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第十七話 変わらない日常

 屋敷に戻るとごちそうが用意されていて、ガリアーノさんやルシアーノくんも揃って、祝ってくれた。


 お母様には、落ち着いたら披露宴をしましょうと言われたけれど、私の知らない貴族を呼んでパーティーをするのかと思うと気が重くなった。考えさせてくださいと答えるのが精いっぱいだった。


 それから、急なことだったし、私達は銀星亭に今まで通り住むことにした。


「明日はダンジョンに行こう。どうなっているか気になるしね」

「うん、そうだよね」


 日常は変わらない。けれどアルとの関係は確実に変わった。それに引っ張られるように気持ちも変わっている。要は意識しているのだ。


 結婚した日も、暗くなるからと夜には銀星亭に戻った。女将さんは当然気づかない。伝えるタイミングが難しいな。


 翌朝から、S級ダンジョンに潜る。魔物をあふれさせなければいいのだから、ダンジョンボスまで目指さなくてもいいけれど。問題なく5階層までは日帰りで行くことができた。


「どうする? 野営の準備をして続ける?」

「先に進みたい気持ちもあるけど、いったん駄菓子屋に戻りたい」

「そうだな、わかった」


 銀星亭に戻った夜間には、素材整理がてらアイテムを作っていたのでストックは出来ていた。久々にB級ダンジョンに行く。


「ミコさん、久しぶりだね」

「S級に潜ってたんですよ。奇跡の雫に水鉄砲、石パチンコを増やしてみました。あと、喉が渇いた時にもいいスミレ色のジュースもありますよ」

「ジュースと言ってもミコさんのことだからポーションなんだろう?」


 私は、いたずらがバレたように笑う。


「気持ち程度しか回復しませんけどね」

「じゃあスミレ色のジュースをおくれ」

「ありがとうございます!」

「オレも」「わたしも」


 たくさん用意したスミレ色のジュースが飛ぶように売れる。


「その石パチンコってなんだい?」

「こうやってゴムを引いて手を離すと、石が飛んでいくおもちゃです」

「弓に似た仕組みなんだね」

「弓より気軽に使えますよ。魔法で精度を上げてあって付属の石は浄化魔法を付与してます」

「浄化魔法!? やっぱり凄い。じゃあ水鉄砲も?」

「浄化魔法のかかった水が出ますよ〜。少しお高いけどどうですか?」


 久しぶりだから、定番の赤いジュースも新商品もバンバン売れていく。私はほくほくで、B級ダンジョンを出た。そっと隣にいたアルが聞いてくる。


「今さらだけどB級のダンジョンボスは倒さないのかい?」

「そうだよねぇ。何階層まであるのかな? 日帰りは無理よね」

「それはまあ。やっぱり野営の道具を買おう」


 私は頷いた。リゼットさんのところに売ってるかな?


「アトリエ・リゼット? ああ腕のいい職人がいると聞いたことがあるけど行ったことないな。そこで装備を?」

「うん。そうなの」

「ローブも良い品だし、そこに行ってみるか」


 アトリエ・リゼットは、銀星亭からそう遠くない。街中で馬を繋ぐところもないため銀星亭まで戻ってから歩いて向かった。


 店先には花飾りがたくさん置いてあって華やかだ。リラちゃんに花飾りをプレゼントしたことを思い出し、元気かなぁと思いを馳せた。


「いらっしゃい! 久しぶりだね。ダンジョンはどうだった?」


 リゼットさんは、溌剌と声をかけてくれた。そして、私の後ろのアルに気づくと驚いた。


「戻ってこられたんですか」

「そうなんだ。また冒険者をするからアルでいいよ」


 リゼットさんは、嬉しそうに頷いた。冒険者時代を知ってるのかな。

 

「それで。今日はお二人で何を探しに?」

「ダンジョンで泊まるのに必要なものを揃えたくてね」

「泊まるってボスを狙いに行くのかい?」

「そうなんだ」


 リゼットさんは、小さく驚いて私とアルの顔を見比べていた。


「ミコは聖魔法が使えるから案外強いんだ」

「なるほど……。テントは二人用にしますか? それとも一つずつ?」


 アルが困ったように私の顔を覗き込んできた。私が決めて良いようだ。


「二人用にします」


 アルは少し驚いてから私を見つめて破顔した。今日も私の旦那さんの笑顔が眩しい。


「甘酸っぱいねぇ。プライベートは聞くもんじゃないけど、恋人になったとこなのかい?」

「昨日、結婚したんだ」


 囃すようなリゼットさんにアルが答えると、リゼットさんはさらに驚いてから笑顔になった。


「そりゃあ、めでたいから良いものを選ばないとね」


 さすが女性客をターゲットにしたお店なだけあって、テントの他に、水が魔法で出てくる桶やミントの歯磨き、ドライシャンプー、簡単に洗濯できる袋など盛りだくさん。


「魔法でクリーンが使える人にはいらない物も多いんだけどね」


 あ、クリーンを使えばいいんだ。そういえば、普通の人はどんな魔法でも使えたりするわけじゃないんだよね。


「うちのテントは女の子でも持ち運びやすいようにすごくコンパクトになるんだよ」


 リゼットさんがたたむと、ガチャガチャのカプセルくらいになった。


「えぇ!? すごい! どうなったの」

「空間収納の魔法だよ。マジックバッグはとても高いけど、テントを仕舞うだけなら割安にできるんだよね。いやまあミコさんはいらないかもしれないけど好評なんだ」

「すごくいいですね!! 設置も簡単だし女性でもテントが建てられます」


 私は、興奮して見て回る。


「あと、登録した人以外は入れなくなってるんだよ」

「それは安心だ。これにしよう」

「寝具のランクもあるけど、どうする? さすがにベッドはないけどね」


 寝具って、ふとん? いや寝袋よね?

1人ずつ寝るんだし、どんなのでも……

 

「世の中には、空間魔法で中を広げた高級なテントもあるけど、うちでは扱ってないんだよね」

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