二学期!
夏休みが終わり、夏制服に身を包み、ローファーを履く。
駅まで歩く。
商店街は、朝でも活気に溢れて居る。
が、別に少女漫画のヒロインみたいに、皆に挨拶される様な事は無い。
各々、自分達の仕事に取り組んでおり、通りすがりの人なんて気にしては居られない訳で。
駅で通学定期の更新をして
満員…と迄は行かないがそこそこ混み合っている電車に乗り込む。
日々変わる景色の景色を眺めながら電車は、学園近く…学園最寄りの駅に停車する。
別に近くはない。
此処から徒歩15分位はある。
遠いかと言われたら凄い遠い訳では無いが…
駅から学校までの間に誘惑が多い!本屋とかアニメグッズ専門店(駅から学校迄の一本道内では無いが)とか、オタクには…魅惑のスポットである。
だが、残念な事に登校時には本屋もアニメグッズ専門店も開店して居ない無い。(残念な事に)
帰宅時は立ち寄り辛い(夕方は混んでいる)
其れでも、小次郎様のグッズが発売されるとつい…立ち寄る(財布と相談)
たまに、伊織ちゃんや、冬馬くんとかと遭遇する事もある。
通学路だから当然なんだろうけれど、私は徒歩で伊織ちゃんや冬馬くんは自動車登校で、何気に登校時間が被らなかったりする。
…校門をくぐる。
そんなに前では無い筈なのに、何だか随分昔な気がする。
4月、自分が此の世界のヒロインだとか痛々しい妄想を一瞬で払拭されたあの日が懐かしい。
あれはもう黒歴史だ。けれど、夏休みに彼等と過ごせたのは何と言うか…
恐れ多かったな(今更)
でも別にちやほやされた訳でも無いし、淡々と任された事を全うして…た…はず(今更不安)
あ、そうでもないな。うん。(虫を思い出しかける)
あの時まっていた桜の花弁は影も形も無く、桜の木には緑色の葉が生い茂って居る。
…桜餅ってあの葉っぱが巻かれているのか。(脱線・そして桜餅の葉っぱにはソメイヨシノは使用されない)
校舎までの道を進む。
入学式のあの頃とは違って、とても暑いけれど
ああ、私また、此処に登校しても良いんだ。
まだ、通っても良いんだ。
そんな安心感しかない。
例え、クラスメイトが居ないクラスに移動させられていても。
学校の掲示板を見る。
クラス替えのお知らせ
・雛川 璃々那 1年Sクラス
・仙崎 姫花 1年Aクラス
「……場所は?」
思わず口に出す。
Sクラス何か存在しなかったのに、場所の説明も無く
張り紙だけで、クラス替えのお知らせ…じゃないよ!?
知ってる、この学園の教師も貴族至上主義が多いという事は。
でも、此れはどうなんですかねぇぇぇぇぇ!
「あーーーーーーー!璃々那ちゃん、おっはよおおおおおおお!」
背後から、伊織ちゃんの声がする。
振り返る。
「おはよう、伊織ちゃん」
男の娘は夏休み明けても男の娘でした。
可愛い。優勝。有難う。
「伊織ちゃんのツインテール久々に見た」
「ボクも久々に着けた。夏仕様のウィッグだよ。」
……夏仕様のウィッグ……中に扇風機でも入って……る訳はないか。
熱を貯め辛い設計とかなんだろう。深くは考えない。
伊織ちゃんは、掲示板を見る。
「Sクラスって何処?」
「分からないから困ってるんだよね。物置きとかかな」
「そうだったら、片付け手伝うね!」
そう言う問題では無い気もするが。
伊織ちゃんは可愛いから何でも良いか(良くない)
仕方ない。職員室行って聞いて来るか。
明らかに嫌そうな態度されるだろうけれど。
でも、場所を訊かないと行けない訳で。
何だか、周りがざわつく。
振り返ると、モーゼが居た(居ない)
人混みが左右に分かれ、中心を歩いて来るのは
姫花だった。でも、明らかに威圧感が違う。
今迄の姫花では無くて“本物の仙崎 姫花”だと分かった。
「ごきげんよう、雛川さん。そして伊織。」
美しいカーテシーは、其れだけで呼吸を忘れる位美しかった。
「ごきげんよう、仙崎様」
様以外の呼び方を許されてはいない、そんな気がして
つい“様付け”をしてしまう。
「あの子、余り頭が良くないのよね。だから今学期からワタクシが通う事になったの。其れで、Sクラスの場所だけれど、あの子は考え無しだから、教室の場所なんて考えていなかった様だけれど、ワタクシが今直ぐ、用意させるわね」
