第24話 魔力操作の応用
居酒屋での宴会から一夜明け、僕達はアタランテダンジョンに来ていた。今回もリオンさん達と一緒に来る予定だったのだけれど、リオンさん達は二日酔いとやらで動けないらしい。
あの人達の3倍は飲んでいたエリーさんが全然平気そうなのは種族の差なのか、個人の体質なのか、恐るべしだ。
そういう訳で今日は探索ではなく僕の修行を中心にやる事になった。
今回のお相手は、スケルトンパイレーツ。海で死んだ人が亡者になったと言われているモンスター。骨がボロボロの服を着ていて、武器も剣や槍など統一性もなく、サイズも80cm~2mぐらいまで多様で、中には魔法を使う奴まで居る、厄介なモンスターだ。
僕一人で五体相手にするのはちょっと厳しいな、でもこれ位やれないとダメだよな……
「ルーナさん、ティガ預かって置いて下さい」
「…ん、任せ…て」
「今日は弱気な顔は見せぬのじゃな」
「見せたいところですけど、早く強くならなくちゃティガに見限られますからね。じゃあ、行ってきます」
今回の相手は剣2、槍1、斧2だ、先ず一番やりにくい槍から片付けよう。
僕は左手で水弾を作り槍スケルトンに撃ち込む、スケルトンは槍を横に振って水弾を弾き懐に大きな隙が出来た。
透かさず踏み込みヴァーリを抜き切り上げる、案外脆い様でスケルトンは斜めに切れ崩れ落ちた。
直後、左から斧が振り下ろされ、僕は体を捻って盾で受け流し、相手の腕を切り落とし続けて水斬魔法で一体を切り裂く。
「ほう、数日見なかった間に面白い動きをする様になったのう」
「あれは昨日のリオン達の真…似」
「まだぎこちないが、悪くないのじゃ」
「…ん」
よし、ここまでは思い通りの動きが出来てる。あの時のクリュスさん達を思い出すんだ。攻撃、防御、魔法を個で考えるんじゃなく、1つの流れの中で使うんだ。
もう1つ前から考えてた攻撃も試してみよう。ルーナさんの動きだ。ルーナさんは攻撃の時武器だけに頼らず状況に応じて拳や蹴りも使う
でも僕が普通に蹴ったりしてもモンスター相手には力不足だ、なら移動や防御に使ってる魔力操作を攻撃に生かしてみたらどうだろう?
僕はスケルトンに斬り掛かり、態と攻撃を受けさせ、魔力を込めた蹴りを打つ。
僕の予想通り魔力を乗せた蹴りの威力は通常の数倍はあり、スケルトンを後方にぶっ飛ばした。
上手くいったけどこれだけじゃ倒すまでは無理だな、でも隙を作るのに使える。
僕は要所要所に魔力を込めた突きや蹴りを混ぜながら、剣と魔法で残り三体のスケルトンパイレーツを倒した。
「お主もやっと魔力撃に気が付いたのう」
「魔力擊?」
「さっき使っておったであろう? 魔力を込めた突きや蹴りをそう呼ぶのじゃ、武器に込めても同じ効果を発揮するのじゃ」
「そうか、そうですよね、武器に込めるのは考えてませんでした」
「そこに至った褒美に1つ応用を教えてやるのじゃ、見ておれ」
エリーさんはそう言うと近くにあった岩に歩み寄り、軽く拳を撃ち込むと同時に圧縮水爆発魔法を発動した。
「ええ!? エリーさんも出来るんですか!?」
「も、とはなんじゃ?」
「昨日居たクリュス…も、似たような使い方す…る」
「あ奴も魔力操作が出来るのか?」
「たぶん…意識的には出来てな…い」
「ほう、中々才がある様じゃのう」
「あの……僕がやったら腕が無くなりますよね?」
「何故じゃ?」
「爆発の衝撃にどうやって耐えるんですか?」
「耐える? 馬鹿なのかお主は? 耐える必要など無かろう?」
「え? でも衝撃来ますよね?」
「少しは頭を使わぬか、何の為に魔力操作を教えたと思っておるのじゃ」
「………? さっぱりです」
「はぁ……魔法を撃つ方向を外に向ければ衝撃など来ぬであろう?」
「方向? 爆発の方向って操作出来るんですか?」
「当たり前じゃ、見ておれ」
エリーさんは手を翳すと一瞬にして圧縮した水弾を作り、手とは逆方向に爆発させた。
「おおっ! 凄いこんな事考えもしませんでした」
「ついでに言うとお主ら人間は魔法を手だけでしか使こうておらぬ」
「手以外でも使えるんですか?」
「少し考えれば解ることじゃ。魔力を足にも集められるのに足で使えぬ道理はなかろう?」
「確かにそうですね。気が付きませんでした」
「操作を極めるとこんな事も出来るのじゃ」
エリーさんが普通に立つ様にして辺りに視線を巡らせ、次の瞬間、エリーさんの周りに火、水、雷の球体が現れ足元からは土が隆起し辺りの岩や珊瑚を撃ち抜く。竜巻も起こった事から風魔法も使っていることが解った。
全属性魔法同時使用!? 僕は驚きのあまり言葉を失った。
「わざわざ手を翳したりせんでも魔法と言うのは撃てるのじゃ、要は魔力操作とイメージ力、使いようと言うことじゃ」
「僕でも出来ますかね?」
「出来る出来ぬではない、やるかやらぬかじゃ。大抵の事はやれば出来ぬ事はないのじゃ。ほれ見てみい」
エリーさんの目線の方を見てみると、ルーナさんが拳を突き出すと同時にウォーターボムを撃ったり、蹴りと同時にウォータースラッシュを撃ったりしていた。
……もう出来てる……あの人は本当に人間の域を超えてるよね。
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翌日、あまり家を空けていると家族が心配するので、僕達はグランセルに戻ることにした。
「リオンさん、皆さん、お世話になりました」
「アステル、ルーナ、エリー、今度は俺達がグランセルに行くから、また一緒にダンジョンに行こうな」
「はい」
「…ん、待って…る」
「アス君またね」
「アステル、銀に上がるのは私が先だから、いい気になるんじゃないわよ」
「カレンさんは先に青銅にならないとですよ」
「ぐっ……解ってるわよ! 調子にのんな!」
「じゃあ、皆さんお元気で」
「バイバ…イ」
僕達は町の外に出てエリーさんの背に乗り帰路についた。




