第四話 王都から来たミコです
ガリアーノさんは、ステータスを見て少ししか驚いた顔をしなかったけど、別に珍しいことじゃないのだろうか。立会人としてもう一人部屋にはいたので、その人を見ると驚愕の表情をしていた。
「すごい! 全属性に適正のある人を初めて見ました!」
「トビアス、このことは内密に。守秘義務を守ってください」
「あ、はいっ! 大丈夫です」
トビアスさんは、緊張しきった顔で答えていた。
「ミコさんは、素晴らしい適正をお持ちだけれど、決まりなのでランクはEから始まります。いいですか?」
「はい」
「掲示板を見てクエストを受け、その結果を積み重ねてランクを上げていくのですが時間がかかります」
「あ、はい」
話の先が見えなくて、間が抜けた顔をしたと思う。
「魔物を狩って素材を売るのが、日銭も稼げて、ランク上げにも繋がると思います。危険な方法に見えますが、ミコさんのステータスなら大丈夫でしょう」
「……はぁ」
「領内にはダンジョンが三つあって、C級、B級、S級です。ミコさんならC級から始めても問題ないでしょう」
「……ダンジョン!」
私はその言葉にときめきを覚えるのだった。
「ミコさんは、今どれだけ魔法が使えますか? 指導者が必要ですか?」
「えっと、いえ。自己流でやってみます」
「そうですか、ではギルドカードを作ってきますので、しばらくお待ちくださいね」
ガリアーノさんは、静かに席を立ち、おとなしくしていたリラちゃんの頭を撫でて部屋を出て行った。
私もクッキーをひとつまみしつつ考えた。ダンジョンかぁ、まずどんな魔法が使えるか後で確認しよう。
「ミコおねえちゃん、お話し終わった?」
「話はほとんど終わったけれど、カードが出来るのを待っているわ」
「あのキラキラのやつね。お客さんが持ってるの」
キラキラのカードなのかぁ。出来るまでウキウキしていたけれど、Eランクのカードはキラキラしていなくて残念だった。
「どれくらい頑張るとキラキラになるんですか?」
「ですか?」
思わず私とリラちゃんで、ガリアーノさんに勢い込んで聞くのだった。それから、何かあればいつでもと言ってくれたガリアーノさんからダンジョンの地図を貰い、その日はギルドを出た。
「クッキー美味しかったね」
歩きながらそんな話をする。
「この街には他にどんなお菓子があるの?」
「お菓子屋さんに行く?」
「うん、行ってみたいわ」
そうして、パン屋とケーキ屋のある通りまで来た。
「このパン屋さんは、いつもお届けしてくれるところなの」
「そうなの、あの美味しいパンを焼いているところなのね」
「うん! となりはケーキがあるの。おばあちゃんのケーキもおいしいけど、ここのはクリームがのっててサンカクなの!」
「クリーム!」
女将さんの焼いたマドレーヌのようなケーキを思い出しながら、頷いた。
「あとねあとね、キラキラしたアメもあるの」
「それは寄らなくちゃね」
私達はケーキ屋の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。おや、リラちゃん、来ていたのかい」
「うん! こんにちは」
「こんにちは。こちらは……」
「ミコおねぇちゃん!」
元気よくリラちゃんが紹介してくれる。
「王都から来たミコです。今は銀星亭にお世話になっていて、この街で暮らしていく予定です」
「そりゃあ、よろしくね! 甘いものが食べたいときには、うちに寄っておくれ」
私は笑顔を返した。それから、リラちゃんと選んだクリームの乗ったケーキを五つと、飴の小瓶を買って銀星亭に戻った。
ケーキを見た女将さんは驚いたけれど、完治祝いとギルドカードを作ったお祝いと言うと、お茶の準備をしてくれた。
ケーキと紅茶のささやかなお祝い。これから私の冒険者生活が始まるのだ。
マチルダさんは電報では問題があるからと、速達で手紙を出していた。少々値が張るが間違いないだろう。旦那さんのお迎えが来るまでここにいるそうだ。
リラちゃんがいつまで居られるかわからないけど、それまでは一緒に遊ぼう。
部屋に戻ると、静かにステータスオープンと唱える。初めての魔法を使ってからロックが一つ外れたのか、魔法の辞典らしいウィンドウを見つけていた。詠唱辞典みたいなものだ。キュアやヒール以外にも攻撃魔法がある。
攻撃魔法なんて、どこか広いところで試さないと危険よね。間違っても部屋の中でできることではない。一通り魔法をチェックしてウィンドウを閉じた。
毎回ウィンドウを開けて見るのも面倒だから、使いやすい詠唱は紙にメモしたいなと思って、翌日は買い物に行くことにした。
生活必需品も足りない。買い物に行ける予算があることを改めてアルベルトさんに感謝した。
リラちゃんに案内してもらって、文具屋に行った後、服屋にも行った。上等な服はオーダーだけど、普段着は中古やそれらしいサイズで作った既製品があるらしい。
店の人に相談しながらガーランドらしい服を選んでもらう。
「ミコおねぇちゃんには、このもようがにあうよ」
素敵な小花の縁取り刺繍のブラウスを見せられて、派手ではと驚いたけれど、この街では定番らしく、ブラウスとスカートを買うことにした。宿まで届けてくれるらしい。
ダンジョンに向かうときの服を相談すると、装備を扱う店をおすすめされた。




