第二十話 Cランク冒険者
「ボス討伐、ランクアップおめでとうございます」
「ありがとうございます!」
ギルドに行くと、予想通りトビアスさんが対応してくれた。ボスを倒したことを確認してもらうと、すぐにランクアップの処理がなされた。
ボスを倒したことが、どういう仕組みかギルドカードに記録されていたのだ。そして、私達はまだパーティーを組んでいないので単独討伐と認められた。
パーティー登録は、まあ正直言うと何も考えてなかったのとバタバタしていて、そういうことを思いつかなかったのだ。アルの考えは知らないけれど。
これで私もCランク。ホクホクと締まりのない表情になっているのが自分でもわかる。
「強さとしては、まだまだ上なんでしょうけど、経験が少ないですからね。一つずつのランクアップで申し訳ない気持ちです」
トビアスさんが、肩を落として話してくれた。
「パーティー登録をしてもいいだろうか?」
「え? あ! もちろんです」
トビアスさんも、私達がパーティーの登録をしていないことに、改めて気づいたみたいだった。
「そういえば、個別の戦歴でしたね」
「A級のダンジョンがあれば、単独のまま向かうんだが、近くにないしな」
「ガーランドだとS級になっちゃいますね」
アルは気づいてたー! パーティーだと一人で倒しても、二人で倒したことになったのかもしれない。
「魔石などの鑑定はまたお時間いただきます。ボスの魔石も売られるんですか?」
「ん? 問題あったか?」
「いえ、宝石のように使われる方もいらっしゃるので」
アルは私の顔色をうかがってから、水色の石をじっと見つめた。
「緑色なら良かったんだが……」
トビアスさんは、それを聞いてニッコリ笑い「かしこまりました」と。
遅れて意味のわかった私は、カッと赤面するのだった。アルの瞳は緑色なのだ。
ギルドを出るとアルは宝飾店に行きたいと言い出した。さっきのやり取りのせい!?
「もう夜になるし……」
「わかった。明日、付き合ってくれ」
そういえば、習慣を知らなかったけれど、とても慌ただしかったし、指輪もなかったわね。
「それから、部屋を移るか引っ越ししたいな」
歩きながらさり気なく、でも、もじもじとアルが言うので少し笑ってしまった。
「女将さんに言うの、ちょっと恥ずかしいね」
「すぐ言わなかったのを、愚痴られるかもしれないけど」
女将さんの反応を想像して小さく笑う。そしてツインの部屋について考えてみた。高級ホテルのスイートみたいに、いくつも部屋があるわけじゃないのよね。
「お互いの荷物もあるし、ツインの部屋に二人で住むのはちょっと嫌かな」
「……そっか……」
アルの声がとても残念そうに沈んだ。夫婦なのにダメだったかな。そう思ったとき……
「じゃあ明日、物件も見に行こう。建てたかったけれど、まずは引っ越せるところで」
アルが引っ越しを提案してきた。
「……うん、わかったよ」
辺境伯家の離れと言われても困るし、一緒に見に行けるときに行こう。出来る限り普通に暮らしたいよね。
「そういえば、王都は大丈夫なの?」
「昨日、父上がガーランドを発ったんだよね。会議があるみたいだ」
「そこで、王太子が変わるのかな」
「どうだろうな」
王太子は、「薹が立っている」と年増扱いしたこと許してないからね。国王陛下の体調も心配だけど、もう関係ない話だし。
「ミコがAランク冒険者になったら、陛下から指名依頼がくるかもな」
「不穏な話ね!?」
「まあ、その辺、兄貴にも聞いてみるよ」
その日の銀星亭の晩御飯はハンバーグだった。おじさんの作るハンバーグもジューシーで美味しい。
女将さんとカルメ焼きやクッキーを作ったときに、おじさんに「料理で作れるものはないのか」と聞かれたので作って見せたのだ。使ったのは牛っぽい肉だったけど詳しく聞くのはやめた。多分名前が違うだけで牛だと思う、うん。
それから、銀星亭での名物になった。『ステーキ用に切った残りの肉で作れるので良い』と言ったのは1日目だけなほど好評だった。もちろん、わざわざミンチを作っている。
食事が終わったら、寝る前に話したいことがあると、女将さんに約束をして部屋に戻った。
女将さんとおじさんが食事をしたあとを見計らって行くと、既に飲み物とおつまみが用意されていた。
「めでたい話なんだろう? いつ話してくれるのかと思ってたよ」
女将さんに言われて、私は目を丸くした。
「あんたたち空気が変わったじゃないか」
「え? 本当?」
「実は、俺たち結婚したんです」
「結婚? 付き合い始めたんじゃなくて? それは驚いた」
言葉とは違い、たいして驚いた風でもなく女将さんは続けた。
「それは、おめでとう!」
「ありがとう。そんなに驚いてないですね」
「まあ、平民なんて恋人も夫婦も、一緒に住めば変わらないしねぇ」
確かに戸籍がなかったら変わりはないかもしれない。Sランク冒険者が届けのいる貴族だというのは、今は関係ない。
「それで、部屋はどうすることにしたの?」
「明日、借りれる家を見に行こうかと」
「そうかいそうかい、寂しくなるね」
「物件次第ですけど……。引っ越しても、時々食べに来てもいいですか?」
「もちろんよ」




