第11話 家族旅行最終日
カラコに遊びに来てもう7日、最初の3日間は色々あったな。
闘技場で試合してからこっち、やたらと色んな人に話しかけられ、ちょっとした有名人気分を味わえたのは良いのだけれど、宿屋以外でルーナさんや家族とゆっくり出来ない。
あの後、グウェンはその日の晩に僕を逆恨みして、ゴロツキ雇って襲って来ようとしたけれど、それを読んでいたルーナさんとエリーさんに返り討ちに会い、その後エリーさんに何処かへ連れていかれた。
明け方に帰って来たエリーさんにどうしたのか聞いてみたら
「ちょっと魂に恐怖を刻み込んでおいたのじゃ」
とか言っていた、怖いもの見たさと言うか、何をやったのか気になったので詳しく聞いてみると
「一人ずつ順番に━━━━を━━━━して━━━━して、散々━━━を見せつけた後グウェンに━以下略━したのじゃ」
と薄笑いしていた。
聞くんじゃなかった……吐きました、ええ、吐きましたよ。話を聞いただけで……竜族の怖さを知りました。思い出すとまだ吐き気がします。
そんな訳で今日は最後の休日、皆はもう一度海を満喫すると言うので、僕はルーナさんと二人で町から少し離れた静かな海岸を、森に向かって散歩する事にした。
「たまにはこうやって皆でゆっくりするのも良いものですよね」
「…ん、楽しかった。私もこういうの…は初めてだったから、来れて良かっ…た」
「また皆で来ましょうね」
「…ん」
何気ない会話をしていると、森の方から子供の泣き声が聞こえてくる。
「あれ? あっちの方から子供の鳴き声聞こえません?」
「…ん、聞こえる迷子か…も」
町とは反対にある森で迷子? 子供が一人で町を出るのは考え難いよな?
少し怪しさはあるものの、本当に子供が居たら大変なので、取り敢えず行ってみる事にした。
声を頼りに探していると、森に入って数十mほどの場所で一人のアレンと同じ年頃の少女を見つけた。
「君どうしたの? 迷子? お父さんかお母さんは?」
僕は泣いている少女に近付き声を掛けた。あれ? 何だろうちょっと違和感が……耳が尖ってる?
少女は銀色の髪、青い瞳で、透き通るような白い肌をして、見た目は人間の美少女という感じなのだが、耳の形が明らかに人ではない。
僕達に気が付いた少女は怯え僕達から距離を取り、森の木にしがみついてさっきより激しく鳴き始めた。
「エルフだ…ね」
「エルフって? あの物語とかに出てくるエルフですか?」
「…ん、そのエルフこんな町の近くで見るのは珍し…い」
エルフ族、森の妖精とも呼ばれ、森に住み森と共に生きる長命な種族、魔法を得意とし、薬学に長けた優しい種族。
「怖がらなくても大丈夫だよ、何もしないから」
安心させる為に優しく声を掛けたけど一向に泣き止む気配はない。
こういう時は無理に話しかけてもダメだな、小さい頃のアレンと一緒な感じがする。確か母さんが付かず離れずの距離で、目線を外してじっとしてれば警戒が解ける、って言ってたよな。
僕はルーナさんと女の子から視線を外し、近くの木に持たれて座って待つことにした。
暫く待っていたが、やることがなく暇だったので、いつの間にか二人して居眠りをしてしまった。
ん? 何だろう、誰かがほっぺたつついてる? ちょっとくすぐったいかも……
僕がうっすら目を開けると、先程のエルフの少女が、きょとんとした顔で僕の頬をつついている。
「ふあー、おはよう落ち着いた?」
少女に話し掛けると、少女はビクッとして後退りする。
僕は笑顔で接してみた、警戒は解かないけど少女は僕の目をジッと見つめている。
暫く互いに見つめ合っている状況が続いていると、突然大きなお腹が鳴る音が聞こえてきた。
少女は恥ずかしそうにお腹を押さえ僕を見ている。
「お腹空いてるの? ちょっと待ってね」
僕は収納魔法からルーナさん用に作っておいたお菓子を取り出し━━
「食べる? 甘くて美味しいよ」
手のひらにお菓子を乗せ少女の方に手を伸ばした。すると再び少女がお腹を鳴らす、しかし警戒して寄って来ない。
「大丈夫だよ、変なものは入ってないから……はむっ」
僕はお菓子を半分に割り片方を美味しそうに食べて見せた
「んー美味しいなぁ」
美味しそうに食べている僕を見て、我慢出来なくなったのか少女はゆっくり近寄って来る。
