第23話 躾
僕とティガの契約の儀式が終わった後、ティガの入手経路を知ったギルドの職員さん達と、旧市街の露店にさっきの商人を訪ねて行った。
町への特定危険生物の持ち込みは、知らなかったで許される話ではない、今回買ったのが僕だったから良かったものの、普通の家庭で買われたら後々大変な事になるからだ。
露店の有った場所に着くと、そこにはもう出店の跡すら無かった。
もう夕方だから店じまいしたのかとも考えられたけど、祭りはまだ1日あるのだ。完全に片付けてしまうのはおかしい、路地を間違えたのかと思い別の路地も見てみたけど、やっぱり店の跡すら見当たらなかったので、翌日もう一度ギルド職員さんが確認してくれると言うことで話は片付いた。
色々とごたついたのもあって、リオンさん達との食事の予定は翌日に変更してもらって僕達は宿に戻った。
僕はギルドで貰った従魔についての本を開き勉強を始める。
従魔契約すると、契約モンスターとの間で意思疎通が出来る様になり、言葉が通じなくても、こちらの考えや相手の考えを理解しあえる様になるらしい、便利な能力だけど相手の恐怖心や悲しみの感覚も伝わるから良い事だけでもないよな。
僕がやらなければいけない事は、先ず強くなる事、仲良くなる事、そして新しい収納魔法を覚える事だ。
今覚えている収納魔法は、物は入れられるけど、生きている物は入れられない。従魔を入れるには部屋魔法と言う魔法が必要になるのだ。
ティガが今の大きさのままなら必要ないんだけどな、3mになったら一緒に暮らすのも大変だし、かと言って外に居させるのも近所の人が怖がるしルームは必須だよね。
さっきから真剣に勉強しているのに、何故か楽しい気持ちになるのはティガの所為なのか?
僕が後ろを振り返ると、ルーナさんがボールを転がし、ティガがそれを追い掛けるという遊びをしていた。
止まったボールにネコパンチして、動き始めたボールをまた追い掛ける。これが将来獅子王になるとは思えないほど愛らしい姿だ。
ルーナさんは二つ目のボールを転がし困惑しているティガを楽しそうに見ていた。
「楽しそうですね」
「…ん、楽しい…よ」
「ティガも楽しいって思ってますよ」
「なら良かっ…た」
僕達は紙で紙縒りを作ってティガの目の前で振ったり、ボールに紐を着けて引っ張り回したり、猫と遊ぶ時と同じ遊びをしてみた。
ティガはどれもお気に入りの様で、夢中になりすぎて壁や柱に激突しながら喜んで遊んでいる。
やっぱり猫だよなコイツ……
翌朝、目を覚ますと何やら妙な臭いが部屋を漂っていた。
僕がベッドから部屋を見回していると、ルーナさんも目を覚ました。
「アステルおは…よ。なんか変な臭いがする…ね」
「おはようございますルーナさん。僕も同じ事考えて部屋を見てました」
「…ん、あそこ…に」
ルーナさんが指差す方向を見てみると……そこにはウ◯チらしき物が落ちていた。
「ティガ! 起きろ!」
僕の一声でティガが目を覚ます。
「ティガ、あれはお前だな」
「ガウ?」
「あれだよあれ!」
僕が指を差している方向にティガが目を向けた。
「ガウッ」
ティガの意識からそうだと伝わってきた。
僕は立ち上がってウ◯チを紙でくるむとティガを連れてトイレに入る。
「いいかティガ。ウ◯チやおしっ◯はここでするんだ。解るか?」
「ガウ?」
「なんで? じゃない、僕達と生活するなら守らなければいけないルールがある。解るな?」
「ガウッ」
「よし良い返事だ、今日はお前に一緒に暮らすにあたってのルールを色々教える。しっかり覚える様に」
「ゥガウッ!」
「アステル、ティガの言葉が解…る?」
「いえ、言葉は解らないんですけど、考えてる事は伝わって来ます。契約の効果ですね」
