第30話 戦闘訓練
ダンジョンに戻った僕達は、まず陣形や武器に慣れる為に、第1階層で訓練することにした。
二手に分かれダナンさんとカレンさんは1階層でも少し強めのモンスターが居る地域で連携の訓練。
サトスさんは、前に僕がよくやってた、ゴブリン相手のルーナさん式、多対一戦闘訓練、僕とメインさんはサトスさんから少し離れた場所から遠距離武器に慣れる訓練。
ルーナさんが言うには多対一戦闘は視野を広げるのに向いているらしい。相手の位置と自分の位置を常に把握しておかないと、囲まれて不利になるからだ。
そしてこの訓練に、ゴブリンはかなり適している、ゴブリンは仲間を呼ぶ性質があり、余程圧倒的に倒さない限り逃げないから、どんどん数が増える。今のサトスさんなら、ゴブリン相手に大怪我を負う事も無いだろうから、適度に数を減らしながら戦えば良い訓練になるし、ゴブリンは単純なので二人で居る敵より一人で居る敵を狙ってくるから、まず僕達を狙って来る事はない。
僕達は倒されたゴブリンの血の匂いに誘われてくる他のモンスターにさえ、警戒しておけば良いのだ。
とりあえずメインさんにはティガを守りに付ける事にした。
「じゃあティガ、メインさんの援護は頼んだよ」
「ガウッ」
「アステルは良いの?」
「はい、僕のスリングショットは小回りも効きますし、周りを把握しながら戦うのにも慣れてますから、メインがクロスボウに慣れるまではティガを貸しときます」
「ありがとう。ティガ、宜しくね」
「ガウッ」
僕はメインさんから少し距離を取り、先ずはその辺の石を拾ってゴブリンに撃ってみることにした。
━━暫く練習してみて思ったけど、動いてる相手に当てるのは難しい、威力も物足りない……
当てるのは練習しだいで何とかなるけど……問題は威力だよな、ゴブリン相手で致命傷を与えれないのは厳しいぞ……やっぱりお金ケチらずに弓とかにしとけば良かったな……うーん、威力をカバー出来るもの…………そうだ! 魔力撃を応用してみたらどうだろう?
僕はスリングショットの弾の方に魔力を込めて撃ってみることにした。
サトスさんに当たると危ないので、一番離れてる奴に狙いを定めて撃ってみると、弾はゴブリンから少し外れた場所に飛んで行ったけど、急に曲がってゴブリンに命中。ゴブリンの背中にめり込んだ。
あれ? 何で曲がったんだ?
もう一度さっき、弾が当たって踞っていたゴブリンに向かって撃つと、また今度はさっきと反対側に少し外れ、弾が曲がってゴブリンに命中、頭に当たってゴブリンが倒れる。
うーん、何で曲がるんだろう?
試しに魔力を込めず撃ってみることにした。
また、狙いとは少し外れた場所に飛んで行き、今度は曲がらず、そのまま地面に落ちた。
暫く魔力ありと魔力無しの弾を交互に撃ち続ける。
そうか! 魔力だ、無意識に魔力を操作して曲げてたに違いない!
僕はもう一度魔力を込めて今度はわざとゴブリンから少し離れた場所に弾を撃ち、意識的に曲げてみることにした。
僕の予想通り、弾は曲がってゴブリンに命中した。
やっぱりそうだ、水魔法の時も自分の意思で自由に操れるもんな、慣れればもっと自在に操れるかも……よし、次は問題の威力だな……今のでも少しは威力上がってるけどまだ足りない。それなら弾だけじゃ無くてスリングショットの方にも魔力を込めたらどうなるだろう?
僕はスリングショットの方にも魔力を込めて撃ってみた。
すると、さっきまでとは比べ物にならない早さで弾が飛び、ゴブリンを貫通してそのまま遠くへ消えていった。
凄い! これなら結構使えるぞ。……でも所詮は元が弱い武器だからな……ある程度この魔力操作に慣れたら、弓に持ち変える事も考えよう……
僕は試行錯誤を終え、周りに目を向けてみると、サトスさんは、ひたすらゴブリンを相手に戦況を把握する訓練、そこにメインさんがクロスボウで攻撃……
「馬鹿メイン! 俺を狙うんじゃねぇ! 死ぬだろ!」
「ごめーん! ゴブリン狙ってるんだけど当たらないのよ。上手く避けて」
上手く避けてって……恐るべしメインさん……まあ、これはこれで良い訓練になるかな……?
「サトスさん、メインさん、僕ちょっとダナンさんとカレンさんの方を見てきます」
「おう!」「いってらっしゃい」
サトスさん、怒ってた割に結構余裕あるな……
僕はダナンさん達が訓練している場所に移動した。二人を見つけると辺りにはモンスターは居らず、二人が向かい合って戦っていた。
「何やってんのよ! トロトロしてんじゃないわよ!」
「す、すまん」
「ほら、次行くわよ!」
「お、おう」
連携の訓練だったはず……何でダナンさんの剣術訓練になってるんだろう?
「お疲れ様です、お二人とも調子はどうですか?」
「どうもこうもないわよ。ダナンが弱すぎて連携どころの話じゃないわ」
「す、すまん……」
なるほど、リオンさんに鍛えられてるカレンさんの実力は、もう銀ランク冒険者に匹敵する。三人で前衛やってた時は、サトスさんとカバーしあって、何とかなってたけど、二人でやるとなると厳しい訳か……
たぶん僕達と分かれてから数時間、ずっと、あのキツい口調で責められてたんだろう、ダナンさんの目に全く覇気が無い……
「とりあえず一旦休憩にして食事にでもしませんか?」
「そうね、あまりぶっ続けでやっても効果出ないし、休憩にしましょうか。行くわよダナン」
「はい……」
主従関係が出来つつある……女の人は恐ろしい……
僕達はこの後、ダンジョンと町を行き来しながら、毎日、第1階層で訓練を繰り返した。




