわけだしゴブリンくらいなら何とかなるわよ」
ユキの今の大きさは猫の成体くらい、チュン助の大きさは人の頭くらい、何ともならないと思う……
二人はゴブリンの群れを探して戦闘を始めた。
「よし! 良いわよユキ、その調子!」
ユキは小さいながらもかなり好戦的で、自分の何倍も大きなゴブリン相手でも怯むこと無く立ち向かっている。だけど、全く歯が立たない様だ。
カレンさんもそれはよく解っていて、上手くユキが攻撃を受けないようにフォローを入れている。
ティガもそうだけどモンスターは狩りが好きなのかな?
「さあ、行け! チュン助!」
チュン助はゴブリンにビビったのか、ひたすら走って逃げ回っている。まるで初めてゴブリンジェネラルの相手をした時の僕みたいだ。
頑張れ、チュン助。
ある程度戦闘をさせた後、ゴブリンを追い払ってユキとチュン助を労うカレンさんとメインさん。
「よく頑張ったわね。ユキ、ご褒美よ」
「ワォン」
「チュン助も頑張ったわね」
「チュン」
メインさんとカレンさんは誉めて餌を与えながら、ユキとチュン助を撫でてやっている。
飴と鞭作戦なのか?
「どう思う? ティガ」
「ガウッ」
「いやいや、チュン助は食べ物じゃないから食べちゃダメだぞ?」
「ガウッ」
「だから旨そうとか言っちゃダメだって……」
「ガウゥ……」
「そう残念がるなよ。もっと食べ応えのある奴を狩れば良いだろ?」
「ガウッ」
「よし、行こう」
僕とティガは皆と少し離れてオーク狩りに行く事にした。
「二時間ぐらいで戻って来ますからこの辺りに居てくださいね」
「はーい」
「了解」
「アステル俺達も連れてけ」
女性二人は新しい仲間と交流を深める為にその場に残り、僕達は少し奥でモンスター狩り。ダナンさんはかなりストレスが溜まっていたのか、いつもの倍くらいの勢いでモンスターを切りまくっている。
たった2日で見違える様に動きがよくなってるな……キツいなりにちゃんとした指導してたのがよく分かる。
暫く戦闘してティガとダナンさんも暴れてスッキリしたのか満足そうにしていた。