ルーナさんが羨望の眼差しで僕を見ている。ふふ、ルーナさんの考えてる事も結構解りますよ。
「さて、最初にやる事は宿屋のご主人に謝ることだ」
僕達は宿屋のご主人を部屋に呼んで事情を説明。
「すいません、部屋のクリーニング代は払います。ほらティガも謝って」
「ガウッ」
僕に促されてティガが頭を下げる。
「良いよ良いよ、たまにあることだからね。その分もちゃんと宿代に入ってるから」
「ありがとうございます」
「ガウッ」
ご主人も許してくれたので僕達は祭り二日目を楽しむ為に街へと繰り出した。
今日もルーナさんの食欲は止まる所を知らない。
僕はティガに人間に危害を加えてはいけない事、お店の物はちゃんとお金を払って購入する事等々、一般常識を見せながら教える。
考えが伝わっているのからなのか、ライオネルという種族が頭が良いからなのか、ティガは教えた事をどんどん覚えていった。
「よし、今日はこれくらいにして祭りを楽しもうなティガ」
「ガウッ」
「ドロボー!」
僕達が一段落してゆっくりしていると、一件の出店から服を抱えて走り出した男が居た。
丁度目の前を通ったので僕は男を取り押さえる。
「いいかティガ、こういう悪い奴はこうやって押さえつけても良いからな、でも怪我はさすなよ」
「ガウッ」
ティガは一言返事すると地面に押さえ付けられている男に向かってネコパンチを打ち続けている。
うん、ちゃんと爪を立てずに攻撃してる所を見ると理解したみたいだな。
「なんじゃ、面白い事をしておるのう」
一瞬僕達の上に大きな影が出来たかと思った瞬間、エリーさんが空から下りてきて僕達の目の前に立った。
「お帰りなさいエリーさん」
「エリーお帰…り」
「ただいまなのじゃ。なんじゃ? その黄色いのは?」
「コイツは新しい仲間のティガです」
「ふむ、新しい仲間のう」
エリーさんがティガを見ると、目が合った瞬間ティガがお腹を向けて服従のポーズをとった。
おい! 獅子王……何媚びてんだよ……
「己の立場がよく解っておるではないか、誉めてやるぞ」
「ガウッ!」
ダメだ……完全に気持ちが下僕に成り下がってる……竜族と獅子王の格の違いを見た気がするな。
僕達はドロボーを警備に引き渡して祭りを見て回る事にした。
エリーさんが合流してから町の男の視線は僕達に釘付け……と言うよりエリーさんに釘付け。何度か声を掛けられたけど、エリーさんが軽くあしらっておしまい。
ビンタされたり踏まれたりしてるのに嬉しそうな顔をしている人っていったい……
お昼になり、リオンさんと待ち合わせているカフェに顔を出すと、リオンさん達は既に来ていた。
「こんにちはリオンさん、待ちました?」
「いや、俺達も今来た所だ。ん? 一人増えてるな」
「紹介しますね。僕達のもう一人の仲間のエリーさんです」
「エリーじゃ」
「リオンだ宜しくな」
美人慣れしているのか、リオンさんはこれと言って意識する様子もなくエリーさんと握手を交わして、他のメンバーを紹介していた。
「じゃあ、飲みに行くか」
「ええ!? まだ昼ですよ?」
「酒飲むのに昼も夜もないだろ?」
「酒か、久しく飲んでおらんのう」
「おっ? いける口なのか? 決まりだ行くぞ」
リオンさんの強引な誘いで僕達は、リオンさん行きつけの居酒屋に向かう。
酒盛りは深夜まで続き、途中腕相撲大会が始まりルーナさんとエリーさんの決勝戦でテーブルが砕け、飲み比べが始まりリオンさん達が全員酔い潰れたが、楽しい宴会だった。
全員と飲み比べをしても全く平然としているエリーさん。竜族は酔わないのか聞いてみたら━━
「他の者は知らぬが我は酔った事はないのじゃ」
と、言っていた、エリーさん恐るべし……ちなみに僕とルーナさんはお酒が苦手なので、全く飲まなかった。




