第十四話 リラちゃんが帰る日
魔石とアイテムを並べると、結構な量だねと驚かれた。頑張って拾ったしね。
「アイテムは欲しいけど、アルと二人だったから分けたいんです」
「俺は拾ってないからいらないよ」
「ダメだよ!」
押し問答の末、魔石分のお金をアルに、アイテムを私がもらうことになった。アイテムの中に高価なものがあったからだ。
「使わなくて売りたくなったら、いつでも持っておいで」
ガリアーノさんが笑いをこらえるように言った。その高額アイテムは使い方がまだわからないものだった。錬金に使う素材は多くドロップするものが多い。気軽に飲めるジュース(下級ポーション)奇跡の雫(上級ポーション)もラインナップに加えたい。喉は乾くもんね!
色はどうしようかとか、そんなことを考えながら銀星亭に戻ろうとする。
「あ! リラちゃんにお土産」
「ん? 菓子屋にでも行くのか」
「うん、行きたい」
「じゃあ少し遠回りするか」
アルは馬の向きを変えて、銀星亭から少し離れたクッキーの店に連れてきてくれた。外観からしてお高そう。
入ってみると、ジャムの乗った花の形のクッキーがあった。
「それにするのか? それなら兄貴に貰えばよかった」
などというので、キッと睨んだ。
「このお花のクッキーと、その四角い模様のクッキーをください」
なんとここには茶色のクッキーがあったのだ。
「この茶色のはチョコレート?」
こっそりアルに聞くと頷いてくれた。貴重だから、リラちゃんは知らなかったのね。
「ねぇ、チョコレートそのものもあるの?」
「あるけど、このへんじゃ買えないかもな。食べたいのか?」
この辺? やはり高級品は王都なのかしら。
「うん。そうね。向こうの世界では普通に食べられたものだったから」
「よし、今度旅行に行こう」
「へ?」
変な声が出てしまった。もしかして輸入品ってこと?
「溶けやすいから、ほとんど輸入されないんだよ」
「なるほど」
冷蔵庫を乗せた馬車とか、ストレージを持ってる人じゃないと無理だとしたら、相当貴重になるわね。
「チョコレートドリンクならあるの?」
「ああ、粉ならあるみたいだ」
「ここで手に入るなら、それも欲しいわ」
私は、ほくほくで帰路についた。
「ミコ、先に言うが子供へのお土産には高価だぞ」
「えぇー、あの店に連れてきてくれたのアルじゃない」
「まぁな」
「帰ったらみんなでチョコレートドリンクを飲みましょう。ミルクならあるわよね」
そうして銀星亭に着くと、たいそう驚かれた。あの店は貴族御用達で庶民は何かのお祝いでしか行かないらしい。とは言え、この辺境ではアルの身内くらいしか貴族はいないだろうけど。
「わー! お花のクッキーだ!」
「甘い飲み物もあるわよ」
チョコレートドリンクは、女将さんと作ってみて味見をしたら苦かったので、ふんだんに砂糖を追加した。
はふはふとチョコレートドリンクを皆で飲みながら談笑した。
「あ! お父さん!」
夕方に差し掛かるころになっていた。いつもより早くにレバンスさんが帰ってきた。
「ちょうどよかったです。レバンスさんも飲みませんか?」
「なんと、珍しいものを。いいんですか?」
チョコレートの匂いが漂う中、家族が揃った。
「このあたりではチョコレートも流通しているのですか?」
「粉状のものが少しだけかな。今日はクッキーの専門店に行ってきたんだ」
「それだと買い付けるのは難しそうですね」
レバンスさんにアルが続けて聞いた。
「お仕事はどうですか?」
「いつもの農家さんは回ってきたので、明日か明後日には王都に帰ろうかと」
「え? ほんとう?」
知らなかったらしいリラちゃんがショックを受けている。マチルダさんも初めて聞いたみたいだった。
「おばぁちゃんの家にもすっかり長居したし、お別れをしなくてはね。また来れるからね」
「……うん」
マチルダさんに言われて、今にも泣き出しそうなリラちゃんは、それでも泣かなかった。今までも時々来ては帰っていたのだろう。ガリアーノさんとも知り合いだったし。
「ミコおねぇちゃんも、また会える?」
「うん、私はガーランドがすっかり気に入ったわ」
それを聞いてアルはニコニコしていた。私は悲しいのに。
「リラもガーランドにまた来ればいいよ、銀星亭はまだまだやってるからね」
女将さんが締めてくれた。明日は家族で観光して、明後日に帰ることにしたらしく、明日の晩はごちそうにすることになった。
私は明日もS級ダンジョンに行くのかな。でも、ごちそうに添える果物かケーキが欲しいなと思った。
そんな話をこそっとすると、屋敷に珍しい果物があるから採りに行こうなどと、言われた。屋敷!?
「俺も兄貴も、修行だと言って子供の時から冒険者をやらされてるような家だから、格式張ってないし、一度は連れて行きたかったんだ」
「えぇー、私なんてただの一般庶民だし」
「ミコを守りやすくなるから、父上に会ってほしい」
そういえば、アルの中では最初は辺境伯家に行く予定だったのよね。手紙が行っているのに辿り着かなかったこと、心配していたかもしれない。一度は行ったほうがよいのかと思い直した。
「それじゃあ、よろしくお願いします……」




