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第十話 駄菓子屋はじめます

「そんなに珍しいのですか?」

「強いシルバーウルフから低確率でドロップすると聞くけど、滅多に見ないかな」


 ウルフって、きっとあの時よね。冒険者を助けるとき、一度に倒したわ。ドロップ品は全部貰っていいと言われたけど、悪いことをしたわね。

 

「どうやって使うのですか?」

「魔力を込められるので、防御魔法などを付与したアクセサリーにすることが多いね。売るのをやめるかい?」

「いえ、アクセサリーなら買い取ってください」


 激レア錬金素材ならやめたけど装飾品なら問題ないわ。


「ところで、今日の用件は何だったんだい?」

「それなんですが、ダンジョンでお店をやりたいんです!」

「……それはまた」


 ガリアーノさんは、目を大きく開けて緑の瞳で私を凝視した。


「そんなに驚くことでしたか?」

「ダンジョンで物を売るっていう発想が面白くて」


 私は、今日ポーションを譲った経緯と、お店へのアイデアを話した。


「なるほど、そのポーションを見せてもらってもいいかい?」

「もちろんです」


 ポーションを並べるとガリアーノさんは「すごくカラフルだね」と驚いてから、ひとつひとつ眺めていた。何かしらの鑑定をしてるのかな?


「これをいくらで売る予定かな?」

「それが、決めてないんですよ」

「びっくりするほど安値をつけそうだなぁ」

「かわいいし、ジュースみたいですしね」


 ガリアーノさんは、眉間を抑えながら零した。


「何を混ぜたのかレシピはわからんが、効果は上がってるぞ」


 そうしてガリアーノさんには出店計画として、どんなものをいくらで売るか知りたいと言われ、またギルドに収める税金のようなものも取り決めることになった。


 ダンジョンの管理はギルドがしているようなものなので、お金を収める代わりにギルドの許可証(お墨付き)を出してもらえることになった。なにしろ初めてのことなので、即断できないそうだ。


「どちらにせよ、その性能は野放しにできん」


 え? そうなの? かわいいのに。

 ガリアーノさんは、もう笑っていた。苦笑かもしれないけれど。


 帰宅してから、ポーション以外の商品を考えることにした。カラフルなポーションが出来たときからお店の名前はもう決めている。安直だけど『駄菓子屋』

 少しだけ何かの効果のあるお菓子やおもちゃを売りたいと思っている。

 

 宿の女将さんとはリラちゃんのお陰で仲が良いので、夜に厨房を借りてクッキーやカラメル焼きを作った。

 女将さんはカラメル焼きに興味津々で、そのさくっとした食感に虜になっていた。


 一度作ったものは材料をストレージに入れると、錬金して作れるものがあるみたいで、カラメル焼きやクッキーを作ることができた。砂糖をハチミツに変えたりすると疲労回復効果のあるものになった。


 大根の魔物からドロップするらしい魔糖も使ってみたい。素材はどこで採れるだろうか。


 水分と甘味を求めて、ダンジョンを潜る。素材集めをするようになってから、ボスに向かって突き進まなくなった。ダンジョンのすぐそばに生えている草や、中で生えている植物にも気を配るようになった。


 順調にできたストック品を持って、改めてギルドに行った。ギルドではお菓子とバクチクを見てもらった。


「飴は魔力が回復するんだな」

「どれくらい回復するかはわからないけど、ハチミツを使ってるんです」


 私も鑑定してみたけど、どれくらい回復するのか全くわからなかった。ゲームなら数値がゲージで見れたりするけど、今の現実ではないからね。

 

「なるほどな〜」


 ガリアーノさんが、ひとつ口に入れた。


「甘いな!」

「アメですからね」

「さっきから鑑定して魔力を使ったけど、コレ結構回復するぞ。ハチミツってキラービーか!」


 あの蜂、キラービーっていうんだ。ハチミツをよく落とすから、そんな怖い名前とは思わなかった。

 

「それで、このバクチクってのは?」

「おもちゃですけど、火薬少なめの爆弾です!」

「まじか! ダンジョンで使って大丈夫なのコレ」

「火魔法も使えるんだし大丈夫ですよ」


 っていうか、ガリアーノさんの言葉が乱れてる。そんなに驚くことだったのかな。

 

「それもそうか。それで、今日のところはここまでかな」

「そうですね。サンプルを配ってもいいですか?」

「値引き程度にしておけよ、効き目がありすぎる」

「えぇー!」


 注意を受けてしまったので、チラシを作って割引券を付けた。こういうのこそ、錬金術で印刷……とかしたかったのに、手書きだ。ただ、割引券というものも知られていない手法で、面白がって買ってくれる人が意外といた。


 なるべく安くしたいという私の希望に沿った値段設定にしたけど、普通のお菓子と比べるとやっぱり高い。とはいえ日本でも山頂や遊園地の中なら割高でも売れていたのだし、ダンジョンの中も大丈夫。そんな謎の自信は当たった。


「ミコさん、こんなところで甘いものが食べられると思ってなかったよ」


 クッキーを食べたお客さんに感謝される。ダンジョンでお店開いて良かった。


「この飴、とても元気が出るよ!」

「毎度ありがとう!」


 私の魔力は保有量が多くてあまり減らないから、味見で食べても実感はわかなかった。でも、ガリアーノさんが言ってたように結構回復されるらしい。


 水鉄砲みたいなのも作りたいなぁ。アイデアだけは広がるのだった。

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