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第18話 昇格

 小鳥の囀りに起こされ、目を開けると何となく見覚えのある部屋にいた。


 あれ? たしかホルメル山でオーガと戦って……何で部屋に居るんだろ?


 僕はゆっくり体を起こし部屋を見回した。窓の外を見てみると……どうやらここはキリマ村の宿屋らしい。


 オーガを倒した所までは覚えてるんだけど、その後の記憶がない。でもここに居るって事は無事に帰って来たって事だよな?


 僕が寝ていたベッドに伏せってメインさんが寝ている。どうやらずっと看病してくれてたみたいだ。僕の隣のベッドにはサトスさんが……ダナンさんはなんで床で寝てるんだ?




「う……ん」


 色々考えてる内にメインさんが目を覚ました様だ。


「おはようございますメインさん」


「んん? あ……おはよ……アステル!」


 メインさんが僕を見るなり大声で僕を呼んだ。


「メインさん、朝からそんなに大声出してると喉やられますよ」


「良かったぁ、目を覚ましたんだね。あの後、丸一日目を覚まさないから心配したんだよ」


「あの後ってオーガを倒した後ですか?」


「そうよ、つねっても叩いても目を覚まさないからどうしようかと思ったわ」


 おいおい、骨折してる人間に何してんの? あれ? 確かオーガにやられて折れてた筈なのに、どこも痛くないぞ?


「アステルそんなに動いちゃダメだよ骨折してるんだから」


 体を動かして確認していると、メインさんが心配そうに止めようとする。


 って、骨折してるの解ってて叩いたのか……


「それがですね、どうも治ってるみたいなんです」


「うそっ!? 私の魔法じゃ骨折までは治せないはずなんだけど?」


「あー! うるせぇな何時だと思って……」


 メインさんと話していると、今度はサトスさんが目を覚ましたみたいだ。


「何時だとじゃないわよ! アステルが目を覚ましたわよ」


「おはようございますサトスさん」


「アステル! ……良かったぁ心配してたんだぞ」


「すいません」


「いや、お前が謝る必要はないよ」


「うあぁっ!」


 今度はダナンさんが目を覚ました。怖い夢でも見たのか起き様にキョロキョロと周りを見ている。


「おはようございますダナンさん」


「ああ、アステル起きたのか」


「はい、お陰さまで、ご心配お掛けしました」


「アステルすまねぇ、俺の所為で……」


 サトスさんが収納魔法から布にくるまれたある物を僕の居るベッドの上に置き広げた。


 そこにあったのは父さんがくれた風切りだった物だった。


「……良いんですよ。サトスさんが無事だったんですから、それより怪我の方は大丈夫ですか?」


 僕は少し悲しい気持ちもあったけど、誰かの命を救う為に壊れたなら良いと思った。きっと今回は死んだ父さんに守られたんだ。


「ああ、アステルに比べたら俺の怪我何て……怪我? あれ? 痛くないぞ?」


「あんたまで!?」


 どうやらサトスさんの怪我も治ってる様で、サトスさんもメインさんも不思議そうにしている。


「何でかしら? 不思議な事もあるものねぇ」


「そんな事は良いんだ。アステル、これじゃ変わりにはならねぇが受け取ってくれないか?」


 そう言ってサトスさんが手渡してきたものは、オーガを倒した神剣ヴァーリだった。


「ダメですよ。これはサトスさんの大事な剣でしょ?」


 僕はヴァーリをサトスさんに返そうとした、けどサトスさんは首を横に振ってヴァーリを僕に押し付けてきた。


「俺はアステルの大事な父親さんの形見をダメにしちまったんだ。形見の変わりにならねぇのは解ってる。でも今俺が出来る報いはこれくらいしかないんだ。頼むアステル受け取ってくれ」


 こんなに深々と頭を下げて頼んでくるサトスさんをみていたら受け取らない訳もいかないよな……


「解りました、大切に使わせてもらいます」


「そうか、良かった」


 僕が受けとると、サトスさんは少しほっとしたような顔をしてベッドに腰を下ろした。


「ところで、僕達ってどうやってここまで戻って来たんです?」


 オーガを倒した後から僕が寝ていたとしたら、誰かに背負われて来たはずだ、サトスさんも怪我をしていたし考えられるのはダナンさんだけ、と、すれば戦えるのはメインさんしかいない、あの場所から一人で戦って戻ってくるのはかなり厳しいはずだ。


