《7日目》公園
学校が終わり、いつものメンバーはそれぞれ自分の家に一度戻ることにした。優輝の家でお別れ会をするのだがまだ準備ができていないようだった。
家に帰った僕は自分の部屋で優輝の家に行く準備をしていた。
「……お菓子でも持っていくか」
適当なお菓子を数個カバンに詰め込むと準備が終わってしまった。なにかネタになる物を持って行こうとも考えたが僕の部屋にはあいにくとそんな物はなかった。
時刻は午後四時。優輝の家まで五分なのであと二十五分もある。
家にいても何もすることがないので外に出ることにした。外に出た後、僕は我が家を見上げ言った。
「……さよなら、この《世界》の父さん、母さん、兄さん」
手紙でも書こうかと思ったが止めておいた。この《世界》から僕が消えても、それに気づく人は恐らく恵美と鈴奈に優輝、あともう一人ぐらいだと思う。僕は結果的にそうなるような願いをルーシーにしたからだ。
「ごめん、ありがとう」
《ifルート》には元々僕が存在しない。でも、この《世界》の家族も、《元の世界》と変わらない僕と過ごした記憶を持っている。僕自身はいなくても僕と過ごした記憶があるのなら、一緒に過ごしていたのと変わらないのだと僕は思う。
僕は勝手な判断でこの《世界》から出て行くことを謝り、これまで一緒にいてくれたことに感謝の気持ちを送った。
近所の公園まで行くと僕は暇つぶしにブランコに腰掛けた。青い空を見上げてゆっくりと漕ぐ。
「こんな所で何してんのよ」
首を後ろに倒すと腰に手を当てて不思議そうな顔をしている恵美がいた。
「……!」
『顔近!』
と思ったがポーカーフェイスを貫く。
「なに顔赤くしてんのよ……バカ」
貫けてなかった。恵美はプイっと顔をそらして隣のブランコに腰を落とす。しばらくキイキイとブランコが揺れる音だけが空間を満たした。
「ねぇ」
唐突に恵美は僕に話しかけてきた。恵美は足を折ったり伸ばしたりを繰り返しながら、ブランコのスピードを一気に上げていく。
「どうした?」
僕の言葉に恵美はニコっと微笑むと腰を上げて立ち上がり、さらに足を屈伸させてスピードをガンガン上げていく。
それから恵美は一瞬顔を曇らせると直ぐに晴れやかな笑顔を見せ、大きな声で言った。
「……なんでもない!!」
恵美は一体どんな質問をしたかったのか、今でも僕には分からない。しかし、彼女の中でその問題は自己解決できたのであろう。
僕は恵美の言葉に苦笑しながら言った。
「なんだよ、それ」
恵美は勢いに乗ってブランコから飛び降りる。
「ん……よしょ!」
着地は少々バランスを崩してしまっていたが、なんとか成功していた。恵美は背中越しに凛とした声で言った。
「私も、一人で立てないとね」
一本の柱が通ったような、そんな言葉だった。恵美の中で何かが変わって、何かを決めたんだと思う。
「……?」
僕が首をかしげると恵美はなんでもない、と首を振った。それから恵美は時計を見ると少し驚くと言った。
「そろそろ時間ね。行きましょ」
「そうだな」
僕はゆっくりと腰をあげると優輝の家に向かった。




