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第八話 丘へのピクニック

「またお時間頂いていいですか?」

「もちろんです。それで、その斧を取り出したときに宝箱の底に数字があったんだけど何かわかりますか?」


 トビアスさんは、しばらく考えていたけれど、考えつかなかったようで。

 

「数字? 聞いたことないですけど」

「何かの印かカウントですか?」

「カウント? よくわからないけどボスは1日経つと復活するんですよ」


 あぁ、24時間で合ってたっぽいと私は頭を抱えた。


「復活するということは、いつまで経ってもダンジョンがなくならないのではないですか? 危なくないの?」


 魔王はいないの? 魔物と共存する世界なの?

 

「そうですねぇ。資源ではあるのでいいんじゃないですかね。冒険者もいますしね」


 そういう世界なのね。複雑な感情がそのまま出てしまって、表情が隠せない。


「大丈夫ですよ。ミコさんは優しいですね」

「いえ、たぶん、世間知らずなだけなのです。無知ついでに薬草採取について教えてください」

「薬草! クエストを受けますか?」

「いえ、薬草が欲しいのです。錬金を……してみたくて……」


 声が尻つぼみになる。まだ試してないから自信がないのだ。トビアスさんは、驚いた顔をしたものの、「待っててください」と一度部屋を出ると何か紙を持って戻ってきた。


「初心者向けに作られた地図です。図解の薬草と危険度が書かれているので役に立つと思います」


 優しいトビアスさんに感謝し、ありがたく地図を受け取った私とリラちゃんは、ギルドを出たあと銀星亭に戻った。そしてバスケットに敷布と食べ物を入れたものを用意してもらう。


「いってきまーす」


 リラちゃんはニコニコだ。バスケットはストレージに仕舞いたかったけれど、ここはピクニックと思って片手で持ち、もう片方の手はリラちゃんと繋いだ。


 結局、地図を見て丘の方に行くことにした。そちらの方が近い上に景色も良さそうだから。子供の足にはキツイかもしれないけれど1時間ほどで丘についた。


「ミコおねぇちゃん、気持ちいいね〜」


 丘の上まで来ると、元気が戻ったらしいリラちゃんが、息を吸ってから大きな木に駆け寄って行った。この木がベルツリーなのね。よく見ると蕾のようなものと釣り鐘型の花がいくつか見えた。

 かわいい……

 満開になるときっともっと綺麗ね。


 私達は木の根本に敷布を広げて、持たせてもらった飲み物とパンを出した。


「歩いたあとは、余計に美味しいわね」

「うん! 美味しいね」


 パンは小さめのロールパンに、卵とハムと葉野菜が挟んであって、小さな手にも持ちやすく食べやすい。コップに注いだ果実水も飲む。薄めのレモネードのようで汗をかいた身体に染み渡るよう。


「食べ終わったら薬草を摘むの?」

「そうよ。手伝ってくれる?」

「うん!」


 まずは見本の薬草を見つける。『薬草』という名の草はヨモギのような姿で、丘の周りのそこかしこに生えていた。


 どれくらい必要なのかしら? 私は隙を見てストレージを使うとして、バスケットにいっぱいあればいいわね。


「バスケットにいっぱい摘んだら帰りましょう」

「はーい!」

 

 バスケットに大判のチーフを敷き、そこに摘み取った薬草の葉を入れながらおしゃべりをする。


「帰りにお菓子屋さんに寄る?」

「よるー!」

「リラちゃんはどんなお菓子が好き?」

「一番は、お花のクッキー」


 ギルドで出してもらったジャムクッキー。可愛かったわね。


「それからねー、サクサクの丸くて白いクッキー」


 白いクッキー? メレンゲかしらスノーボールクッキーかしら。


「それとね、おっきいくまさんのアメ」

「くまの形をしたアメがあるの?」

「うん!」


 見てみたいなぁと思いながら、ふと気づく。


「リラちゃんはチョコレートは食べないの?」

「チョコレート?」

「うん、茶色くて甘いのよ」

「食べてみたいなぁ」


 もしかしてチョコレートはないのか、とても高いのかしら。それか、名前が違う?


 そんなことを考えたりしつつ薬草を摘んでいると、あっという間にバスケットがいっぱいになった。

 生はかさばるわよねと納得しつつ切り上げて、元来た道を戻ることにした。


 先日行ったケーキ屋さんに寄る。ケーキ以外にもお菓子が色々あったけれどジャムクッキーはなかった。


「ジャムが乗ったクッキーってないんですか?」


 聞いてみると、店長さんは驚いていた。


「おやまぁ。あれはジャムにする果実が希少で、作ってもこのような街では高くて売れないんですよ」

「え!? そうなんですか?」


 ギルドのお茶うけに出てきたから気にしてなかったけれど、あれ、とても高かったんだ。


「じゃあ白くて丸いクッキーとくまのアメはありますか」

「リラちゃんの好きなやつね。ありますよ」


 クッキーを詰めてもらって、アメは棒がついていて思ったより大きかったので、リラちゃんの手に渡された。


 ケーキの並ぶ棚を見ても、チョコレートらしきものはなかった。怪しまれてもいけないので、聞くのはやめることにした。


 そうして銀星亭に着いてしばらく、リラちゃんは電池が切れたように眠ってしまった。


 さあ、これからは、部屋に戻って錬金の時間です。

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