「それなんだけど、あの後オーガの死体だけ回収して直ぐに山を降りたのよ。でね、不思議な事に一匹のモンスターとも遭遇しなかったのよ」


「そうそう、登りの時には気付かなかった道があってな、そこを通って降りたら登りの半分の時間で帰って来れたし」


「え? 気付かなかった道って、ここに繋がって無いかも知れないのに通ったんですか?」


「そうだ。不思議だったんだが、全員一致でここだって思ってな。来た道は何となく通ろうとは思わなかったんだ」


 何だそりゃ? 道と言い怪我と言い不思議な事だらけだな……うーん、違和感を感じる……


「でも皆無事で良かったです。ここまで連れて帰ってくれてありがとうございました」


「それはこっちの台詞だよ、アステルが居なかったら俺達今頃あの世だったからな」


「そうだな、クエストは達成出来なかったが、命が助かったんだから良しとしよう」


「そうね。斡旋はまた受ければ良いだけだし、アステルありがとうね」


 オーガが一匹居たと言う事は、まだ居るかも知れないと言う事、僕達は今回のクエストは諦めて、オーガ出現の報告をする為にギルドに戻ることにした。


 グランセルに戻る道中、何度かモンスターに遭遇したけど、オーガを見た後だからか、やたらと弱く感じた。


 神剣ヴァーリの試し切りに丁度良いなとか思って、あの時みたいに魔力を送ってみたけど、今度は何の反応もしなかった。何だったんだろうあの時の力は……


 でも、長さ的にも斬れ味的にも風切りと遜色ないし、あまり違和感無く使えるから慣れるのにも時間は掛からないな。


 ギルドに戻って報告をすると、異常事態と言う事で、後日ギルドから銀~金ランク冒険者の調査隊結成して山の調査に入る事になった。


 流石にオーガの死体を見せたらかなり驚かれ、直ぐに信じてもらえ、無事だった事に驚かれたくらいだ。


 1通り報告を終えて、僕達がギルドを後にしようとした時━━


「皆さんちょっと待って下さい。まだ手続きが残ってますよ」


 ギルド職員のお姉さんに呼び止められた。


「手続き? って何ですか?」


 僕達は顔を見合わせて考えたけど、これと言って何も思いつかない。


「何って、青銅ランク昇格の手続きですよ」


「「「「昇格!?」」」」


「いやいや、だって俺達クエスト未達成だぞ?」


「何言ってるんですか? クエストより遥かに大きな功績あげてるんですから当然の事ですよ。普通鉄(アイアン)ランク四人でオーガに遭遇して、戻って来るなんてあり得ませんからね? 今回のオーガ出現の情報だけで充分に資格はあります」


「お…おおっ」


「「「よっしゃあ!」」」「やったぁ!」


 僕達は再び顔を見合わせて喜んだ。


 テンションあげあげで受付に戻り、ランクアップの手続きをすませ、青銅(ブロンズ)ランクになって初めてのステータス測定を受ける。


アステル

筋力168

瞬発力152

魔力300

生命力236

スキル

賢者の卵、調理師A、食材鑑定A、剣術C、回復魔法D、収納魔法D、回避術C、水魔法C、ー


サトス

筋力198

瞬発力186

魔力152

生命力285

スキル

戦士の魂(ウォーリアソウル)、剛力D、剣術C、収納魔法D、火魔法D


ダナン

筋力228

瞬発力177

魔力166

生命力307

スキル

巨人の力(アトラスパワー)、剛体D、剣術C、収納魔法D、火魔法D


メイン

筋力151

瞬発力154

魔力341

生命力203

スキル

魔法士の魂(マジシャンソウル)、速射D、回復魔法C、火魔法D、雷魔法C、杖術D、収納魔法D


「おおっ! 僕のスキルに解析不能のスキルがある!」


 解析不能スキル。現在発動している人が少な過ぎて解析出来ていない珍しいスキル。良いものか悪いものかは解析出来るまで解らないのである。


「マジか!?」


「見せて見せて」


「本当だな」


 僕達は互いのギルドカードを見せ合い測定室で騒ぎ始めた。


 本当は、ギルドカードをあまり人には見せない方が良いのだけれど、共に死線を潜り抜けた仲間だから良いか。


「おかしい……俺の方がアステルより数値が上なのに何で実践ではアステルが強いんだ?」


「うむ俺もそうだ、強者との戦闘経験の差なのか?」


「魔法もそうよね。私の方が魔力もスキルも魔法士向けなのに何故なの?」


「る、ルーナさん達の教えの賜物ですよきっと……」


 たぶん魔力操作の差だよな……中途半端な知識を植え付けるのは良くないから黙っておこう……決して抜かれたく無いからではない、違うったら違うんだ。


「アステル、また一緒にクエスト行こうな」


「はい、また行きましょう」


 一頻り騒いだ後、僕達はギルドを後にし、また会う約束をして、家路に着いた。



「ただいま」


 家に帰り、僕がリビングのドアを開けると━━


「「「「「昇格おめでとう」」」」」


 ━━母さん達がご馳走を用意して待っていてくれた。


「あれ? 何で知ってるの?」


 今さっき手続き終わったばかりなのに……


「私達が鍛えたか…ら落ちてる訳な…い」


「そうなのじゃ。もし落ちておったら死ぬより辛い修行が待っておったのじゃ」


「うっ……それは勘弁……」



 用意してくれていたご馳走を食べながら、皆今回のクエストについて聞いてきた。僕はあまり心配させたくなかったから、オーガの事は上手く伏せ、簡単だったと説明した。


 食事も終わって一息ついてから、僕は神剣ヴァーリについてエリーさんに聞いてみる事にした。


「エリーさんちょっと良いですか? これなんですけど」


 僕は収納魔法からヴァーリを取り出し、エリーさんに見せると━━


「おおっ! あの時の剣じゃな?」


「えっ? あの時の━━」


「きゃん!」


 あっ、ルーナさんがエリーさんのお尻蹴った「きゃん!」だってあのエリーさんが「きゃん!」って……ちょっぴり可愛いかも。


「エリー、口軽す…ぎ」


「すまぬのじゃ……」


 ん? ああ……


「ぷっ、あはははは!」


 何だそう言う事か……


「ルーナさん、エリーさんありがとうございました」


「な、何の事か解らな…い」


「そうじゃ何の事かのう……」


 白々しく目を反らしてるけどバレバレですよ。まったく、この二人は……

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