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第13話 アレンの初恋

 デイジーが家に遊びに来るようになって数日、僕とルーナさんとエリーさんは、冒険者としての仕事で中々一緒に遊んであげる事が出来ない。


「おはよう、今日も遊ぶの」


 今日も朝からデイジーは家に来た。


「おはようデイジー、僕達は今から仕事だけど、ゆっくりしていくと良いよ。アイリス、アレン仲良くしてやってくれよ」


「うん、勿論だよ」


「任せといて」


 アイリスとアレンは笑顔でVサインしてきた。


「じゃあ行ってきます」


「「「行ってらっしゃい」」」


 僕達はアイリス達に見送られ家を出た。



「デイジーここのところ毎日来てますね、よっぽど(うち)が気に入ったんですね」


「…ん、アイリス達…と、すっかり友…達」


「お主らは鈍いのう」


「え? どういう事です?」


「気付いておらぬなら気にするでない。その内解るのじゃ」


 何となく気にはなったけどダンジョンで余計な事を考えてると危ないので考えないようにしていたら、クエストをこなしている間にすっかり気にしなくなった。



 その日の夜


 コンコンッ


「兄ちゃん、ちょっと良い?」


 食事も終わり部屋でルーナさんとゆっくりしていると、ドアをノックしアレンが入ってきた。


「どうしたんだ? アレン」


「あのね、兄ちゃんとルーナさんにお願いがあるんだ」


「「お願い?」」


「うん、僕に戦い方とお菓子作りを教えて下さい」


 戦い方とお菓子作り? 何だその組み合わせ?


「それは良いけど何でその二つ?」


「…ん、戦いなら任せ…て」


 アレンが少しモジモジして目が泳ぎだす。


「で、デイジーがね、強くて美味しいお菓子作れる人が好きって言ってた……から……」


 なるほど! そう言う事か、今朝のエリーさんの台詞もこの事だったんだな。んー、顔真っ赤にしちゃってアレン初々しいなぁ。


「よし! 兄ちゃんに任せとけ、最高のお菓子作りを伝授してやる」


「…ん、、明日から私…もアレンを鍛え…る」


 こうして、翌日からデイジーには気付かれないようにこっそりアレンの特訓が始まった。


 日中はデイジーが遊びに来るので、僕達は普通に家を出て仕事、アレンもデイジー達と普通に遊ぶ。


 早めに家に帰り、先ずは町の外で基礎トレーニングと、ルーナさん指導の下、僕と剣術訓練。ルーナさんは、まだ小さなアレン相手に僕の時の様なスパルタなやり方はしない。適度に教えている……まあ、あれやったらアレン死ぬよな……なんて事を考えていたら━━


「アステル真面目にや…る」


 ルーナさんに怒られた。


「はい、すいません」


「アレンは筋が良…い、アステルより強くなる…かも」


「本当に?」


 誉められ嬉しそうにしているアレン……に、対し━━


「ええっ!? 本当に?」


 アレンもそっち側の人? ヤバい……もっと鍛えないと弟に超される……


 ━━僕はちょっぴり焦りを覚えた。



 毎日二時間程の訓練の後、家に帰ってお菓子作り、母さんとアイリスも直ぐに僕達の行動に気が付き、進んでアレンにお菓子作りを教えだした。


「料理なら任せなさいアレン、究極のお菓子作りを伝授してあげるわ」


 母さんは今まで見た事無いようなやる気を見せていた。



 母さんは料理が上手い、はっきり言って僕より上手い、アイリスもずっと母さんの手伝いをしているので僕と同じくらいに上手い、お菓子作り……僕より母さん達に習った方が良くないか?


