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まほろばホテルには神々が住まふ  作者: かこ


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13/14

帰る場所

「帰ろうか、柚葉くん」


 え、と柚葉は返答に困る。帰る場所なんて、もう無くなったも当然だと思っていた。


「戻っていいんですか、その……まほろばホテル、に」


 迷惑をかけまいと日陰で過ごしてきた柚葉にとって、周りを巻き込むほどの事件はおこしたことがない。ことを起こした張本人ではないとはゆえ、迷惑をかける元凶となってしまった。どう収めればいいかなんて、わからない。

 尻すぼみの声を拾った支配人は大袈裟に目を丸くした。まるで、信じられないとでも言わんばかりに声の調子を上げる。


「ホテルを(つい)棲家(すみか)にできるなんて、願ったり叶ったりじゃないか。まさか、断るなんて贅沢な選択をするつもり?」

「それ、支配人が言うことですか?」


 そりゃあ、支配人ですからと、髪が跳ね放題の男は胸を張った。

 少しだけ救われたような気がした柚葉は三郎の様子をうかがった。いつの間にか、縄で縛り上げられている。客のはずなのに下手人のような扱いだ。

 でも、と口にした柚葉は迷った末に、己の想いを吐露する。


「神様相手に仕事ができる自信がありません」

「神様のいいところを教えてあげようか」


 口に弧を描いた男は無邪気だ。答えを待つ柚葉に合わせてしゃがみこむ。


「最初から自信満々な所さ。例え、なぁんにもできなくても自分ならできると強気なんだよ、彼らは。恐ろしい存在であるゆえか、恐ろしいということを知らない」


 親しい友人に向けるような顔で、見習いたいもんだねぇと男は続ける。


「君の価値は、君が決めなくちゃ」


 ね、と伸ばされた手を柚葉は呆然と見下ろした。

 見た目が駄目なら、仕事ぶりで補うしかなかった。醜女と言われても、聞かないふりをしていたのは食べていくためだった。我慢に我慢を重ねて、誰かに認められなければ、誰かに必要とされなければと足掻いていた己が砂になり崩れていく。

 帰れる場所がほしかった。何処でもいいから、自分の居場所が。自分の価値を自分で決めてもいいという場所があるならば――柚葉は差し出された手を握りしめた。

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