第26話 男のロマン?
ティガが家に来てから25日、ティガも成長し、少し小さめの中型犬ぐらいのサイズになった。
流石はライオネルと言うべきか、この大きさで、もうゴブリンより強い……僕もうかうかしてると追い越されそうだ。頑張らなくては……
昨日からルーナさんとエリーさんは、大規模クエストの為、キリマ村に遠征している。
僕達が斡旋の時遭遇したオーガ。あれの調査の結果、あの場所から東に50km程のスターリット山脈の中腹にオーガの群れが発見され、数から考えてオーガキングが居ると断定されたのだ。
僕達が遭遇したのは、その内の一体、あれでも運が良かったって事らしい……
今回のクエストは、金ランク以上の冒険者限定の危険なクエストなので、僕は同行出来なかった。エリーさんは鉄ランクだけど、ギルドでの扱いはルーナさんと一緒なので特別にクエスト参加を許可されたのだ。そんな訳で、今日から少しの間、ティガと二人だ。
「おはようボス」
「ボス今日はご主人様と一緒なのかい?」
「ボスまた家に遊びにおいで、良い肉用意しとくから」
ギルドに向かっていると、町の人達がティガに話し掛けてくる。
グランセルに来てから僕が休みの日に、ちょくちょく散歩していると思ったら、町のあちらこちらで人助け(本人にはその自覚は無いのだろうけど)をしていた様で、すっかり有名になっている。
「皆さん、いい加減名前覚えて下さい。こいつの名前は、ティガです。ティガ」
「良いじゃないか、ここいらのボス猫なんだからボスで」
「それと猫じゃないですからね? ライオネルってモンスターですから」
「どっちでも良いよそんな事」
どっちでも良いって、あんた……大きくなってから腰抜かさないでよ……?
至る所で足止めされ、面倒なのでティガには部屋魔法に入ってもらいギルドに向かった。
ギルドに到着すると、見覚えのある三人組のうちの1人と、女の子が何やら言い争っている。
「おはようございます、サトスさん、ダナンさん、メインさん、それと……何で居るんです? カレンさん」
「アステル、丁度良いところに来た。サトスを止めてくれ」
「何があったんですか?」
「アステル、久しぶりね」
「お久しぶりですカレンさん」
「アステル、知り合いなのか?」
「はい、以前アタランテで一緒にダンジョン探索したカレンさんです。それで何があったんっですか?」
「聞いてくれよアステル、こいつが1人で立ってたから、一緒にクエストでもどうだって誘ったら、足手まといと組む気はないって言うもんだから、ランク聞いたらまだ鉄だって言うんだぜ? 俺らより低ランクのクセに」
「……カレンさん、先輩冒険者にそれは失礼だと思いますよ?」
「ふんっ! ちょっと早く生まれただけの奴に偉そうにされるのは気に食わないのよ」
やれやれ、この人は相変わらずだな……
「すいませんサトスさん。カレンさんは口は悪いんですけど、根は良い子なので勘弁してあげてください」
「お前が謝る事はないだろ? まあ、そう言うならアステルの顔を立てて、今回は聞かなかった事にしといてやるよ」
「カレンさんも頭下げて、ほら」
「解ったわよ……言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「それで、カレンさん、今日はリオンさん達は一緒じゃないんですか?」
「兄さん達は、キリマのオーガ討伐に行ってるのよ。今回は危ないからって、ここに置いていかれたの」
「じゃあ、僕と同じですね、ルーナさん達もそのクエストに行ってます」
「おいおい、こいつの兄貴って金ランク以上の冒険者なのか?」
「金どころか金剛鉄ランクですよ。リオン・アルアザルドって聞いた事ありますよね?」
「はあ!?」
「ウソ!?」
「マジで!?」
流石に三人とも知ってるよな……
「驚いたな、そんな有名人の妹だったのか……どおりで偉そうな訳だ」
「兄さんは関係ないでしょ!」
「まあまあ、落ち着いて下さいカレンさん、サトスさんもお兄さんを引き合いに出すのは良くないですよ。カレンさんが口が悪いのはたぶん生まれつきです」
「だ・れ・が!生まれつき口が悪いって!?」
「痛い! 痛いですカレンさん、ほっぺたつねらないで!」
「まったく、その失言癖直しなさいよね」
「すいません……」
あー痛かった……ほっぺた千切れるかと思ったよ……
「それで? 何で1人で立ってたんですか?」
「あんたを待ってたのよ。こっちの知り合い、あんたしか居ないし」
「あぁ、なるほどです。じゃあ、一緒にダンジョン探索しますか?」
「うん……宜しく」
カレンさんが少し顔を赤くして目を反らしている。これはひょっとしてツンデレと言うやつなのか?
「良かったらサトスさん達も一緒にどうです?」
「おう、俺達は良いぜ。な?」
「ああ、OKだ」
「宜しくね、カレンちゃん」
「……よ、宜しく」
さっきまで喧嘩してた割には、あっさりと了承してくれたな、良かった。
僕達は、とりあえずダンジョンの15階層まで下りる事にした。地図を頼りに最短のルートで進み、10階層まで到着、休むのに丁度良い湖を発見し、今日はここで休むことにした。
サトスさん、ダナンさんはテントとモンスター避けの魔道具の設置、僕は料理、その間にメインさんとカレンさんは湖で水浴び。
「なあ、アステル」
「何ですか? サトスさん」
設置が終わったサトスさんが、小声で話し掛けてきた。
「ちょっとロマンを求めに行かないか?」
「はい?」
「お前も男なら興味あるだろ? 今日は2倍ロマンがあるし、な、ダナン?」
「うむ、ロマンだな」
サトスさんが親指で湖の方を差しながらニヤニヤし、ダナンさんは少し頬を赤くして頷いている。
何を言ってるんだ? この二人は……命が要らないのだろうか?
「僕は遠慮しておきます。まだ死にたくないので……お二人も止めた方が良いですよ」
「何だよ、ノリが悪いな、男ならロマンを求めろ!」
「うむ」
「嫌です、お断りします」
「ちっ! この玉無しめ! 今日から無しテルって呼んでやる」
「あのね……もう、勝手にして下さい」
「行くぞ、ダナン」
「うむ」
サトスさんとダナンさんは足音を殺しながら嬉しそうに湖に歩いていった。
━━それから数分後
「きゃあーー!!」
「この最低男があーー!!」
「「ぎゃああぁぁぁーーー!!!」」
案の定、見つかった様で、メインさんの悲鳴、カレンさんの怒号、サトスさんとダナンさんの断末魔が聞こえてきた
やっぱりね。絶対こうなると思ってたよ……気にしない気にしない、料理に集中だ。
暫くして悲鳴は止み、無表情のメインさんとカレンさんが戻って来る。
「お帰りなさい、サトスさんとダナンさんは?」
「沈めてきた」
「誰? そんな奴ら居た?」
感情の無い返事が帰ってきた……たぶん本当に殺しては無いだろうけど、これ以上聞くのは怖いので後で様子を見に行こう……
二人に食事を渡し見に行くと━━
サトスさんとダナンさんは手足を縛られ、ギリギリ息が出来る深さに重りを結び付けられ沈められていた……
「た、たふゅけて……」
「あしゅてる……」
ふむ、ここで助けると僕が怒られそうだし……まあ、足も届いてるから心配ないか……
「自業自得ですよ。本当に危なくなったら助けますんで、もう少し反省して下さい」
「「ーーーー!!」」




