第十一話 アルベルトとの再会
時々はリラちゃんと薬草摘みに行く。他の素材を集めたり、アイテムを売ったりしながら過ごしていたら、リラちゃんのお父さんがやって来た。
ガーランドに来て、一ヶ月ほど経っていた。
「はじめまして。レバンスと言います。マチルダとリラがお世話になったそうで、ありがとうございます」
「ミコトです。こちらこそ旅が楽しくなったし素敵なご縁でした」
レバンスさんはやわらかく微笑んだ。優しそうな男性だった。王都の商人なのよねぇ?
「ミコトさんは綺麗な黒髪ですね。他国の出身ですか?」
「え? あ、まあ……遠いところからきました」
私は困ってしまった。ごまかすにも周囲の国なんて知らない。
「さあ、お疲れだろうから、部屋に荷物も置いてきてね」
女将さんが言うとレバンスさんの気がそれ、リラちゃんが反応した。私はそっと胸をなでおろした。
「お父さん、リラが案内する〜」
王都、というか国王のことは少し気になる。でも、知ったことかと思う自分もいて複雑だ。
「女将さん、ありがとう」
女将さんは、ニッコリ笑ってくれた。今までみたいな日が永遠に続く気がしていたけれど、そんなことはなかった。現実を突きつけられて、想像より動揺していた。
「レバンスさんはしばらく滞在して、仕入れをしてから帰るんだよ」
「そうなんですね。リラちゃんが帰っちゃうのは寂しいですね」
「会えなくなるわけじゃないからね。時々来てくれるんだよ」
私は力なく頷いた。孫が帰ってしまう女将さんのほうが寂しいはずなのに。
そんなことを考えながら、ぼんやりとギルドに行くと、ガリアーノさんがフロアに出ていた。手招きするので近づきつつ挨拶をしようとしたら、隣の人に気がついた。
「ミコト様、お久しぶりです」
「アルベルトさん! どうしてここに?」
アルベルトさんは、追放されたときに、王都の門まで送ってくれた騎士様で、こっそりとこの地に向かう手配と資金をくれた恩人。
アルベルトさんってガリアーノさんと似てるわよね、とのんきに思っていた。
「どうしてって……あの時、後から行くから待っていてくださいと言ったではないですか? 御者に聞いたらガーランドの領主邸に行かなかったそうで驚きました」
緑の瞳でじっとこちらを見ながら、不服そうにアルベルトさんは言い募った。
ガーランド辺境伯邸ってなんのことだろう。
「その説はお世話になりました。おかげさまで生活できてます。お借りしたお金は返したいので……」
「そうじゃなくて! ミコト様、一緒に暮らしませんか?」
どうして突然!?
別れるときにそんな話をしたかしら? 少し考えようとしていると話が進む。
「ミコは弟の思い人だったんだね」
「ガリアーノさんの弟!?」
似ていたし、やっぱりという気持ちと怒涛の話に驚きで頭がいっぱいになる。
「ミコト様は兄貴が好きなんですか? 彼には既に息子が……」
「な、なな、なんの話なんですか?」
私が慌てふためくと、ガリアーノさんが宥めるように声をかけてくれて、私達は執務室に移動した。
「父上と兄貴に手紙を出したのに、どうしてこのような事になっているのですか?」
「ギルドに来たとき、すぐにわかったけど頑張っていたし様子を見ようと思ってさ。ミコは面白い子なんだ」
「ミコト様が無事だったから良かったものの……」
不満を吹き出すようにアルベルトさんが話すけど、呼び方がすごく気になる。
「そのミコト様というのやめてもらえませんか? 恥ずかしいし、目立つし……」
様付けなんて、本当に落ち着かない。すると真意を確かめるように、甘えるようにアルベルトさんは
「俺もミコって呼んでいい? 兄貴と親しそうで気になっていたんだ」
私は驚いて瞬きをした。日本人で平民の私には、気にすることではなかったのに。
ガリアーノさんが吹き出した。
「アルよりは仲がいいからな」
完全に面白がっている。手紙とか様子見とか、気になるワードもあった。
「アルが、ミコを領主の屋敷に呼びたいそうだけど、銀星亭から出る気はある?」
「領主の屋敷?」
ガリアーノさんの言葉に私が困惑すると「そこからですか!」と、アルベルトさんが突っ込んだ。
「ミコに説明したこと聞いてなかったですか? ガリアーノ辺境伯は俺達の父で、ここの領主です」
えぇー! 私は声も出せず、驚いた。もしかして聞き逃したときに話していたのかな、聞き返すべきだった。御者の人も行き先が違うとかもごもご言っていたわ。
「あの……ダンジョンの話が気になって、あまり聞いてませんでした。ごめんなさい」
ガリアーノさんが、楽しそうに笑っていて、アルベルトさんは困っていて、なかなかカオスだ。
「そういえば国王様はどうなったんですか?」
「グリード、覚えてるよね? あの魔法使いが動いているからもう大丈夫だよ。あいつは優秀なんだ。でも王都はきな臭いからミコはガーランドから出ないで欲しい」
「もしかして王太子が何かしようとしてるんですか?」
「平たく言うとそうだね」
物語でもあるけど、こういう時いつも思うのは、「黙っていたら国王になれるのになぜ?」ということだ。
「父上は、王都に向かう準備をしている」
それは大事じゃないの。
「聖女と言われた侯爵令嬢がいただろう? あの父親が欲深くてね。宰相ではあるけれど王太子を唆したんだろうね。まだ確定ではないんだが……」
呆然としているとアルベルトさんが続けた。
「そんなわけで屋敷に来てくれると安心なんだ。俺がミコの近くにいたいのもあるけど」
つまり、一緒に暮らさないかは領主の屋敷の事で二人暮らしじゃなかったんだ。それにしても気があるように言うのやめてほしい。
「気づいてから、こっそり護衛はつけていたけど、ミコは強いぞ」
ガリアーノさんが聞き捨てならないことを言い出した。くらくらしそう。
「アルも銀星亭に住めばいいんじゃないか? ギルドカードもあるだろう」