 いやいや、それでは兄としての威厳が……


 家族ぐるみでデイジーには気付かれない様にアレンを鍛える。


 毎朝デイジーが遊びに来る度に母さんがニヤニヤするからバレないか心配だな……


 特訓開始から約60日、デイジーが遊びに来たりアレンが遊びに行ったり二人の仲も順調に進んでいる。


 少し前にエルフ村の外で獣からデイジーを守ったって言ってたし強さのアピールも出来てるみたいだ。


 そして明日。


 アレンはいよいよ特訓して作った最高のお菓子を手に、デイジーに告白すると決意した。


「いよいよ明日だな。大丈夫だ今のアレンは最高に強い男になったぞ」


「…ん、本当に強くなった、頑張…れ」


「お菓子作りももう教える事は無いわ。その辺のお菓子屋さんより上手なくらいよ」


「アレン、頑張るのよ」


 決戦前夜、僕達はアレンを盛り立てた。


「うん、頑張るよ。みんなありがとう」


 断固たる決意を胸に闘志漲るアレン。



 ━━翌朝、デイジーが遊びに来た。


「おはよう、遊びに来たの」


「お、おはようデイジー、き、今日は二人で森で遊ばない?」


「うん、良いよ」


 よし、先ずは第一段階クリアだ、頑張れアレン。


 転送魔方陣でエルフ村に移動するアレンとデイジー、少し間を開けて僕達も追いかける。


「あれ? 母さん仕事は?」


「アレンの一世一代の告白なのよ。仕事なんてしてられないから休んだわ」


「お兄ちゃんだってそうでしょ?」


「まあ、そりゃぁ……ね」


「皆興奮し過…ぎ、後つけてるのバレたらダ…メ」


「そうだね。皆気を付けて、静かにだよ」



 僕達は気配を悟られない様に、こっそりアレンとデイジーの後をつけ、木陰に隠れて見守る。一頻り遊びいよいよアレンが行動に移った。


「で、デイジー、今日はぼ、僕がお菓子作って来たんだ。た、食べない?」


「本当に? やったぁお菓子だぁ、ありがとうなの」


 アレンはぎこちない動きで、昨日作ったお菓子を広げデイジーに渡す。


「んー美味しい、アレンは食べないの?」


「う、うんデイジーの為に作ったんだ。全部食べても良いよ」


「本当に? ありがとうなの」


 本当に美味しそうにデイジーはお菓子を食べている。


「あー美味しかった、ごちそうさまなの」


 食べ終わったデイジーは、余程美味しかったのか、アレンに最高の笑顔を見せていた。


 よし! ここだアレン。


「あ、あのデイジーに話したい事があるんだ」


 アレンは意を決して立ち上がりデイジーの正面に立つ。


「なぁに? アレン」


「僕は毎日特訓して強くなりました。お菓子作りも出来る様になりました。僕はデイジーが大好きです! 僕とお付き合いして下さい!」


 顔を真っ赤にして告白したアレンは、目をつむり頭を下げ手を前に出してデイジーの返事を待った。


 よっしゃあーー! よく言ったあ!


「ありがとうデイジーもアレンの事大好きなの」


「本当に!?」


 ぃやったぁーー!!



「でもね、それはお友達としての好きなの」


 あ、あれ?


「アレンはとっても優しいしカッコいいとおもうの。でも、デイジーは年下の子の事を男の子としてはみれないの」


 おやぁ? なんかおかしいぞ?


「だからごめんなさいなの。これからもお友達でいて下さい」


「え? と、年下……って? デイジーって僕より年上だったの?」


「うん、今16歳なの」


 ええっ!? 僕と同い年?


 僕が無言で一緒に来ていたルーナさん達に顔を向ける母さんとアイリスも驚いている様だ。


「そ、そう言えば年齢聞いた事なかったね。と言うより私より年上って……信じられない」


「…ん、エルフの年は見た目よ…り上な事が多…い」


「やはりこうなったのう、前に言ったであろう? お主らは鈍いのう」


 小声で話す僕達を、エリーさんが呆れた様に見下ろし言った。


「え? 鈍いって……デイジーがアレンに気があるんだと……」


 誰もが驚きを隠せないでいた。




「デイジーね、好きな人が居るの」


「す、好きな人?」


「うん、今日はずっと見守ってくれててとても嬉しいの」


「え? どこに?」


 アレンがキョロキョロ辺りを見渡す。


「あそこにいるの」


 デイジーが指差すとそこには……


 あれ? 僕達?


 デイジーは森の民エルフ。辺りの気配には敏感なのだ。


 アレンも僕達に気付いた様だ。


「も、もしかして?」


「そうなの、デイジーはアステルが好きなの」



 ええー!!? 聞いてないよぉ!?


 固まる僕を見て、エリーさん以外の全員があちゃーと額に手を当てる。


「じゃろうのう」


「え、エリーさん、ずっと気付いて?」


「それは解るじゃろう? 1人不安な時に声をかけて、家族や村まで救った男じゃぞ? デイジーの中では英雄じゃろう。お菓子作りが上手いと言う点で気がつかんかのう?」


「で、でも村を救ったのって、ルーナさんとエリーさんですよね?」


「お主も居ったじゃろう? 村に着くまでのモンスターはほとんどお主が倒したのじゃ」


 そ、そう言えばそうだよな……いやいや、そうだとしてもあの見た目で16とか思わないし、そもそも女の子として見れないし……



「うぅっ……兄ちゃんのバカーー!!」


 アレンが泣きながらエルフ村の方に走っていった。


 ええー!!? 僕悪くないよね?


「アステル今日は本当に嬉しかったの」


 デイジーがゆっくり歩いてきて僕の手を握り、頬を火照らせる。


「え? いや、あの……」


「我は帰るからのう」


 エリーさんはさっさと家に帰っていった。


「さあ、アレンが心配だし私達も帰るねお兄ちゃん」


「ええっ!? ちょ━━━」


「アステル頑張…れ」


「ルーナさんまで?」


「じゃあ、ゆっくりね」


「か、母さん?」


 ルーナさん達はそそくさとその場を立ち去る。


 いや、皆助けてよ、この状況対応出来ないよ? 僕……



 この後3日程、アレンは口をきいてくれなかった。

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