第十九話 一人でのボス戦
18階層に来ると、もう周りに人は見えなかった。アルにとっては簡単な魔物だから、すいすい進む。私も聖魔法を使うようになった。
20階層、その奥にダンジョンボスはいた。頭が鳥の白い大きな獣、形はいわゆるグリフォンみたいだ。ゴーレムと違って動きが素早い。
白いということは、氷を連想するから水の属性?
「サンダーシャワー!」
範囲攻撃で雷を落としてみる。雷撃は通るみたいだし足止めにはなるけど、トドメまでは無理そう。炎は水に強いんだっけ? 逆?
「フレイムバースト!」
あまり効いてないみたいだわ。弱点属性が、きっと逆なのね。炎のゴーレムに水が効いてたし。
土の攻撃って何だっけ。防御しか思い出せない。
「助太刀いる?」
「ううん、もう少し頑張ってみるわ」
アルが声をかけてくれた。ボス戦を何人で倒したかはランク上げに関わってくると思う。危なくなるまでは、頑張りたい。
「ホーリーアロー!」
結局私は聖魔法が得意なのよね。というか、あまり多くの詠唱を覚えていない。
「サンダーシャワー!」
再度足止めをする。辞典を見ている場合じゃないわね。聖魔法だとやっぱりこれかな…… えいっ
「ホーリーバースト!」
どかんと攻撃が入って、グリフォンが膝を折り、伏せるように唸った。
がるるるるるrr
なんだか、可愛い動物に見え、可哀想に感じてくる。でも……
「ミコ、あと少し」
「うん」
躊躇していると、グリフォンは最後とばかりに口から火を吹いた。火!?
防御バリアは張っていたけど、焦った。そうしていなかったら危なかった。アルがそばまで来ていた。
「ミコ、油断しないで」
「そうだね、ごめん」
可哀想だけどボスはボスなのだ。もう一度……
「ホーリーバースト!」
すると、キラキラと光る粒が登っていくように、消え始めた。
「やったな」
安心したアルの声が聞こえた。
「やったのね」
「ああ」
今度こそと、グリフォンがいたところに近づくと、水色の大きな魔石と宝箱があった。
「開けていい?」
「もちろん」
なんだか、新たに箱から魔物が出てこないか一瞬気になるけれど、ボス討伐報酬だから大丈夫だと思い直す。
ギィ……
軋むような音とともに開いた宝箱の中には、水色の……扇子!?
「アル……扇子に見える」
「扇子だな」
どうやって使うんだろう。夏に涼むとか? 手に持って眺めてみた。広げると透けるような扇面が美しい。
「ミコ……自分を扇いじゃダメだからな」
「えぇ?」
「あっちに向かって振ってみな?」
壁に向かってひと振りすると、ブリザードのように吹雪いた。
「おぉ!! すごい!」
「珍しいものが出てきたな」
うんうんと、私は頷いた。びっくりした。他には何ができるんだろう。鉄扇みたいに殴ると折れるのかな? 今度は閉じたまま振ってみる。すると水が勢い良く噴射された。ウォーターカッター??
どちらにせよ、多くの敵に有効そう。驚きつつ楽しそうにしていると「売らずに持っておいたら」とアルが言った。
そうそうと思い出して、箱を確認すると72という数字があった。
「アル、もしかしてボスは三日で復活するの?」
「よくわかったな?」
アルは、私の視線を追って数字を見ると驚いた。
「カウンターみたいよ。C級は24だったから」
やはりカウントしてるんだと知ってなんだかスッキリした。
そうして私達はボス部屋の一方通行の転移陣から入口あたりの1階層まで戻ってきた。外に出ると太陽がまぶしい。
「ミコ、お疲れ様だね!」
「うん、ギルドに行く? でも美味しいもの食べたいな」
「それはいいな」
私達は近くの酒場街に向かって歩くことにした。ここまで来た馬車は帰していたからだ。
銀星亭以外の外食には、ほとんど行かないからどんな料理か気になる。ワクワクが伝わったみたい。
「どこかで着替える? 今のままだとあまり良いところは入れないけど」
「カジュアルな冒険者用の店でいいよ」
「そっか」
アルは少し残念そうに見えた。
「外のお店にはほとんど行ったことないから、どこでも楽しみなんだ」
「わかったよ」
少しでも小綺麗な店をアルが選んだのがわかった。料理も出してるカフェに入ることになった。
「オムライスがある!」
「トコトコ鳥の卵が美味しいよね」
「うん?」
私は今まで料理の肉を鑑定しなくて正解だったと思った。トコトコ歩くのだとニワトリかもしれないじゃないか。
アルはステーキを頼んで、食事をする。オムライスは、とろとろの卵が乗っているタイプで、トマトソースまで美味しかった。
デザートはアイスクリーム。氷魔法が使えるパティシエがいるらしい。完食して満足した。
カフェから呼べる馬車で銀星亭に一度帰り、ギルドに行くことにした。
今回もたくさん魔石とドロップ品がある。前回買い取ってもらわなかったドロップ品のうち錬金に使わなかったものも、買い取ってもらおう。
それから、ランクアップもできるかな? 次はCランクだ。さすがに、そろそろクエストを受けたりできるようになるのかな、などと思うのだった。




