第十三話 いざS級ダンジョン
翌朝、アルと私は示し合わせて早起きをし、リラちゃんの起きないうちに出かけた。あのあと、私のステータスや出来ることについて聞かれたけれど、色っぽい話はなかった。いきなりは困るという私の態度に配慮したんだと思う。
森までは馬で行った。当然のように私は馬に乗れないし、二人乗りだ。覆うように後ろから手綱を持つアルとは、背中にぬくもりを感じるほど距離が近くてドキドキする。もしや、アルはデートのつもりなのでは? 世の中には一石二鳥という言葉がある。魔物討伐デート!?
私達は馬を森の入口付近に繋ぐと歩いて向かうことにした。
一時間くらい歩くと、大型の魔物を見るようになった。アルが簡単に倒していく。
解体していない形の残った魔物からは、魔石も落ちないし、アイテムも落ちない。
「ホーリーシャワー」
消滅させて、アイテムを拾った。
アルは少し目を見開いたけど、すぐに普通の表情に戻った。
「なるほど、便利だな。使えるならだけど、森では火魔法はやめておいてくれ」
「うん、わかった」
「それから、入り口までまだ一時間くらいかかるから、魔法の配分も気にしてほしい」
まだまだ、強い魔物が出てくるということね。
「はい!」
しばらく歩くと本当に魔物が増えてきた。
「ホリーアロー」
数が多いので私も応戦する。一体ずつ攻撃するのも面倒だけど、私の魔法がどれくらい通用するんだろう。アルは剣で戦っていた。一撃か二撃ずつで倒していく。アルが強いのか魔物がそれくらいなのか。ダンジョンまで着いていないから、後者なのかも。
「ホーリーシャワー!」
アルのいるあたりは避けて範囲攻撃をする。二体ほど形が残っているのがいたけれどだいたい倒せた。
「ウォーターブレイド!」
水魔法で斬るとなんとか残りも倒せた。やはりB級ダンジョンより強い。
「助かった。もうそこが入口だ」
「あっ! そこ!」
なんか、もこもこワンコが立って歩いてるけど!?
「コボルトがいる。まだそこまで強いやつが出てきてない」
「冒険者にも会わなかったし単に自然にあふれてるのかな?」
「なんとも言えないが……確かに冒険者に会ってないな」
私は、バクチクを取り出した。
「これ、試してみてもいいですか?」
「何だそれは」
「敵を撹乱するおもちゃです」
「…………いいぞ」
すごい間があったけど、いいかな。私は素早く火をつけたバクチクを投げ込んだ。
バン! ババン! バン! ドン!
「すごい音だな」
慌てて出てきた数体のコボルトを仕留め、入口に立つ。奥に逃げたものや、蹲っているものがいた。
「ホーリーシャワー!」
戦意を喪失したらしいコボルトを一掃した。
「エグいな……」
「奥に逃げたものと次の魔物が混ざったら面倒だったね、ごめん」
「パニックになっていたら同士討ちもしてるだろうから構わないよ。兄貴に聞いたとおりミコは面白い」
面白いってどういう意味かしらね。
雑魚は私の範囲攻撃で、強い魔物はアルが斬るという感じで1階層はだいたい片付いた。
「しばらくは、ダンジョンの外まであふれないだろうから、ここで一旦帰ってギルドに報告しよう」
「うん、わかった」
私達は再び森を抜け、馬に乗ってギルドに行った。
「ここに魔物討伐のクエストも出していたんですけど、そんなことになってたんですね」
トビアスさんに軽く説明すると、青い顔をして別室に通してくれた。すぐにガリアーノさんを呼んでくるらしい。
「クエストを受けてから行った方がお得だったなぁ」
アルが鼻の頭をかいた。
確かにもったいなかったのかな。未だクエストを受けたことがないので報酬がわからない。
「そういえば、クエストを受けたことがないの」
「え?」
「この前までEランクだったし、薬草採取や掃除くらいしか受けられなかったし」
「あぁ、なるほど?」
そんな話をしていると、ガリアーノさんが来た。
「S級ダンジョンで魔物があふれてたって?」
「まあ、ちょっと多かったよ。冒険者とも会わなかったし何かあったの?」
ガリアーノさんとアルが話し合う。ガリアーノさんが難しい顔をして極秘クエストの話をしてくれた。
「あまりミコには聞かせたくなかったんだが、指名クエストでAランク冒険者を父上が雇ってる」
「つまりは、陛下の警護か」
「まあそんな感じだな」
「毒を盛ったか、呪ったんだろ? さっさと王太子を廃嫡してしまえばいいのに」
「グリードから聞いていないのか?」
毒か呪い? 原因が不確定なら証拠もないのかしら。それなら、いきなり処分はできないかも。
「陛下は今どうしてるんだ」
「警護も見直して、病が良くなったと政務を始めているよ」
再度悪くなってないなら良かった。力が抜けるほど頑張ったから、気になってたのよね。
「国王陛下は、王太子が追放した聖女を探したいと言っていたけど、まだ人材的にはそれどころじゃない」
「私を探す? あっ!」
「兄貴も知ってるから大丈夫だよ」
「そっか」
でもグリードがアルを手配したんだから、予測はついてるわよね。ここの居心地は良いけれど。
「そんなわけで、たぶん冒険者が減ったせいだから、気にかけてダンジョンに行ってくれないか」
「わかった」
私も頷いた。異常とか、あのファンタジーで出てくるスタンピードじゃなくてよかった。少しずつ攻略したら、ついでに新しい素材も手に入るかな。




