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第五話 アトリエ・リゼット

 教えてもらった装備を扱う店『アトリエ・リゼット』にやってきた。動きやすい服だけでなくて、武具も置いてるらしい。


 ドアを開けると、意外にも妖艶なお姐さんが迎えてくれた。オレンジの髪に琥珀色の瞳、アラフォーくらいに見えるけど、美人さんだ。


「初めて見る顔ね、いらっしゃい」

「この街に来たばかりで、服屋さんでここを教えてもらいました」

「なるほど。この店は女性向けの冒険者用品が揃えてあるものね。私はリゼット。さぁ、あなたの戦闘スタイルを教えて?」

「戦闘スタイル?」


 私は困って、うっかりリラちゃんを見てしまった。リラちゃんも私を見る。


「とりあえずはギルドカードを見せて」


 リゼットさんにカードを見せると、なるほど? と裏返した。彼女が呪文を唱えると浮かんできた文字を見て、ひどく驚いていた。いや、私も驚いてるけど。


「ちょっとアンタ! 全属性使えるのかい!?」

「使えるっていうか、それは適性だけなので使ったことなくて。それより、そんなことわかるんですか!?」


 私が言葉を返すと、誰にでも見れるわけじゃないけど、情報が入っているのだと教えてもらった。


「まずは聖魔法での攻撃かなぁと思うんですけど、服装からダンジョン向きにですね……」

「ダンジョンに行く気なのかい?」

「はい。その方が効率がいいだろうとガリアーノさんが教えてくれたので」

「ギルド長のお墨付きか。剣とかより杖かな? ローブも要るね。予算はどれくらいなんだい?」

「うーん、金貨3枚ならどうかな?」

「よし、選んであげよう」


 そうしてリゼットさんは、歩きやすそうな靴、カフェエプロンやミニスカートみたいな腰を覆うものとスパッツのようなパンツ、光沢のある紺のローブと銀色の短杖を並べてくれた。

 

「ブラウスは今着ているようなもので充分だし、そのぶん良いローブを選んだよ。簡単な防御魔法と魔法効果アップが付いてる。その杖は効果アップだけね」


 ローブの裾には銀の糸の刺繍なのか、素敵な模様が広く縁取ってあった。飾りなのかこれが魔法なのかわからないけど。

 

「魔法が付与されてるんですね、すごい」

「その予算だと短剣もつけられるけどどうだい? 護身用にもなるし、ナイフのように使えて便利だよ」

「じゃあ、それもよろしくお願いします」


 そうして、ストレージから金貨を出すと、そんな魔法も持ってるのかいと驚かれてしまった。


「何かあれば相談においで」

「ありがとうございます。まずはC級ダンジョンに行ってみます」


 ダンジョンでどれくらい稼げるかわからないけど、思い切って大金を出した価値があるはず。明日から頑張ろう。


 帰ろうと思ったときに、店の小物の棚の端にきれいな花飾りがあった。


「これは……?」

「お守りみたいなものだけど、髪飾りに作ってあるんだ」

「リラちゃんに付けてみても?」

「いいよ。確かにもしものときの防御にもなるから、子供のお守りにもいいね」

「かわいい!」


 リラちゃんに花飾りを付けるととても似合った。


「こちらも買います」

「さっきのオマケにしとくよ」

「でも……」

「商売のヒントをもらったから、いいんだよ」

「ありがとう」


 ぱちくりしながら様子を見ていたリラちゃんが「ミコおねぇちゃん、ありがとう」と笑ったのでしあわせな気持ちになった。


 そうして私達は銀星亭に帰った。洋服は届けてもらうようにしたけど、リゼットさんのところで買ったものは持って帰ってきたので大荷物だ。


「いっぱい買ったのねぇ」


 マチルダさんが目を丸くしたあと、リラちゃんの髪飾りを見て驚いた。


「髪飾り! リラがわがまま言ったのかしら、ありがとうございます」

「いえ、オマケでもらったんですよ。可愛いでしょう」

「えぇ、でもなんだか魔法を感じる気がするわ」

「わかるんですか? お守り程度の防御魔法が掛かってるらしいです」


 マチルダさんは驚いて恐縮してしまった。オマケは本当だけどな。


「リゼットさんのところで買い物したんです」

「そうだったんですね」


 マチルダさんと話していると、リラちゃんが楽しそうに言った。


「ミコおねぇちゃんは、ダンジョンに行くんだって。リラも行ける?」


 しまった! とその場の大人は凍りつくのだった。


 翌日は皆がまだ寝ている早朝、日の出とともにダンジョンに向かった。リラちゃんを置いていく言葉が思いつかなかったからだ。


「ごめんね、リラちゃん」


 そして、たどり着いたダンジョン付近には、なんと魔物が溢れていた。お行儀よくダンジョンの中にいるだけじゃないんだ。


「ホーリーアロー」


 光の矢を次々に放つとあっという間に、魔物が消えた。魔物の数と同じくらいに見えるたぶん魔石と、ドロップ品? なんだか落ちてるアイテムを拾った。魔物は影も形もないけどそういうものなのかな?

 思ったのと何か違って、首をひねった。


 そうして、いよいよダンジョンの中に入る。新たな魔物が出てきた。属性とかわからないので、とりあえず聖魔法で押していく。


 敵の数が多くなったので、範囲攻撃の魔法に切り替えた。


「ホーリーシャワー!」


 魔物の群れが光に包まれ一掃される。なんだか、すっきり。

 それにしても、やっぱり皮も何も残らないわ。魔石が残ってるからいいのかな? ドロップ品を拾いながら、先を進んだ。魔物の死体を見なくていいのはありがたいけど、魔物の素材ってどれのことだろう?

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