……Aクラスに戻すと言う選択肢は無いか。
そりゃあ、そうだよね。そもそも雛川 璃々那を排除するために、偽物の姫花を通わせていたのだろうから。
でも謎なのは、姫花ほどの権力があれば、私に何かしらの理由を付けて学園を追い出す事も出来る筈なのに、其れはしない。謎。
姫花なりのプライドなのか其れ以上の何かを考えているからなのかは全く解らないが、まあ、成る様に成ると思う。態々自らは、突っ込んで行かない事も大事。
…そもそもが受け身体質だからな。
「びっくりだよね」
伊織ちゃんが口を開く。
いつの間にか姫花は、校舎内に入ったようだ。
「今までの姫花が偽物だった事にも、偽物を通わせていたのに今学期から本物が通う宣言したり。」
「え、伊織ちゃんは今までの仙崎さんが偽物って知らなかったの?」
伊織ちゃんは頷く。
「ボクがあった事あるのは偽物の方だけだもん。引き籠ってた家に訪ねて来たのも、女装をする様に言ったのも、偽物の方。それでね、偽物の方の名前が赤崎 スミレって言うんだって」
「へぇ…」
という事は、悠先輩の別荘に来た時は、そっちの名前を使ったのか。
「姫花と赤崎が従姉妹同士って言うのは本当で、でも赤崎家は」
伊織ちゃんが急に口を噤む。
「…あんまり他人の事勝手に告げ口したら駄目だよね。噂をする者は低俗だって、御祖父様に叱られたんだった。」
しょんぼりする伊織ちゃんも可愛い。
「そうだね。低俗かどうかは判らないけれど、知らない所で何か言うのも言われてるのも良い気はしないかな」
気になる事は気になる。
仙崎家と赤崎家何があるんだろう。
私には関係ない事だろうけれど。
「そうだよね。ボクも引き籠ってる時、色々言われてたらしいし、今だって急に女の子の格好して学校に通い出した事で色々言われてるらしいし。」
なんだと…!?
って思うけれどまあそれはそうか。引き籠りから出てきたら突然女装に目覚めてた。
何があった!?って思うか。
「私は好きな格好をするのに年齢も性別も関係ないと思うよ!…TPOは別として」
TPOは大事。
と話しながら、Aクラス迄来てしまった。
私の席無いのに。
「あれ」
伊織ちゃんが立ち止まる。
「何で誰も居ないんだろう。授業前に始業式だとしても、まだ教室に居ても良い筈なのに。」
「入学式の時もそうだったよ」
「あの時は姫花に連れて行かれたから、覚えて無いんだよね。」
何気なく時計に視線を移す。
入学式の時と違って時計の針は動いている。
まあ、時計の針が動いて居る事と、教室に誰も居ない事は関係ないと思うけれど
何となく見てしまう。
「あれ、りりちゃん」
ぽやっとした声で話しかけられる。
「と、伊織。どうしたの?」
振り向くと、
「冬馬、今来たの?」
伊織ちゃんが訊く。
「ん、そう」
「教室に誰も居ないんだよね」
「あー…皆、教室に寄らずに講堂に向かったんだと思うよ。入学式の時に悠先輩が嘆いていたし」
「ふーん?冬馬は何で教室に?」
「荷物置きに来た。伊織は?」
「璃々那ちゃんと掲示板の所から歩いて来た。」
「Sクラス何処?遊びに行く」
ふにゃっとした笑顔を私に向ける、冬馬くん。
「まだ準備終わってないって、仙崎様に言われたよ」
「仙崎様」
「さっきの迫力凄かったんだよ。」
伊織ちゃんが身震いをさせる。
「ああ、本物の方」
…あれ?本物の姫花と偽物の姫花が居るって知って居たのかな?
「ボク、本物の方と会うの初めてだったから、ずっと震えが止まらなくて」
あれ?夏休みの時、会わなかったっけ?
「流石、神堂先輩の婚約者だよね」
「神堂先輩は自由人なのにね」
自由人…確かにあの絵を見ると自由人に見える。
でも確か、色んな資格を持って居るとかそんな“設定”があった気がする。
今…現実世界ではどうか判らないけれど。
幻想世界の時と色々違い過ぎて、違いを探すのを辞めた。
まぁ結局知らない事が多すぎるし、誰のルートも選んでいない状態だろうから
特別な相手にしか明かされない事は、今の私は知らない。
…取り敢えずそれより
「始業式行かない?」
と提案してみた。
私の荷物置く場所は無いが。




