終業式前日
「へいへいへいへいへい! 大地くんさんちゃん!! 明日ってなんの日か知ってる?」
昼休み、教室で弁当をパクついてると妙にテンションの高い優輝が隣の席から声をかけてくる。
なぜこんなにもテンションが高いのかは知っているが、正直ここ二、三日こんな感じでそろそろめんどうになってきた。
優輝のテンションが静まるようにさっさと正解を言ってしまおう。
「終業式だろ?」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
「………………」
妙な溜めまで再現しなくてもいいだろ。
さっさと弁当を食べてしまおう。
「残念!!」
「……えっ!! 嘘だろ、だって明日は終業式じゃん。夏休み突入じゃん」
「あめぇあめぇ、甘すぎるぜ相棒……もうちっと頭を柔軟に働かせるこったな」
完全に正解だと思ってたから変に取り乱してしまった。
でも他に考えられないけどな。
「じゃあ正解はなんなんだよ」
「正解は…………明日は鈴奈とデートに行きます!!」
「……甘いのは優輝の方だろ」
真面目に聞いて損した。自慢したいだけじゃないか。
でも、まぁ……楽しそうでなによりだ。
「ふっ、俺もそろそろ大人の階段を登ろうと思ってな……明日は攻めにいくぜ」
「前もそんなこと言ってめんどうごとにあった気がするな」
「そういうなよ、つれないな〜」
僕は適当にため息をついた。
なんだかこうやって優輝と、誰かと話をしているのが不思議に思うことがある。
ルーシーやシャボン玉。非現実的な、ファンタジーのような出来事があって、異世界のみんなと過ごして、今の僕はある。
そう思うと、なんだか遠いところに来た気もするし、前からここにいた気もする。なんだかよく分からない、不思議な感覚。
たぶん、この不思議な感覚の正体は幸福感なんだろう。
みんなと一緒にいて、すごして、今はすごく充実してる。僕は幸福って感覚にまだ慣れていないから、《不思議な》感覚だと感じるだけではないだろうか。
だから、このため息は、幸せを感じる事で出てきた、贅沢なため息なのだろう。
で、僕よりも幸福を感じているであろう目の前のツンツン頭に僕は言った。
「で、今回は何をしたいんだ?」
「話が早いな相棒。あのさ、俺、そろそろ……その……キ、キスというやつを鈴奈としてみたく思っておりまして、作戦が欲しい」
「それ僕に相談するのかよ」
少し真面目に緊張してる表情で優輝は言った。優輝にしては珍しい表情だな。
でも僕に相談する内容じゃないだろ。
「キスしたいって言ってみたらどう?」
「バカ、そんなこと言っても……いや鈴奈ならOKくれるかもだけど、雰囲気って大事だろ」
「そりゃそうだな」
そんなことより付き合って二週間ぐらいたってる気がするけど、まだキスもできてないんだな。いやそんなものなのかな。
あ、もしかしたら鈴奈のお兄さんが怖いからかもしれないな。
「そういえば、どこにデート行くの? 場所によってはいい雰囲気作れるかも」
「動物園に行く」
「ああ、あの入り口にフラミンゴがいてすごい臭い動物園」
「そう、入り口フラミンゴ臭の動物園」
どうでもいいけどフラミンゴの母乳は赤いらしい。カバは赤い汗を出すし、なんか怖い。
「いやフラミンゴの事はいいや……とりあえず作戦思いついたよ。帰り際に手をつないで流れに任せてする」
「他には?」
「作戦二。あそこって動物が水の中泳いでるとこを水族館みたいに見れるじゃん?暗いからそこですればいいんじゃないかな。暗いと人間ってドキドキするもんだし」
「確かにドキドキはするな。作戦2でいこう」
このクラスに鈴奈がいなくてよかった。こんな会話聞かせられないからな。
なにやら脳内でシュミレートしているのか、上を見上げて優輝は考え事をしている。
しばらくしてシュミレートができたのか、優輝はこっちに意識を戻した。
「ありがとな! さすが相棒、頼りになるぜ」
「どういたまして〜」
「適当な返事だな。しが抜けてるし……それはともかく、そっちは何か進展あったの?」
「なんのことだ?」
はて、思い当たる節がない。
「恵美は何もなかったのかって話だよ」
「え……あぁ……」
「まぁ焦る必要はないけど。俺的には結構いける気がするんだけどな〜」
「…………どうかな」
「まぁ、気長に頑張れ」
「うん」
それから昼休みを適当に過ごし、学校が終わっていつもの四人で下校して、家に着いた。
「………僕も明日、恵美を誘ってどこかに行こうかな」