僕が残った半分のお菓子を手のひらに乗せ、少女の方に手を伸ばすと、少女は素早くお菓子と取り、元居た場所に後退る。
少女がお菓子を食べると、唾液が一気に吹き出たのか、頬を押さえぎゅっと顔をしかめた。
続けて残りのお菓子を頬張り頬を押さえ転げ回る少女。少しして少女は起き上がり僕の顔をジッと見つめている。
「まだ沢山あるよ、食べる?」
激しく首を縦に振る少女
僕は収納魔法からありったけのお菓子を取り出し、地面に並べて見せた。
少女は足早に近付き、次々と口一杯にお菓子を詰め込む
「けほっけほっ!」
喉に詰まらせたのか噎せ返す少女。
「急いで食べるからだよ、誰も取らないからゆっくりお食べ」
僕は収納魔法から水袋を取り出し少女に渡す。
「…ん、アステルおは…よ」
目を覚ましたルーナさんが眠そうに目を擦り起き上がる。
「おはようございますルーナさん」
「泣き止んだみたいだ…ね」
お菓子を食べている少女を見たルーナさんのお腹が鳴る。
「ルーナさんも食べます?」
「…ん、大丈夫、後で良…い」
ルーナさん軽く首を横に振ると、少女はお菓子を1つ手にし、ルーナさんに渡そうとしている。
「…ん、ありがと…う」
ルーナさんは差し出されたお菓子を受け取り一口食べる。
「美味し…い」
お菓子を食べるルーナさんを見て微笑む少女、すっかり警戒は解けた様だ。
「君、名前は?」
「デイジー」
「お父さんかお母さんは?」
デイジィは首を横に振る。
「何処から来たの?」
デイジーは再び首を横に振る。
「んー、どうやってここに来たか解る?」
「お母さんがね、魔方陣でね━━」
ぽつりぽつりと話し始めるデイジー、どうやらデイジーが居た村が魔物に襲われ、デイジーを守るために咄嗟に母親が転送魔方陣で飛ばした様だ。
「大変だったね」
僕は何とも言えない心苦しさに襲われデイジーの頭を撫でた
「一人逃がしたって事は村はもう……」
「村が全滅したとは思えな…い」
「どうしてですか?」
「エルフは強…い、並みのモンスターに…は負けな…い」
「でも子供を逃がしたって事は……」
「…ん、急いだ方が良…い」
互いに目を合わせ頷く
「デイジーお兄ちゃん達が何とかするからね」
「本当に? 良いの?」
僕がデイジーに視線を合わせると、デイジーは目に涙を溜めて僕の目を見る。
「勿論だよ」
「…ん、任せ…て」
「でもどうやって村を探したら良いんですかね?魔法で飛ばされたって事は、どの方向にあるかも解らないですしね」
僕達は暫く考えたけど方法は思い付かなかった。
「…ん、こういう時はエリーに聞…く」
「そうですね、じゃあ早速エリーさんの所に行きましょう」
僕達は一旦森を離れ、デイジーを連れてエリーさんの所に相談しに行った。
「ふむ、転送魔方陣を使ったのならばその娘が出て来た魔方陣を探せばよい、魔力の痕跡を辿れば村に着くじゃろう」
エリーさんは事も無げにあっさりと解答をだしてくれた。
「流石は年の功、エリーさん伊達に5000年も生きてな━━━」
「年の……なんじゃと?」
エリーさんが心まで凍りそうな冷たい目で僕の言葉を遮り、顔面を鷲掴みにしてきた。
「んぎゃああぁーー!! ごめんなさいごめんなさい失言でした、エリーさんは若くて美しぃぎやああぁーー!!」
エリーさんの爪が少しずつ僕の顔にめり込む、激痛のあまり必死に体をバタつかせる振り解こうとしたが、あまりの力強さで解けない、暫く罰を与え続けられやっと離してもらえた。
僕の顔にはエリーさんの指型がくっきりついて、血を滴らせていた。
デイジーはその光景を見てガタガタ震えている
「デイジー怖がらなくて大丈…夫、あれはアステルが悪いだ…け」
ルーナさんがデイジーを抱き上げ頭を優しく撫でている。
「ぐすっ……エリーさん、その魔方陣探すの手伝ってもらって良いですか?」
「そうじゃのう、あまり時間も無さそうじゃし協力してやるのじゃ」
母さん達に事情を説明し、僕達はデイジーと出会った森へ向かった。
この話を読んでエリーさんがやった魂に恐怖を刻み込む為にやった事の内容が気になる方へ、説明するのは難しいので僕(作者)が大好きな漫画に登場するある柔術の達人大先生の言葉を借りて言うならば
「あなたが想像する酷い拷問を考えれるだけ考えてください」
「考えましたね?」
「そんなものは天国だ!!」
以上です




